うろうろドクター

一言メッセージ :日本の医療は厚労省と与党の医療費抑制策により、崩壊が進んでいます。なるべく多くの方に理解してもらえるようにブログを書いてます。

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医療崩壊(産婦人科)

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産科開業医や1人医長無しでは、産科医療は回らない

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問われる一人医長の安全性 集約化には慎重論も
記事・提供:共同通信社
【2008年9月22日】

 妊婦の死亡をめぐり、産婦人科医に無罪が言い渡された
福島県立大野病院事件の判決から1カ月。事件で浮き彫りになったのは、
医師一人の態勢で地域のお産を支える「一人医長」の安全性の問題だ。
医療現場では過度にリスクを回避しようとする動きが広がる。
大規模病院への集約化には慎重な意見も根強く、身近な「お産の場」のありようが問われている。

▽揺れる心情
 「医師が自分一人なら、良いと感じた医療をやりたいようにできる。
1人の患者を継続して診られる利点もある。ただ、難しい症例に遭遇したら、と考えるとやはり怖い」

 石川県輪島市の市立輪島病院。産婦人科の青山航也医師(32)が
揺れる心情を吐露した。3年前に富山県高岡市の病院から転勤、
金沢大の医局から派遣された一人医長だ。

 産婦人科の外来患者は1日に約20人。ほかに8人の入院患者がいる。
診察や分娩などすべてを一人でこなす。3日に一度は夜中に呼び出される。
月に2日程度、大学から応援の医師が来る日にしか休めない。

 こうした勤務状況は珍しいことではない。
日本産科婦人科学会が2005年に分娩を取り扱う1273の病院を調査した結果、
約4割にあたる486施設で医師が2人以下で勤務、うち187施設は一人医長だった。

▽事件の影
 大野病院事件で逮捕された産婦人科医も一人医長で、
癒着胎盤という珍しい症例にぶつかり、妊婦が死亡。刑事責任を追及される事態となった。
この影響で、お産の取り扱いを中止したり、
難しい患者を避けたりする一人医長の病院が各地で相次いだとされる。

 「相談できる相手がいないことは(一人医長の)デメリット。
無罪判決は出たが、逮捕された事実は変わらない。
今は、リスクの高い症例には手を出さない方がいいと思っている」と青山医師。
生命に危険を伴うようなケースがあれば、施設や人員の整った病院を患者に紹介するつもりだという。

▽選択
 厚生労働省の調査によると、お産をめぐり2007年に国内で亡くなった妊産婦は35人。
それ以前の3年間も毎年50人前後で推移しており、
関係者は「日本のお産の安全性は、世界トップクラス」と言う。

 ある産科医は「これ以上の安全を求めるなら、一人医長を減らし、
患者の利便性を損なっても大規模施設に医師を集めるしかない。
大野病院事件は、国民にその選択を求めているのではないか」と指摘する。

 厚労省は集約化を推進しているが、住民からは反対する動きも出ている。
青山医師は疑問を投げかける。「集約化すれば、患者は遠くの病院まで通わなければならなくなる。
それを『仕方がないこと』としていいのか」

 日本産科婦人科学会も産科の態勢の在り方について検討を進めている。

 同学会で医療提供体制の検討委員長を務める北里大医学部の海野信也教授(52)は
「地元でお産をしたいという妊婦のニーズが予想以上に強いことに気付かされた。
今後は集約化と同時に、分娩を扱う開業医を地域に残せるような方策も模索する必要がある」
としている。
http://www.m3.com/news/news.jsp?articleLang=ja&articleId=80185&categoryId=&sourceType=GENERAL&

難しい問題です。
大野病院事件の影響もあり、産科医療の集約化が叫ばれていますが、
日本の産科診療所数は病院数を上回っています。
http://d.hatena.ne.jp/Yosyan/20080104

