◎麻生内閣発足 補正予算成立が望ましいが
麻生内閣が発足した。「選挙の顔」として、麻生太郎首相が小沢民主党を迎え撃つ陣容
が整った。速やかに衆院を解散して民意を問うてほしい。
ただ、補正予算の成立を目指すのか、臨時国会冒頭で解散するのかの判断が難しい。景
気対策の必要性を考えれば、補正予算成立後の解散が望ましく、民主党の協力を取り付ける努力も必要だ。協力が得られるとの確信が持てるなら、修正も視野に入れて与野党合意を目指してほしい。
麻生首相は就任後初の会見で、補正予算の成立を目指すとしながらも、民主党側の協力
については懐疑的な見方を示した。民主党側からの「補正予算審議は衆参二日ずつで良い」とする打診を揺さぶりと受け止めているのだろう。
補正予算の審議について与野党の合意が成り、国会審議に入った場合でも、汚染米問題
や年金問題で野党が攻勢に出るのは必至だろうが、必ずしも与党側が不利になるとは限らないのではないか。野党は選挙を目前にして、あからさまな審議の引き延ばしができるとは思えない。どちらにしても麻生首相の器量が試される良い機会になるはずだ。
選挙中の政治の空白が避けられないなかで、時間をむやみに浪費するのは困る。審議時
間は長ければ良いというものではなく、論戦を通じて問題の所在を明らかにし、解決策や妥協点を見いだすことが何より重要なのである。
麻生首相は会見で、現状の危機について、「景気への不安」「国民生活の不安」「政治
不信」を挙げ、「日本を明るく強い国にすることが私の使命」と述べた。景気と国民生活を重視し、強い日本をつくる方向性は二十九日予定の所信表明演説で、さらに肉付けされるだろう。国民の心に響く言葉を聞きたい。
民主党は月内に衆院選マニフェスト(政権公約)をまとめる。高速道路無料化や子ども
手当などの財源をどう捻出するか、後期高齢者医療制度を廃止したあとどうするのか、もっと具体的に説明する必要がある。この点があいまいなままでは、政権交代も掛け声倒れに終わりかねない。
◎海外誘客10倍増構想 一人旅も楽しめる環境に
石川県は外国人宿泊者数の目標を当初の三倍から十倍に引き上げる構想を打ち出した。
何事も目標を高く掲げるのはよいことだが、掛け声ばかりでなく、目標を実現する戦略や戦術も必要であり、受け入れ体制の整備を一段と推進しなければならない。ポイントの一つは、外国人観光客が一人でも安心して旅をできる環境にしていくことで、多言語の観光案内板やパンフレットの拡充、ホテル・旅館の外国語の対応能力向上はむろん、遅れている飲食店の多言語メニューの整備、さらに通訳ガイドの育成にもっと力を入れる必要がある。
県は当初、二〇〇三年に年五万人だった外国人宿泊者数を一四年に十五万人に増やす目
標だった。ところが〇七年に早々と十五万人を超えたため、目標を十倍増の五十万人に引き上げることにした。石川は欧米富裕層が求める「本物の日本文化」を提供できる数少ないところであり、目標の達成は決して不可能ではなかろう。
実現の一つの鍵は、個人観光客への対応能力を高めることであり、外国人観光客の誘致
に力を入れている自治体はどこも「一人歩きのできる観光地」づくりにしのぎを削っている。この面で遅れをとってはなるまい。
金沢では「金沢グッドウィルガイドネットワーク」というボランティア団体が市の委託
を受け、JR金沢駅で外国人向けの観光案内を行い、通訳ガイドの派遣にも応じているが、九〇年代に年間三千人から四千人台だった窓口の来客数は二〇〇二年度に五千人を超え、〇七年度は一万人を超えた。団体に所属する会員は五十人ほどで、仕事や家事の合間をみてのボランティア活動だけに、対応力の限界に近づいているという。県、市の支援強化が望まれる。
海外からの訪問客に「安心感」を与えることが大事なのであり、観光面以外の環境整備
もきめ細かく考えたい。例えば、国際化に伴う課題として災害情報の伝達方法が挙げられるが、情報をうまく伝える仕組みを整えることは、在住外国人だけでなく外国人観光客の安心にもつながるはずだ。