「親ウナギ」が捕獲された海域
「ニホンウナギ」の親魚が太平洋マリアナ諸島沖の産卵海域の深海で、初めて捕獲された。水産庁と水産総合研究センターが22日、発表した。この海域ではこれまで誕生直後の幼生しか見つかっていなかった。謎に包まれたウナギの回遊ルートや産卵条件の解明につながると期待される。
ニホンウナギは日本、中国、韓国などにすむ。成長すると産卵のため川を下り、海に入る。どこで産卵するのかが長年の謎だったが、東京大海洋研究所の塚本勝巳教授らが05年、同諸島沖のスルガ海山周辺で幼生を見つけ、ここが産卵海域だと突き止めた。
しかし、親ウナギが捕まらず、どのくらいの深さで産卵するのかなど詳しい生態はまだわかっていない。
水産庁などのチームは今回、スルガ海山を含む広い海域でトロール網を引き、6、8月に親ウナギ計4匹を捕まえた。捕獲した深さは200〜350メートルだった。親ウナギの捕獲は、産卵場所を詳しく知る重要な手がかりになる。
現在のウナギ養殖は、沿岸でとった天然の稚魚(シラスウナギ)を育てて出荷している。近年、稚魚が激減しているため、卵から育てる養殖法の開発への期待が高いが、幼生を稚魚に育てるのが技術的に難しく、普及していない。
東京大海洋研究所の青山潤・特任准教授によると、ウナギは世界に18種・亜種いるが、産卵海域で親魚が捕獲されたのは初めてで、「捕獲場所の水深や水温などは、卵から育てる養殖法を実用化する上で貴重なデータになる」という。(山本智之)