産科診療所の多くは高齢の先生が一人でお産を取り扱っています。その多くは男性です。

ご存知の通り、今や産婦人科の新規入局者の7〜8割が女性です。
男性の医師の診察を拒む妊婦さんは増加傾向にありますから、
この比率が大きく変化する事は無いでしょう。

理論的に女性医師が一人で24時間、診療所でお産を扱うのは困難です。

また男性だからといって、

3日に一度は夜中に呼び出される。月に2日程度、大学から応援の医師が来る日にしか休めない。

という過酷な勤務状況には、悲鳴が上がらないほうが不思議です。

産科医療を取り巻く状況は深刻さを増しています。
今度の選挙の争点にならなくて良いのでしょうか?

下記記事も合わせてお読み下さい。
臨時 vol 130 「分娩施設の集約化について―有床産科診療所に明日はないのか?」
2008年9月22日発行

兵庫県・尼崎医療生協病院
衣笠万里

 当分解消されそうもない産科医不足を補うために国(厚生労働省)や
産科婦人科学会の指導者たちは「分娩施設の集約化」を推奨している。
平成17年に厚生労働省が発表した「小児科産科若手医師の確保・育成に関する研究」でも、
分娩の集約化・センター化が強く謳われており、
「それまでの”移行期”において一次医療機関である有床産科診療所を保護する」
という表現が用いられている。
つまり有床産科診療所はいずれ消えゆく運命にあるということだろうか?

 確かに都市部では限られた面積内に多数の周産期施設が分散していて、
多くの施設で1人ないし2,3人の常勤医師が長時間病院や診療所に縛り付けられている
という状況は非効率に思える。個人のプライベートタイムの確保や危機管理の観点からは、
少なくとも5-6名以上の常勤産婦人科医師が交替制で夜勤や休日勤務にはいり、
新生児専門医や麻酔科医および手術室スタッフも常駐している環境が望ましいであろう。

 ただし医師が若い間はそれでよくても長年勤務していると、
いずれ宮仕えに飽き足らず独立開業の道を模索する者も当然出てくる。
そのためにオープンシステムによる病診連携も推奨されている。
しかしオープンシステムにも問題はないのだろうか?

 米国では産婦人科医師の約80%が開業するが、
多くの医師がオープンシステムのもとで病院と契約を結んでいて、
自分のクリニックで健診を受けていた妊婦が病院で出産するときには、
そちらに出向いて立ち会っている。もちろん分娩は昼夜を分かたないので、
外来患者の診療中でも夜間・休日でも急遽病院へ駆けつけねばならない。
危機管理の点では安心感はあるが、院所間の移動距離を考えれば
日本の開業医よりもむしろきついかもしれない。
実際には複数の医師が共同で開業して代診を頼んだり、
開業医が間に合わず、病院のレジデントだけが分娩に立ち会ったりすることもある。

 このような診療形態が成り立っているのは
ある程度産科医療が標準化されていることが前提となっている。
ただし米国での標準化は過剰とも思える医療介入の増加の方向へ向かっている。
帝王切開率はすでに30%近くに達しており、陣痛誘発率も20%前後に至っている
(誘発率が高い州では40%以上に及ぶ)。分娩の途中から陣痛促進する症例もあるので、
自然陣痛のみによる正常分娩は全体の半数以下となっている施設も少なくない。
もちろん過剰な医療の介入には健康上のリスクが伴うことも考慮せねばならない。

 病院に多数の産科医師(レジデントを含む)とともに
新生児専門医や麻酔科医および手術室スタッフが24時間365日常駐しているのは心強いが、
それ相応のコストを要する。米国の私立病院での分娩費の多くは1-2万ドル程度(100-200万円以上)
とされていて、日本の3倍以上である。日本で本格的に米国式の集約化を実現するための
インフラ整備や人員配置に伴うコスト負担を国家や国民は受け入れる覚悟ができているのだろうか?

