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社説1 麻生内閣「背水の陣」の決意伝わるか(9/25)

 臨時国会が召集されて自民党の麻生太郎総裁が首相に指名され、新内閣を発足させた。実質的には総選挙までの選挙管理内閣である。麻生首相自身「総選挙で民主党に勝ち抜かなければ、天命を果たすことができない」と語っている。選挙に勝てば本格政権の道が開けるが、負ければ超短命政権に終わる。麻生新内閣こそ「背水の陣内閣」である。

 麻生内閣発足で前回2005年の総選挙以来、3回も内閣が交代したことになる。政権のたらい回しは限界であり、新内閣は速やかに衆院を解散して民意を問うことが求められている。

 新内閣が発足早々、衆院解散に踏み切る例はあまりない。麻生首相の祖父・吉田茂が1948年、芦田連立内閣崩壊後に第2次吉田内閣を発足させ、直後に衆院解散に踏み切り、総選挙に大勝して、その後の長期政権の基盤を築いたのが唯一の例だろう。次期総選挙は自民党が勝つか、民主党が勝つか予断を許さない情勢だ。麻生内閣は極めて緊迫した政治状況の下で船出した。

 麻生首相は自分で組閣名簿を発表し、指導力発揮へ前面に出る姿勢を見せた。政権の要である自民党幹事長に町村派の細田博之氏、内閣官房長官には伊吹派の河村建夫氏を起用した。両氏とも麻生首相や森喜朗元首相に近く、実務能力や人柄の良さが買われた。

 財務相には財政出動論者の中川昭一氏(伊吹派)、総務相に鳩山邦夫氏(津島派)、行革担当相に甘利明氏(山崎派)を起用し、総裁選圧勝の原動力となった各派の「親麻生」有力議員を論功行賞で処遇した。こうした人事で首相の「背水の陣」の決意が有権者に伝わるのだろうか。

 中川財務相は金融担当相も兼務する。「財政と金融の分離」の原則から従来は別の閣僚が金融担当相を務めていた。米国発の金融危機に各国と連携して機動的に対処する目的なら、財務相と金融担当相の兼務は必ずしも否定すべきことではない。ただ、今回の兼務をきっかけに財政と金融の一体運営をめざす狙いがあるとすれば、極めて問題である。

 麻生首相は国連総会出席のため訪米し、帰国後の29日に所信表明演説を行い、その後、各党の代表質問に臨む。首相は景気対策を重視し、補正予算を成立させた上で、衆院解散に踏み切りたい意向を示している。そのためには民主党の協力が不可欠である。首相は小沢一郎代表に党首会談を呼びかけるべきである。民主党も補正予算審議への協力を拒んではならない。

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