相次ぐ負担増で遠ざかる医療
後期高齢者だけでなく、74歳以下の受診も減少していることが明らかになった全日本民主医療機関連合会(全日本民医連)による「緊急患者動向調査」。受診抑制については、後期高齢者が年金からの保険料天引きなど、74歳以下が相次ぐ増税や物価高などで、国民生活が厳しさを増している表れとみられ、全日本民医連は「後期高齢者医療制度」の廃止はもとより、国民が必要な医療を受けられる制度の構築などを求めている。
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患者の「受診抑制」が深刻に
医療費負担が重く、受診抑制も
調査では、後期高齢者の今年4−6月の外来の総日数が、病院と診療所を合わせて前年同月比8.47%減少し、74歳以下の外来についても、病院が4.33%減、診療所が3.15%減と、いずれも前年同期を下回っている。
患者が受診を抑制している実態については、全国各地の医療機関が具体的な事例を報告している。
後期高齢者では、「月額7万円の年金で暮らしている75歳の患者は、高血圧、高尿酸血症などで定期的な受診が必要だが、食事をはじめ、生活費を切り詰めても、受診する費用を負担できない」(北海道)、「78歳の女性のケースで、同制度の施行や介護保険料の値上げ、年金の手取りの減少により、これまでは週1回のデイサービスと週2回のヘルパーを利用していたが、利用を減らしている」(青森県)、「従来は国民健康保険によって3500円の自己負担で、胃内視鏡、胸部レントゲンなどを受けられたが、同制度の施行で、後期高齢者は健診の対象から外されて自己負担になったため、検査を受けてもらいにくくなり、病気の早期発見につながりにくい」(埼玉県)など、厳しい生活実態によって、医療に加え、介護サービスの利用抑制なども起きていることが指摘されている。
また、74歳以下では、「トラックの運転手をしている患者のケースで、ガソリン高騰のあおりを受け、仕事が厳しくなったことで、休んで病院を受診することができなくなっている」(同)などの事例も挙げられている。
さらに、年齢に関係なく、「受診を中断している患者に電話をすると、『まだ薬があるから』という答えが何人からも聞かれる」(山梨県)など、医療費を少なくするため、薬を“間引いて”飲んでいる実態や、「外来で発見されるがんでは、手遅れの進行がんばかり」(石川県)など、受診抑制が命にかかわるほど深刻になっていることが報告されている。
全日本民医連では、「負担増、給付減に伴う受診抑制が深刻さを増している。医療費抑制を主眼とした同制度の廃止はもちろん、国は患者が安心して医療を受けられる制度に転換することが急務になっている」などと訴えている。
更新:2008/09/24 21:18 キャリアブレイン
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