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高木浩光@自宅の日記

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2008年09月22日

刑法上の囲繞地進入の再発防止策を示さないグーグル株式会社

11日の日記がASCII.jpで紹介された。2つ目の記事ではグーグル株式会社のコメントが掲載されている。

  • Google、女子高に突入!――セキュリティ専門家が指摘, ASCII.jp, 2008年9月12日
  • Googleストリートビューで「あの女子高」が消えた!, ASCII.jp, 2008年9月19日

    「Googleマップ ストリートビュー」に神奈川県内の私立高校の敷地内で撮影されたと見られる画像が掲載されていた問題(関連記事)で、その後、当該画像がストリートビューから削除されていることが分かった。(中略)

    グーグル日本法人に今回の画像の削除理由について電話で確認したところ、「個別の画像が削除された理由やどのような申請があったかはお答えできない」(広報)として明確な回答は得られなかった。

    また、「当社としてもぼかしの漏れなどの不適切な画像の見直しは行なっている」と断った上で、「基本的に専用のWebフォーム(「不適切なストリートビューを報告」)に通報があったものに限り、対応している」(広報)と説明。今回削除された画像についても、関係者などからの削除申請があったようだ。

私が入手している情報では、関係者からの削除要求は行われていないと聞いている*1。アスキーはなぜ当事者のコメントをとらずに記事を書くのか。それどころか、ここで取材で聞くべきことは「削除理由について」ではなく、「これは不法侵入ではないのか」「なぜ起きたのか」「撮影作業員にはどんな指示を出しているのか」「再発防止策はどうなっているのか」だ。アスキーの記者はなぜそれを聞き出さないのか。答えてもらえなかったのならそう書けばいい。それ自体がニュースじゃないか。日本のネットメディアの取材力の無さにはいいかげん吐き気がする。削除件数が何件になったかの基本事項さえいまだどのメディアも聞き出していない。毎週月曜には顔を合わせているくせに。

いずれにせよ、グーグル株式会社はこの事例をメディアに尋ねられたなら「これは不慮の事故であり意図して侵入したものではない」といった弁明を示してしかるべきだろう。なぜそれすらしないのか。嘘でも「事故が生じた原因を調査中だ」とか「これからは改善する」といった釈明をするのが普通だ。グーグル株式会社は法人の体をなしていないのではないか。刑事告訴されるまで再発防止策を打ち出さないつもりか。

「基本的に専用のWebフォームに通報があったものに限り対応している」というのは、まあわからなくもない。初めから厳しめの基準で自粛するのでは面白さ半減だというのだろう。言われたところから消していくうちに基準が定まっていけばいいという考えなのだろう。だが、敷地内への侵入はそういう問題ではない。これからもこういう撮影を繰り返すつもりなのか。今も道路でない場所での撮影写真が数多く掲載されたままだ。この先新たに掲載される地域はどうなるのか。

聞くところによると、グーグル株式会社の広報は一人しかいないそうだ。どうせろくにやる気もないのだろう。いつでもまた別の外資系会社に移籍できるようでは、こういう事態で会社がどうなろうと知ったことではなくなるだろう。社長も英語勉強法の本を出版してご満悦だそうだ。この人は何をやっているのか。そういう風評は表には出ないがいろいろな人から聞こえてきている。

佐々木俊尚氏もサイゾー10月号で次のように書いている。

  • プライバシー侵害?便利ツール?賛否両論のグーグル「ストリートビュー」, 佐々木俊尚のITインサイド・レポート, サイゾー10月号, pp.34-35

    プライバシーに対するグーグル的感覚とは

    ところで、高木さんが怒っているのは、(中略)この問題に関してグーグルの側がきちんと説明せず、まともな広報対応もおこなっていないことだ。(中略)

    実際、私がグーグル社内の何人かの知人に聞いてみると、彼ら彼女らはこんなふうに話した。「プライバシーの感覚は、時代や国や世代によってどんどん変わっていくでしょう?」「たぶん今は受け入れられなくても、ストリートビューの利便性は絶対に受け入れられるし、現在の批判は一過性のもの」「グーグルがやらなくても、どうせ誰かがやりますよ。だったらうちがやればいい」

