◎敦賀以西のルート 腰を据えて議論始めたい
北陸新幹線建設促進小松市民会議の総会で、森喜朗元首相が敦賀以西のルートに関する
検討組織を設置すべきとの考えを示した。北陸新幹線については、今のところ金沢―敦賀の建設財源さえもめどが立っていない状況であり、敦賀以西といっても、まだ「将来の目標」の域を出ない段階ではあるが、ルートは早めに決定しておくに越したことはないだろう。延伸論議とは別に、国土交通省が中心となり、関係自治体なども交えて、腰を据えて検討を始めてもらいたい。
敦賀以西のルートでは、当初の構想通りの若狭回り、それより距離が短い米原回りが主
な選択肢となろう。若狭回りは、北陸と大阪方面を結ぶ直通列車を多く走らせることができ、利便性が高いという利点がある一方で、膨大な建設費が必要と見込まれるため、現時点では、比較的低コストで整備できる米原回りを支持する向きが多いように思われる。
ただ、米原回りにもデメリットはあり、「若狭断念」となれば最も大きな影響が出るは
ずの福井県の考え方も、いまだにはっきりしていない。加えて、いずれのルートを選択しても、新幹線の恩恵がそれほど大きくない自治体に地元負担を求める必要が出てくる。ルートを決定するにあたって、乗り越えなければならないハードルは少なくない。
これまでは、沿線の力を結集してレールを少しでも先へ延ばすため、難しい要素を含む
敦賀以西のルート論議は実質的に棚上げされてきた感がある。だが、いつまでも先送りできる問題ではないことも確かだ。そろそろ関係自治体の本音を聞き、あらためて課題を整理した上で、本気で意見集約を進める必要があるのではないか。
北陸新幹線の要望書には、「東海道新幹線の代替ルート」というくだりが必ず出てくる
。北陸、東海道新幹線が一つの輪のようにつながった姿が、おぼろげにではあっても見えてくれば、そうした主張の説得力も増すだろう。悲願である金沢開業、さらに金沢以西の整備をできる限り早く実現するためにも、ルートの空白部分を埋める努力をしておきたい。
◎メラミン混入食品 日本は水際で防がねば
汚染米騒ぎが広がる中で、新たにメラミン混入の可能性がある輸入食品問題が登場して
きた。冷凍ギョーザに続く不祥事として、騒ぎの本家本元の中国政府は「食の安全」に立ち上がった。甘い対応をすれば、人民の反乱で政府の存在が危うくなるからだ。そうした食品を輸入している日本は、中国政府に文句を言うべきだが、それにもまして国内に入れる前に、いわゆる水際で食い止める手立てを強化することが大事である。
メラミンは工業用の物質であり、食器などに使われる樹脂の主原料となる有機化合物で
ある。メラミンそのものは毒性が強くないが、他の化合物と反応すると結晶し、腎臓障害を引き起こす。中国の牛乳生産者が牛乳を水で薄めたことがばれないように、そのような物騒なメラミンを混ぜてタンパク質の含量を高く見せかけたといわれるのだ。
タンパク質の含量を知る方法としてケルダール法などが広く用いられているが、この方
法はタンパク質そのものを調べるのではなく、タンパク質には窒素が含まれていることから、窒素の含量を調べ、それをタンパク質に換算するのだ。ケルダール法などはメラミンなどのアンモニア性窒素にも反応し、そのために検査値が高くなり、タンパク質の含量を多く見せる効果がある。
詐欺的な手法であり、戦後間もない物不足のとき、お酒の成分のエチルアルコールの代
わりに芳香などが似ている工業用のメチルアルコールを混ぜることが横行し、失明したり死亡したりする人が出たことと本質的には似ている。このようなインチキが姿を消したと思い込み、代わりに農薬、抗生物質、細菌に汚染されるものをチェックするように検疫体制が変わったところへ過去の亡霊のような製品が出回り、検疫にひっかからなくなったといわれる。
商道徳が未成熟な中国では何が行われるか分からない。海外から入ってくる食品のチェ
ックを強化しなければならない。中国へ進出している食品産業には素材の吟味を求める。