 医療機関へのアクセスの問題を考えてみると、
米国や北欧は国土が広く人口密度は日本の1/10以下であり、
中途半端な距離に中小規模の周産期施設が散在しているよりも、
大規模なセンター病院に分娩を集中させることのメリットが大きいかもしれない。
一方、フランスは日本よりも国土が広いが、人口密度の点では米国よりも日本に近い
(日本の1/3程度)。フランス政府は安全管理のために
年間分娩数が300未満の施設での分娩取り扱い中止を勧告しているが、
そのために自宅から45分以内に産科施設にアクセスできなくなる地域は例外としている。
日本は人口密度が高く、すべてではないものの多くの地域では
自家用車で30分〜1時間以内の場所に産科施設がある。
このようなアクセスのよさを犠牲にしても
全国的に分娩の集約化を推進しなければならないのか疑問である。

 日本でも欧米に習って分娩の集約化を進めるべきであるという
議論の嚆矢となったのは旧厚生省長屋班の報告である。
その中で日本では分娩時出血による母体死亡が多く、
それを減らすためには分娩施設の集約化が必要不可欠であるという結論に至っている。
確かにこの調査の対象であった1991-92年においては、
日本の妊産婦死亡率は欧米に比して高く、12人/10万出生程度であった。
しかし現在の診療所での出生比率は当時よりもさらに増加して全分娩の半数近くに達しているが、
妊産婦死亡率は半減して4-5人/10万出生となっている。
それはオーストラリアやスウェーデンなどに比べるとやや高いものの米国よりも低く、
世界最高水準に近づいている。そして周産期死亡率の低さは10年以上にわたって世界一である。

 母体死亡が減った理由として、ハイリスク妊娠は早めに病院に紹介するといった
リスク毎の選別が行き渡ってきたこと、緊急時の搬送システムや
輸血用血液の供給が整備されてきたことなどが挙げられる。
思えばかつて致死的不整脈に対する電気的除細動は一部の医師のみが扱っていたが、
今ではAEDの講習を受ければ一般人でも実施できるようになった。
同様に分娩時出血による母体死亡を減らすために多くの有効な手段が開発されてきている。
医学医療の進歩はハイリスク症例もローリスク症例もすべて一極集中させるというよりも、
むしろ救急現場や地域の第一線の医療機関で迅速診断や応急処置が可能となる
方向へ向かっているのである。

 筆者の知るかぎりでは、
病院の勤務医よりも診療所の開業医のほうがお産に対して熱意を持っている人が多い。
私と同年代の勤務医は”糊口のために”出産にも立ち会っているが、
興味の主体は内視鏡下手術であったり骨盤外科であったりする者が少なくない。
他科と異なり産科開業医はプライベートな時間が著しく制限されることを承知の上であえて
開業に踏み切っているのであり、そのためには出産に立ち会うことへの情熱が必要不可欠である。
決して金銭的なインセンティブだけの問題ではない。自らが理想とする妊娠分娩管理、
さらに母乳育児を始めとする産褥管理を追求したいと考える産科医に対して
「有床診療所での分娩取り扱いは危険だからもはや止めるべきだ」と決めつけるだけの根拠は乏しい。
確かに分娩の集約化にはいくつかのメリットがあるが、決して排他的なものであってはならない。
多様な分娩施設があって自己責任でそのいずれかを選べる余地を残しておくことが
妊婦にとっても医師にとっても望ましいと筆者は考える。
http://mric.tanaka.md/2008/09/22/_vol_130.html

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どこをどのようにしたら、この現状を打破できるのでしょう。
まず、産科医の確保なのでしょうか。
保障制度なのでしょうか。
卵が先か、鶏が先かに近いくらい、どこをどのようにしていいかわからないように感じます。

2008/9/24(水) 午後 7:54 かいつま(開 妻)

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産科医なんかもうだめな気がします〜。
というか、何年も前からそんな気が。。。ふぅぅ。。
心配くださってありがとうございますo(^-^)o!! 削除

2008/9/25(木) 午前 0:05 [ 僻地の産科医 ]

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