    こうしたグーグルの考え方は、なかなか一般の人には受け入れられないだろう。しかしプライバシーの感覚が時代とともに移り変わってきているのは事実だ。(中略)オンライン書店アマゾンに対して、「これは監視社会じゃないか」と批判する人はほとんどいない。反監視の市民運動のメンバーが「アマゾンって便利だよね」と書籍の購入に使っていたりするぐらいだ。プライバシー侵害というのはその程度の皮膚感覚でしかなく、あまりロジカルではないのだ。

アマゾンと同列に扱うあたり佐々木氏もロジカルでないが、この記事の全体的な論調がどういうものかはサイゾー2008年10月号で確認できる。

サイゾーはこれまで読んだことがなかったのだが、今回初めて買って読んだところ、もうひとつグーグル株式会社に関する記事が掲載されていた。そこにもこんな記述がある。

  • グーグルが起こす"広告革命"と"プライバシー監視"ビジネス, サイゾー10月号, pp.64-66(ネットには前半までしか掲載されていない)

    本誌編集部がグーグルに質問状を送ったが、返答はなし。そのほか、同社のプライバシーに関する見解を聞こうと質問を投げたが、度重なる催促にも回答可否の返答すらよこさない始末であった。

    [グーグルにハマれなかった元社員の証言から――]
    殺伐としたジャパンオフィスの実態とは?

    (中略)プライバシーとの兼ね合いで議論となっている「ストリートビュー」にしても、「1年ほど前から準備は進めていて、どんなサービスかは知っていたけれど、検索して自宅の写真が出てきたのを見て気持ち悪くなった」(元社員談)と、進めていた当人たちも改めてびっくり。この元社員いわく、忙しすぎて、その是非を考えたり話し合ったりする余裕も機運もなかったそうだ。

グーグル株式会社のこうした振る舞いは、外国企業の日本法人におけるビジネスコンプライアンスの問題として注目されるべき事象だと思うが、今週発売のビジネス週刊誌はこぞってグーグル特集だという。この二誌はグーグルをどのように語るのだろうか。

グーグル・スト・カーは墓場がお好き

道路でない道や空き地で撮影している事例はたくさんあるが、実態周知の必要性に照らして紹介するのにはばかられないものとして、墓場への進入事例がある。これまでに大阪北摂霊園の事例高槻市公園墓地の事例を示したが、他にも各地でいくつもの事例がある。墓場は地図上で灰色で示されているので簡単に見つけられる。


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図1: 横浜市日野公園墓地の事例

日野公園墓地の事例では、既に一部の場所で削除されている。1枚ではなくかなりの枚数が削除されているのだが、そのわりには全部を消しているわけではない。どういうことなのか。


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図2: 八王子市緑町霊園の事例


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図3: 狭山湖畔霊園の事例

これらはグーグル株式会社の方針に沿ったものなのだろうか。

*1 削除作業は一時、中途半端な形でなされた。当時私が確認していたところでは、12日19時ごろに1枚だけ削除された。削除されたのはASCII.jpの記事に掲載された玄関の写った写真一枚だけであった。それ以外の写真(至近距離で校舎の窓が大写しされた写真等)はそのままだった(図1)。それが、同日20時40分ごろに全部(11日の日記の図2で赤の実線で示した場所という意味での「全部」)が消えた。

図1: 中途半端な削除状態がしばらく続いていた様子

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日野公園墓地の事例では、既に一部の場所で削除されている。1枚ではなくかなりの枚数が削除されているのだが、そのわりには全部を消しているわけではない。どういうことなのか。 http://takagi-hiromitsu.jp/diary/20080922.html#p02 こういうことです。 公道から撮影した市

http://takagi-hiromitsu.jp/diary/20080922.html#p02 日野公園墓地の事例では、既に一部の場所で削除されている。1枚ではなくかなりの枚数が削除されているのだが、そのわりには全部を消しているわけではない。どういうことなのか。 えー、これに対して種明かし*1があって

JaneDoe View α Build ID: 0805130308 でスレ立て <br> 名前欄:ぼるじょあ#瀚i栖p,繊 <br> <br> <br> ぼるじょあ#ZUr5jo1O <br> ぼるじょあ#セV8cLFセz <br> ぼるじょあ#ぶるじょあ <br> ぼるじょあ#セV8cLFセz <br> ぼるじょあ#3Yr+^dym <br> ぼるじょあ#Lme]tY{b <br>..

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