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NIKKEI NET

社説2 パキスタン自爆テロの衝撃(9/25)

 パキスタンのザルダリ大統領とブッシュ米大統領が会談、テロ対策で連携を強めることで合意した。パキスタンはこれまでにないほど深刻なテロの脅威にさらされている。両国は対策を単なる総論で終わらせず、テロリストの拠点制圧へ実効をあげるよう期待する。

 20日に首都イスラマバードで起きた自爆テロの死者は53人、負傷者は約270人に上る。これまで最大規模のテロだ。

 狙われた米系ホテルの近くには大統領官邸など政府の建物も多い。最高度の警戒体制が敷かれていたはずの地区に推定600キロもの爆発物を積んだトラックが容易に入り込んでいた。政府のテロに対する認識が甘かったと言われても仕方あるまい。

 ザルダリ大統領は今月9日に就任したばかり。新政権は発足直後に衝撃的なテロに見舞われた。

 妻だったブット元首相は昨年12月、暗殺された。テロ対策が自らの最大の課題であることを改めて認識させられただろう。

 今回のテロもアフガニスタンとの国境地帯の部族地域を拠点とする国際テロ組織アルカイダやタリバン武装勢力によるものとみられる。

 彼らは国境を越えてアフガニスタンへ攻撃を仕掛け、同国の治安を悪化させている。このテロリストの拠点を制圧することはパキスタンの単なる国内問題ではなく、国際的義務でもある。

 パキスタン軍は先月から部族地域の一角で本格的な掃討作戦を展開してきた。だが、その一方でアフガニスタン駐留の米軍のパキスタン側への越境攻撃には強く反発、米軍が飛ばしたと思われる無人偵察機を撃ち落としたとの情報もある。

 パキスタン国内の反米感情を反映した行動だろうが、作戦がバラバラでは効果も限定的だ。首脳レベルでの協議を踏まえ対テロ作戦を調整する必要があろう。

 テロ対策は軍事作戦だけで成り立つわけではない。部族地域は経済開発から取り残された貧困地帯でもある。イスラマバードの中央政府は部族地域の自治を口実にまともな開発政策をとってこなかったという。同地域には包括的な支援策が求められている。

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