アニメックの頃… 著/小牧雅伸

ペイルココーンとガンダム

さて、この号に掲載された漫画が、出渕裕プロデュースによる曰く付きの作品である事を知る人は少ない。「ノイジィ ランニング 騒がしき逃走」は、ガンダムとヤマトを混ぜたアニパロであったのだ。アニパロの先駆けと言えなくもないのだが、公式版権許諾を受けた「宇宙戦艦ヤマト」と「機動戦士ガンダム」を掲載している本で、よくぞこれだけ怖い事をしたものだと思う。人気は読者アンケートでも上位であったが、作者は少女漫画で活躍中であった為に、偽名を使っているとはいえ、あちらの編集部にばれたら大変だなぁとハラハラしたものである。
これではいかん、ちゃんとした漫画を……と考えた編集部の結論がまた無茶苦茶であった。
「ペイルココーン」である。板橋しゅうほう氏の代表作として、今もコアなマニアに語り継がれる荒唐無稽SF傑作である。なにしろ「月刊OUT」で78年11月号まで連載されつつ、別冊のランデヴーにも出張連載をした不朽の名作である。その 第2部として連載をしてしまおうという壮大な計画であった。8号ではその予告をかねて「緊急座談会 いたはし・しゅうほう新連載を語る」を開催した。「月刊OUT」のK氏による乱入で何が何だかわからない座談会になっているのだが、これが業界で話題となったのだからたいしたもの。考えたら「元 OUTのK」じゃないのかとも思うのだが……。何度か説明もなく登場している品田冬樹氏自作の着ぐるみ「ジアーラ」は、この作品の主人公である。違うという人もいるかもしれないが、シリアス・ストーリーでは人気が出なくて、最終回だからハチャメチャ(これも死語ですな)にしてしまえとやった事で大人気になり掲載が伸びた「ペイルココーン」においては、やはり主役であろう。アニメック9号からはペイルココーン外伝「熱中ジアーラ怪獣編」が連載されるのである。絶対にギャグ企画だと思った人が多く、問い合わせが殺到したが、連載が開始された事で「今世紀最大のギャグ」という賛辞に変わった。
私はというと、この座談会から一人二役を疑われるようになり、署名には小牧のKを使っていたのが、翌年から雅伸の「ま」を使うことになったのである。あっちのKは名字じゃないんですけどねぇ。

そして、目玉は『機動戦士ガンダム』。小特集であるにもかかわらずページ数は多い。「富野監督大インタビュー」とサブタイトルまでつけているあたりが商業誌的な売り方になっていた。地球連邦軍本部にジャブローと、固有名詞が与えられた三日後にインタビューをするというタイミングの良さであった。
さらに、どうしても時間が取れないという安彦さんに、偶然通路を通り掛かった私が挨拶をしたという設定のもとに、5分間だけインタビューをするという離れ技も演じた。
もちろん、そんな器用なセッティングをしてくれたのはイイヅカさんである。まだオデッサの結末が判らない時期である。安彦さんは、26話「復活のシャア」のカット64を描いているところであった。結局のところ、本放映中に安彦さんにお話を伺ったのが、この5分間だけという残念な結果になってしまった。さらに、後ろ姿3枚は撮影できているのだが、なんと正面からの二枚はなぜかフィルムに光が入り現像処理を施しても印刷できなかったというお粗末な結果になってしまった。その後も2年ほど愛用したカメラで、なぜかこんな事象が起きたのはその時だけという不思議な事件だった。

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