「私のどんなところが好き?」と聞いてみたら、2歳年上のTさんはにっこり笑って、「何でも決めてくれるところ」と答えた。こんなカップルが、これからは増えていくのではないか、と彼女の結婚報告を聞きながら思った。
Aさんは言う。「前は、ぐいぐい引っ張っていってくれる人や、一緒に話し合っていける人がいいと思っていた。でも結局、私が何でも自分で決めて相手を引っ張り、相手がついてきてくれるのが、一番心地いいのだと気がつきました。私も頑固だし、自分のスタイルを変えられない。だったら、自分が人生のプランを決めていくのがいいと思う」
女性誌では「私を変えない結婚」というキーワードが大いに受けるのだが、結局「私を変えない結婚」がしたければ、自分が男性をリードするぐらいがいいのだ。そして今は、そういった「リードしてくれる女性」を待っている男性も大勢いるのではないか?
今、ライフプランは女性が決める時代になっているのだと思う。結婚しているカップルを見ても、女性主導型の夫婦の方がうまくいっている。対等な「話し合い型夫婦」は、実はなかなか難しい。話し合えば合うほど葛藤が増える。
なぜ女性主導のライフプランが望ましいかというと、タイムリミットを持つのが女性だけだから。それは、出産というタイムリミットだ。女性たちの人生の時間は、出産においてだけは限界がある。
かつては男性も「サラリーマン」であれば、ある程度のライフプランを決めることができた。「定年から逆算すると、このあたりで結婚して子供を持たないと」というライフプランだ。生涯賃金―「この年で年収はこのくらい」―というおおよその計算もでき、「年功序列、終身雇用」の時代は、会社がサラリーマンの「ライフプラン」を決めてくれていたのだ。
しかしリーマン破綻に見るように、現代はいつ何が起こるか分からない時代である。男性たちの「いつまでに…をしなければならない」というタイムリミットは、なくなってしまったのだと思う。だから結婚や子供を持つことも、リミットなくずるずると先送りしているのだ。
男性たちも「自分が何かを決断していくこと」を、「しんどいなあ」と感じているんじゃないだろうか? 女性だって「自分で決断して責任を負う」のはしんどい。でもそんな時代に「出産というタイムリミット」を抱える女性たちだけが、ライフプランを決める必要に迫られる。それならば、必要な方が「決めていく」しかないのではないか?
「引っ張っていってくれる男性」という幻想を捨てると、「生涯のパートナー」は案外身近なところにいるのだと、Aさんの結婚は教えてくれる。