日本や世界で現在進行形の最新の軍事情報を選別して、誰にでもわかるような文章で解説します。ホットな事件や紛争の背景や、将来の展開を予測したり、その問題の重要性を指摘します。J-rcomでは、日本で最も熱い軍事情報の発信基地にしたいと頑張ります。

      

   

 
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この情報の最も新しい更新日は9月23日(火)です。

防衛省新方針

護衛艦に

  女性自衛官

戦闘艦に初配置

(朝日 9月23日 朝刊)

[概要]防衛省は22日、女性用の空間がないという理由で制限してきた護衛艦や、護衛艦搭載の哨戒ヘリ、機雷処理する掃海母艦への女性自衛官の配置を認めた。戦闘にかかわる艦艇に女性自衛官の配置は初めて。

 女性自衛官を配置するのは、人手不足の影響力で艦艇への充足率が下がっており、その解消をはかるとともに、女性自衛官を積極登用していく流れの一環。まずは新造艦から進めるため、今年年度末に就役予定のヘリ搭載型護衛艦「ひゅうが」に最大30人を配置する。

 防衛省によると、今まで女性自衛官を戦闘職に配備しなかった理由は、専用の空間がないためプライバシーが守れないという理由と、近接した戦闘に遭遇して、出産に将来影響する危害を受ける危険があったためという。

 護衛艦への未配置は、プライバシー問題が主な理由で、艦艇の改造費がかかるとして見送られてきた。しかし新造艦のように、最初から転用可能な区画を設ければ解消できるとして今回配置に踏み切った。

[コメント]人手不足の海自としては、米海軍の例を参考にして配置に踏み切ったと思う。そのため、これからは陸自の戦闘部隊(例えば普通科)にも広がる新しい人事配置と推測する。戦闘職種に女性自衛官の配置が、海自がよくて、陸自はダメということにならないからだ。

 それに重要なことは、男子自衛官よりも女性自衛官の方が、はるかに優秀(頭脳)であることを忘れてはいけない。それは採用時に、女性自衛官の人数枠が決められ、男子より少ない人数が設定されているからだ。そのため同じ高校から一般陸士募集を受験し、成績の良い女子生徒が落ち、成績が悪かった男子生徒が合格することはよくあった。

 入隊後は男女同様の待遇といっても、すでに入口の段階で女性の能力が制限されるシステムが組み込まれていた。しかし私は本当の問題は、人事システムやプライバシーの問題ではないと思う。精神と肉体の健全な男女が、狭い環境に長期間閉じこめられることが問題なのだ。

 イラク戦争では、ペルシャ湾の戦闘から帰還した空母乗組員の女性隊員(士官を含む)が、多数妊娠していたことが判明している。私は彼女たちがふしだらなためとは思わない。しかし日本人はそのような現実を許すことができるだろうか。週刊誌やテレビのワイドショーが大騒ぎすると思う。疑心暗鬼になった乗組員の奥さんが、夫に乗艦勤務をやめるように言わないかが心配だ。

 いくらプライバシー問題に配慮した構造でも、両者をオリで囲って分離することはできない。乗員を管理・監督する艦長の心労は大変なものと同情する。しかし海自がこの問題を避けて通れないないのも事実である。時間をかけて、焦らず、無理をしないで、新しい環境になじめるように期待したい。決して安易にこの問題を考えないようにお願いする。少量なら薬になるが、多すぎれば毒になる例もある。

ロシアSLBM「プラバ」

新型弾道ミサイル

  発射成功

(読売 9月20日 朝刊)

[概要]ロシア国防省は18日、新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「プラバ」の発射実験に成功したと発表した。発射実験は同日、ロシア北西部の白海で行われ、潜水艦から発射された「プラバ」は極東カムチャッカ半島の目標に到達したという。

[コメント]イタル・タス通信によれば、新型SLBM「プラバ」を発射したのは原子力潜水艦「ドミトリー・ドンスコイ」で、発射後20分後にカムチャッカ半島の目標に着弾した。

 プラバは射程が8000q、ミサイル1基で核弾頭10個を搭載でき、米国のミサイル防衛(MD)を突破できる性能を持っている。旧式な単弾頭ではなく、多弾頭のことをMIRV(マーブ)と呼び、最近は多目標弾頭と訳している。ミサイルの弾頭に搭載された10個の核爆弾が、それぞれ別々の目標を攻撃出来るほか、時間差を設定して同一目標を連続して核攻撃が可能である。なぜ同じ目標を連続攻撃するかといえば、1発目で大破された軍事施設に、さらに連続して核攻撃を加えることで、堅牢な地下施設などの破壊をより確実に出来るからである。

