アニメックの頃… 著/小牧雅伸

RX−78

とはいいつつ、ガンダムに形式番号を入れたのは私なのだが……。
「監督、ガンダーX78はださいので、軍事開発コードっぽいものにしていいですか?」
「そんな事は決めてないから好きにして下さい」
というお墨付きで「RX−78」と決定した。これには、私なりの解釈があった。アムロの台詞からすれば、連邦軍はザクをそれなりに研究していた。ただミノフスキー粒子の戦術散布というキーワードを見落とし、「ロボットが何の役に立つか」と油断し、大鑑巨砲主義に走ったのではないかと考えたわけである。連邦軍の官僚体質としてはそんなところだろう。だか、軍としての基本姿勢で、敵が持っているからには、それなりの対抗兵器の開発も閑職部門で継続されていたはずである。それらの基礎研究がなければ半年でガンダムは製造できないはずだ。今の日本であっても、お役所では不合理な事が行われている。たとえばボールペンという文房具は存在せず、「油性滑走体筆記具」という名称であったり、ヘリコプターは「回転翼垂直上昇飛行機」なのだ。それから考えればジオンの呼称であるモビルスーツは、連邦軍が使うわけはない。おそらく「ロボット兵器試作0078年式」だろうという推論である。
試作機の設計図には、こう書かれるはずだ「RX−78」と。

後に数々の謎本が出て、ひどい本になると「RX−78のRは連邦軍のRだ」とする珍説があった。「いくらなんでもUC時代にローマ字使うかよ」が私の反応だ。ついでに書くと、試作ガンダムが3体存在するという設定は、富野さんの小説版だ。大破した1号機からアムロが乗り換えたのが、後にマグネットコーティングの施される2号機である。だから、
「RX−78」は私の命名だが、「RX−78−2」はサンライズ設定というややこしい流れも存在する。一方、ジオン側のモビルスーツには、「コミックボンボン」でプラモデルからのアプローチがあり、1980年から突然ザクに「MS06」というコードが付けられて、編集部一同が驚いたという経緯があった。それでも劇場公開前にイイヅカさんの直筆で設定書のモビルスーツ、モビルアーマーに全て開発ナンバーが降られたので、これは公式設定となったのである。グフや水陸両用モビルスーツには、この番号が変遷したものがあるが、私には関係のない話。本編フィルムで「MS06」と発言されていない以上、「機動戦士ガンダム」に出て来たのは、ザクとガデムの乗った旧式のザクだけなのである。
あらためて書いて見ると編集者ってのは我が儘だと思う。本編フィルムの中には「RX−78」一度たりとも出てこない名称なのだから、話が矛盾している。

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