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【社説】

日中食の汚染 市民連携し責任追及を

2008年9月24日

 中国乳製品のメラミン汚染が日本に波及した。食の安全問題では有害を承知で出荷する業者や、真相究明を怠り責任を回避する行政の姿勢が両国に共通する。汚染源追及には消費者の力が大切だ。

 汚染米に続き、有害物質のメラミンを含む恐れがある中国産乳製品を使った食品が、全国の病院や福祉施設にまで広がっていた。

 メラミンは接着剤や塗料に使われる化合物で食用には使われない。ところが中国ではタンパク質が多いと見せかけるため、メーカー二十二社が粉ミルクや牛乳などに添加していた。

 粉ミルクを飲んだ乳児五万人以上が治療を受け、約一万三千人が入院中、腎臓結石で五人の死亡が確認された。一人っ子政策で子どもが一人しかいない家庭の親たちの怒りは、いかばかりだろう。

 汚染源には北京五輪の公式スポンサーになった、中国乳業界を代表する企業も含まれる。消費者のクレームは三月から相次ぎ、八月の五輪開幕前に当局にも届いていたといわれ、五輪を配慮して情報が伏せられていた疑いがある。

 業者の強欲や当局の無責任さにあきれるが「対岸の火事」と片付けられないのが日本の現実だ。

 人体への有害を知りながら汚染米を出荷した業者、問題発覚に「じたばたしない」「責任はない」と言ってのけた農林水産省首脳たち。中国で起きている事態は最近、日本でも演じられた。

 消費者の怒りやメディア報道が初めて事態の深刻さを明るみに出したのも両国に共通している。

 これまで、中国食品や製品の安全問題は国外への輸出品が人体に危害をもたらして発覚した。

 中国国内では被害があっても、ほとんど表面化せず、中国の人々は海外からの批判に、むしろ反発した。中国製ギョーザの中毒事件でも当初、中国では日本で有害物が混入された可能性が強いとされ日本への反発に火を付けた。

 しかし、今回の事件は製品の製造や流通が国をまたがる現代では、食の安全が一国にとどまる問題でないことを示した。汚染ルートも国境を越えるため、それを追跡し食の安全を確保するには政府だけでなく、民間でも国を超えた情報交換や協力のシステムが必要になるだろう。

 中国の消費者は業者や当局に反発を強め責任追及に立ち上がろうとしている。これらの動きは食の安全で政府間協力にとどまらない日中消費者の連携に向けた可能性を増しているのではないか。

 

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