 さらにMDが登場する時代になって、MIRVには10個の弾頭に中に囮(おとり)弾頭をしのばせ、宇宙空間でMDの迎撃を囮に誘導することが可能になる。これが敵のMDを突破できる能力である。囮とは弾頭の形をした金属箔の風船で、MDシステムの探知・誘導レーダーに反応させ誤誘導させる。囮は金属箔の風船であっても、宇宙空間では大気の抵抗や摩擦熱がないから、核弾頭と同じ動きで敵の誤反応を誘うことができる。その配備費用もMD開発・配備費用と比べて、はるかにはるかに少なくて済む。

 先月の8月28日には、ロシアが新型ICBM「トーポリ」の発射実験を行ったが、トーポリも弾頭はMIRV化されたものである。(What New 8月29日 グルジアの対露圧力に、「ICBMを発射」を参照してください)

 ロシアが今回、SLBM「プラバ」の発射実験を行ったのは、グルジア問題で対露圧力を増そうとする米欧勢力をけん制するためと思われる。これも昔からの、ロシア流・核兵器による示威行為(おどし)なのである。

アフガン国境

 無人機攻撃で7人死亡

パキスタン、

  米を非難

パ大統領、23日、訪米

 ブッシュ大統領と会談

(毎日 9月19日 朝刊)

[概要]アフガンに近いパキスタン部族支配地域の南ワジリスタン管区で、アフガン駐留米軍の無人機からとみられるミサイル4発が着弾。7人が死亡した。パキスタンのクレシ外相は18日、「攻撃は事前通知もなかった。主権尊重は世界の基本原則だ」と反発した。米軍が越境攻撃を続ければアメリカとの同盟が損なわれると非難した。

 ザルダリ・パキスタン大統領も18日、訪問先のロンドンで「(アメリカは)領内侵入もミサイル攻撃もやめるべき」と求めたばかり。17日にはマレン米統合参謀本部議長がパキスタン側と協議。イスラマバードの米大使館が、「米国はパキスタンの主権を尊重する」と声明を出した直後のミサイル攻撃だった。

 ただ、死亡した7人の中に、国際テロ組織アルカイダに関連する外国人がいたことで、部族地域を「テロリストの聖域」とみなす米側の言い分が立証されたことになる。ザルダイ大統領は急きょ、23日に訪米し、ブッシュ大統領との首脳会談に臨む。 

[コメント]本気でザルダイ大統領がアメリカ軍の越境攻撃に対して怒っているとは思えない。この機会にブッシュ大統領と会談し、自分への支持と、アメリカからの援助拡大を求めるものと思われる。マレン統合参謀本部議長との会談も、ブッシュ大統領との会談を求める政治交渉の場ではなかったか。

 さてこの無人機によるミサイル攻撃だが、これを運用しているのはアフガンの米軍だけではない。パキスタン北西部で活動するCIA(米中央情報局)もテロリスト暗殺に使っている。部族支配地域に潜入しているCIA要員が、アルカイダ系外国人の存在を確認すると、アフガンから飛来した無人機に目標を指示して、対戦車ミサイル(りゅう弾)を発射する。このミサイルは有線誘導で無人機を通じた遠隔操作で命中させる。破壊目標は隠れ家になる建物や洞窟の入り口や、テロリストが乗って走行中の車まで攻撃が可能である。

 攻撃後、CIA要員は攻撃場所で死体の確認作業(戦果確認)を行う。決して攻撃のやりっ放しというわけではない。そこまで周到な作戦を行うのだから、パキスタン政府やパキスタン軍情報部が無人機のミサイル攻撃を知らないことはあり得ない。しかし、あえて知らさないように要請することは可能である。大規模な侵攻やパキスタン領内に駐留するわけではない。せいぜい爆撃機か無人機の攻撃か、ヘリに乗った特殊部隊の奇襲である。事前に知らされた方が、パキスタン政府の困ることの法が多い。

 今頃、パキスタン北西部の部族支配地域では、米軍の大中小の無人機が飛び回り、ブーンという低音の旋回音が響いていると思う。その低音を聞くだけで、テロリストには強い心理的な圧迫を与えるはずである。

河野洋平氏が引退会見

日韓中外交

  「正しい姿勢で」

日本が加害者の立場も

(朝日 9月19日 朝刊)

[概要]最後の大物ハト派と呼ばれた河野洋平衆院議長(71)は18日、記者会見し、政界を引退することを表明した。

 若い政治家に対しては、「広島は被害者だが、日本は加害者の立場であることも勉強して欲しい。特に韓国、中国に対する外交姿勢を真剣に考え、正しい姿勢で臨んで欲しい」と注文をつけた。

