アニメックの頃… 著/小牧雅伸

ガンダム特集の内容

「アニメック」6号は、まさにガンダム特集で、表紙・ピンナップに始まり、巻頭カラーもガンダムの1話のダイジェストである。表紙のアムロとガンダムという組み合わせはオリジナルで、セル原画はケッダーマン氏である。この1話のフィルムは、名古屋テレビの今井さんが初号を貸与してくれたのだ。初号フィルムは、放送局で実際に放映する時に使う一番最初に焼き増しされたフイルムだ。もっとも、アニメ雑誌が増えるに従い最新の映像を紹介するのが定番となり、各誌が同時に初号を手配するので「複数の初号フィルム」が存在する作品が幾つか存在するようになる。
ともかく、名古屋テレビで放映されただけの綺麗なフィルムを複写して、OP・Aパート・Bパート・EDを構成した。この当時のテレビ放映には16mmフィルムが使われていた。昔の35mmフイルムであれば、一コマが普通のハーフサイズのネガサイズなのでそのまま使える。現に「海のトリトン」や「科学忍者隊ガッチャマン」ではフィルムを買い、必要なカットを切り出して印刷所に回したのである。横画面ならばB5版に拡大印刷しても何ら問題がない解像度であった。
ところが、16mmフィルムであると、一度35mmのポジフィルムに接写する必要があるのだ。
16ミリフィルムをリールに掛け、カラカラ回しながら、「この場面」と思う部分にコヨリを挿していくのだ。これを接写の得意なカメラマンに回し、35mmのポジに複写するわけである。
このコヨリ出しという作業、一本やると目の焦点が怪しくなり、車の運転は控えた方がいいくらい目がグラグラしたものである。
アニメと特撮のムックや雑誌が増えるに従い、フィルム複写やセル画撮影を得意とするカメラマンも増えていった。「アニメック」では、「ランデヴー」の頃から懇意にしていたカメラ万太郎氏に格安で撮影してもらっていた。本名が何かと差し障りがあるので、カメラマン・ネームで失礼するが、万太郎氏はライブカメラマンとしても優秀であった。なにしろ彼がコミケ会場に現れるだけで、「今日は自作の猫パン履いてるんです」と可愛い女の子がスカートをめくって見せてくれるという、ある意味羨ましい職業であった。もっとも後になると猫も杓子もコスプレというブームになってきて、撮りたくもない「三段腹ラム」や「平安京ララァ」を撮影して歩いたのだから、あまり羨ましくもないのかもしれない。どちらにしろ、どの会場のコスプレ撮影であっても、被写体自らがポーズを取ってくれるという大変人に好かれるカメラマンだった。目も良くて「小牧さん、シャアの特別意味もない動画部分にこよりが入っていたので一コマ前の原画を接写しておきました」と気の利く人でもあった。
後半は目が疲れるので、一コマずれてコヨリを入れてしまう事が多かったのだ。基本的にアニメの絵は、原画部分を撮影する。時たま、動作を取る必要から比較的崩れていない動画部分を撮影する場合もあるのだが…
設定書のキャプションも最新の注意を払った。初期段階では連邦軍の戦艦は、「マゼラン」「サラミス」である。これはフラッグシップだろうということで、「マゼランタイプ」「サラミスタイプ」とした。これだけ大量に建造された戦艦なのだから、フラッグシップはもう存在しなくて、かつ艤装も同じだから管制室以外では固有名詞は出ないだろうという判断である。4話の「ルナ・ツー脱出作戦」ではマダガスカルという固有艦名が出るので、こんな組み合わせにしたのだ。物語が進む中で、固有名詞が出るというのはこの当時の富野監督のお作法でもあった。たとえば、シャアが使っているムサイ艦は、艦橋の作りが違うのだからそれなりの固有名詞があるはずだが、「機動戦士ガンダム」では全編を通じて固有名詞は登場せず、名前が付けられるのはだいぶ後の話であった。
「これでよくわかった」という意見が多かったのだが、質問や要望があきれるほど来たのもこの号の特徴だった。特に大阪ではCM枠を別売しているらしく、予告編が見事にカットされているのが判明した。永井一郎氏の「君は生きのびることが出来るか!」という名ナレーションを聞いた事がないのでは、小見出しに使っても通じないわけである。
ネットワークの問題もあり、部活を切り上げ長野県内の大手電気店のテレビで見てから帰宅するという高校生からの便り等を読むと、ガンダムの視聴率の1パーセントは、他作品の3パーセントに匹敵するのではないかという熱中振りが伝わってくる手紙がかなり増えた。
それに合わせた、投稿ページや解説ページを増やさないと対応しようがなかったので、次号は小特集の予定だったが大特集の「未来少年コナン」と大差のないページ数に決定した。

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