故人の生前の希望や遺族の意向を反映した新しい葬儀や供養の形が増え、商機が到来している。旧来のやり方や特定の宗教にこだわらず、遺骨を海や山にまく散骨などの自然葬を請け負ったり、適切なプランの提案と明瞭な料金を売り物にする業者が増えてきた。22日決まった自民党“新総裁”の前途は多難なようだが、こちらの“新葬祭”の視界は明るいかも!?。
島根県の隠岐諸島に浮かぶ面積約1000平方メートルの小さな無人島。10月から国内で初めて丸ごと散骨所に姿を変える。都会に住み「最期は故郷に帰りたい」という人らの願いを受け、戸田葬祭サービス(東京都板橋区)が地元出身の有志らと共同で島を買い取った。料金は地元出身者で11万2000円から。地元以外からも20万円前後で受け付ける。年間100人以上の利用を見込む。
8月12日の開所式の模様が報道されると、全国から問い合わせが殺到。来年5月に予定していた第1回の現地見学会を急遽(きゅうきょ)10月29〜31日に繰り上げ、50〜60代を中心に予想の2倍の20組40人が参加する。散骨の第一陣は早くも同30日に実施するという。
散骨所の管理運営会社カズラ(島根県海土(あま)町)の村川英信社長は「国立公園内なので、人の立ち入りも制限する。散骨後は島全体を見渡せる対岸の慰霊所から供養し、故人も“安らか”な環境で眠れる」と話す。
遺骨に対するイメージから周辺住民が“迷惑”と反対し、墓地以外の散骨を規制する自治体もあるが、同町は「島外出身者が申し込めば、遺族らが定期的に訪れ、観光振興になる」と好意的だ。
■すみ分け崩れる
「“お布施”の額は不明瞭で高い」
そんな不満を解消するのは「おぼうさんどっとこむ」(http://www.obohsan.com/)。宗派を指定しない前提で首都圏の葬儀や法事に僧侶を派遣・紹介する専門サイトだ。各種のプランや料金が明示されているのが特長で、ネット経由で申し込める。
都会では特定の寺に一切の仏事を任せる檀家が減る一方、まだ葬儀の約9割が仏式で、葬儀屋任せにすれば、紹介料などが加わって高くつく例も多い。同サイトの場合、料金は通夜から告別式、戒名の授与に至る一般的な葬儀で12万6000円。首都圏では平均55万円以上が相場とされ、約4分の1で済む。
サイトと同名の運営会社(東京都稲城市)の林数馬社長は現役の僧侶。「法外なお布施を取る僧侶が横行すれば“仏教不信”を招く」と危機感を抱き、2004年12月に自ら設立した。
08年11月期の総取扱数は約1000件を見込み、3年で12倍以上の急成長ぶり。現在は社長に賛同する計7宗派の僧侶56人を派遣要員に抱える。
一方、06年に「お墓の引越し」サービスを本格開始したのは、メモリアルアートの大野屋(同豊島区)。高齢化などで先祖代々続く田舎のお墓を守る親族らがいなくなった場合に、都市部の自宅近くの霊園などを手配し、引っ越し一切を請け負う。昨年は231件扱ったが毎年20%増を見込んでいる。料金例は、宮城県から東京近郊に墓石を含めて新設した場合で230万円。
大野屋の箱崎容也(やすなり)広報室長は今後の葬儀について「高齢化で会葬者も減って、近親者や友人のみの“家族葬”などの『簡素派』と、会葬者を小人数に絞りつつも食事や演出などにお金をかける『こだわり派』の2極化が進む」と分析する。
業界内では「(高齢化で)死亡者数は毎年確実に増え、葬祭市場も拡大する。葬儀社や墓石業、仏壇業など従来のすみ分けは崩れ、互いに相手の縄張りに手を出す“仁義なき戦い”が本格化する」ともささやかれている。
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