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社説1 「麻生対小沢」今度は国民が選ぶ番だ(9/23)

 自民党総裁選挙は大方の予想通り麻生太郎幹事長が圧勝した。これにより、次期総選挙は麻生新総裁の自民党と小沢一郎代表の民主党との対決構図が確定した。今度は国民が総選挙で政権選択をする番である。自民党も民主党も明確な政権公約(マニフェスト)を提示して国民の審判を仰ぐべきである。

 麻生氏圧勝の要因は明確である。各種世論調査で次期首相にふさわしい候補として抜群の人気があり、「選挙の顔」として自民党内の圧倒的な支持を集めた。景気が後退局面に入り、麻生氏の景気対策に期待が集まった点も見逃せない。

 今回の総裁選は5人が立候補して、にぎやかに始まったが、途中から失速気味になった。麻生氏の独走展開になって勝敗に関する関心が薄れ、各候補の間に大きな政策の違いがなく政策論争も盛り上がりに欠けた。後半は世間の関心が米国発の金融危機や事故米転売問題などに集まり、消化試合の様相を呈した。

 それでも総裁選を通じて麻生新総裁の政策の輪郭は浮かび上がってきた。「日本経済は全治3年」と宣言し、景気対策重視を明確にした。具体的には定額減税の実施や政策減税、中小企業対策などを示した。

 2011年度までに財政の基礎的収支を均衡させるとした政府目標にはこだわらない姿勢も見せた。3年間は消費税引き上げをしないと明言した。社会保障費を毎年2200億円抑制する方針は「ほぼ限界に達している」とも述べ、後期高齢者医療制度は見直す考えを表明した。基礎年金の国庫負担を2分の1に引き上げる財源は特別会計の剰余金などで充当する考えも示した。

 麻生新総裁の誕生で従来の小泉改革路線からの転換が鮮明になった。景気は後退局面に入り、米国発の金融危機で先行きは不透明になりつつある。必要な景気対策は適切に実施すべきだが、その中身は経済の構造改革を促し、経済成長につながる政策に力点を置くべきである。

 財源を安易に国債増発に頼るのは好ましくない。行政改革やムダ排除を進める必要性はむしろ高まっている。国の出先機関の統廃合などの行革ビジョンも提示すべきである。

 麻生新総裁は24日召集の臨時国会で首相に指名され、新内閣を組閣する。前回の総選挙から3年が経過し、その間に3回も首相が交代する事態になった。次期首相は速やかに衆院を解散して民意を問うべきである。厳しい経済情勢を踏まえれば、臨時国会で補正予算審議を行ってから解散するのが望ましい。

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