タイムレコーダー
	ある意味、昔からフレックスタイムを採用していたアニメック編集部において、まったく無縁であったのがタイムレコーダーである。サラリーマン漫画の定番である出社した時にカードを差し込みガチャンと出社時刻を刻印するあれである。 
ある日、解体中のビルの横に古びたタイムレコーダーが捨てられていた。こういう物を見ると分解してしまうのが、私とU杉の癖である。当時5万円ほどの機械だが、10年は使い込まれたらしくメカニカル部分の摩耗は激しく、何よりも心臓部のステッピングモーターが壊れていた。普通なら、そのまま捨てるのだが、朝から晩まで数十人のアルバイトを使っているショップアニメックでは何度か購入の話が出ては消えていた。高い機械を買うよりは、帳面を1時間単位で正社員がチェックすれば良いだろうという、考え方だ。 
「高橋部長、中古のタイムコーダーだったら幾らで買います?」 
「使える物なら出金伝票で処理できる1万円出すぞ」 
「旦那、掘り出し物がありますぜ」 
またしてもU杉と徹夜の突貫作業である。メカニカル部分は、彼に任せた。実はこの種類の歯車は、規格品であり、工場の計器類を保守点検しているバイトをやった時の余った歯車がボストンバック一杯に残っていた。筐体の清掃と錆び取り、さらに組み立てをU杉がする間にステッピングモーターを分解し、心臓部のモーターだけは朝一番で秋葉原に買いに出掛けた。(秋葉原は当時はそういう街だったのだ)タイムレコーダーの大手アマノの製品なので純正品はあったが5千円近くした。さすがに中古はないので、パーツ屋でデッドストックになっていた心臓部を千円で購入した。帰りに神田の事務機屋に寄り専用のカードを一束購入する。これが500円。戻って新品同様になった筐体に、組み立て直したステッピングモーターを入れ、電源を入れたら作動した。時間合わせは比較的簡単だったが、大の月と小の月のセッティングには一時間ばかり機械を回してみなくては調整ができなかった。その日の夕方には、完全に作動するタイムレコーダーと専用カードを一万円で営業部に売りつけたのである。本来は、専用のスタンプインクを交換する必要があったが、朽ち果てたパットを外し、店にあったスタンプ台を同じ大きさに切り取って詰め込んだ簡易改造品である。 
かくして、交通費込み総額2000円で再生したタイムレコーダーを1万円で売り払った私とU杉は4千円ずつの山分けで、まともな晩飯を食べたのであった。 
	 
    次号予告 1980年を迎え、強力な戦力を得た編集部。そして現在、お忙しい中の「二代目」にコンタクトを取る小牧氏。「二代目表記も内容もOK」の承認ももらい、次回、「二代目副編集長」の活躍!ご期待ください。