 河野氏は宮沢内閣の官房長官として、従軍慰安婦への軍当局の関与として、「強制性」を認め、謝罪と反省を表明した93年の「河野談話」について、「極めて重要な談話だった」と振り返った。「強制性を裏付ける証拠がなかったのは事実」との安倍首相(当時)との発言をきっかけに、河野談話を否定する動きが出たことについて、「談話を否定したことからアメリカでも問題が起き、アジア、オランダなどでも取り上げられた。そのたびに日本の政治は何だと言われるのは残念だった」と語った。

 引退の理由としては、今年初めに広島市で開かれたG8下院議長会議(議長サミット)で、議長役を務めたことを挙げて「長年の念願であり、大きな達成感を感じた」と説明。「体調は必ずしも万全ではない」とも語った。02年にはC型肝炎治療のため、長男・太郎氏から肝臓移植手術を受けている。

 最後に、ねじれ国会の現状については、「ねじれ現象によって、国際社会の信頼を失うことがあってはいけない」と強調した。

[コメント]私は時々、靖国神社に参拝するが、A級戦犯合祀以降、天皇が参拝されていないことを残念に思っている。しかし勝戦国が行った東京裁判(A級戦犯)は国際法に基づいた正しい裁判と考えていない。その上で、日本は宗教施設でない国立の慰霊施設を新しく作るべきと思っている。その国立の慰霊施設には、軍関係者の戦闘による戦死者だけでなく、米軍の都市爆撃、原爆被爆者、海外で亡くなった戦争受難者の方、沖縄戦で亡くなった島民、そのような太平洋戦争で亡くなった犠牲者を慰霊すべきであると思う。

 また、広島、長崎への原爆投下は、明らかに国際法違反だが、日本が被爆したからアジア各地で行った蛮行が正当化できるとも思っていない。

 そのような考えから、河野談話は政治的な合理性で支持することができる。

 日本の近代史の中には、今の日本人が目を背けたい様な事実があるのも事実である。我々は心の傷を早く忘れたいと思っていても、痛みつけられた人は忘れていない。互いに自分の傷を自覚し、相互に話し合って、未来を考えなければ和解と友情は生まれない。

 河野洋平という政治家が政界を去る時になって、その大きさがわかったように感じた。もし、あの時の河野談話がなければ、日本はアジアでどれほど孤立していたか。おそらく安倍元首相は死ぬまでわからないと思う。同時に、麻生新首相(次期)も安倍氏同様にわからないタイプに属する人と思っている。 

アクセス数

 600万件突破

(9月18日 午前9時半頃)

  先ほど、下段の更新が終わったときに見ると、アクセス数が6000010件を表示していました。600万件を突破した時間は午前9時半ごろでした。

 これも皆さんが支持してくださったおかげと感謝しています。私は微力なくせに生意気ですが、これからも向上心を失わないで、軍事常識の普及にがんばりたいと思います。

 本当に、今までアスセスして頂いてありがとうございます。もう開設して9年が経とうとしています。開設当時に小学3年生だった長女は高校3年生です。長かったようで短い9年間でした。これからもよろしくお願いします。

ミサイル防衛(MD)

空自 PAC3初試射

弾道ミサイル 迎撃実験成功

(産経 9月18日 朝刊)

 共同通信 配信

[概要]防衛省は17日午前、空自配備の地対空ミサイル・パトリオットPAC3で、初の発射試験を米ニューメキシコ州ホワイトサンズ射場で実施、標的の模擬ミサイルの迎撃に成功した。PAC3は平成19年3月から首都圏を中心に配備を進めている。

 試射は米軍の協力で、約120キロ離れた場所から弾道ミサイルに見立てた模擬ミサイルを発射。空自部隊がレーダーで探知し、約2分後にPAC3を発射すると、約30秒後に上空で模擬ミサイルをとらえ、迎撃に成功した。

[コメント]問題・・・・・この新聞記事には、軍事常識では考えられない間違いがあります。それはどこか答えなさい。

正解・・・・・防衛ハンドブック(朝雲新聞社刊)の平成20年度版によると、パトリオットPAC3の速度は2〜4q/S(秒速)となっている。発射30秒後で目標を迎撃したのなら、この時にPAC3が30秒間飛翔すれば、飛翔した距離は60q〜120qという計算ができる。

 ところが防衛ハンドブックではPAC3の射程は20qと記載されている。約20qしか飛ばないミサイルが、60q以上の遠方で命中したというのは明らかに間違い。

【引用】中距離弾道ミサイルは秒速3〜7キロで飛来する。今回は標的の速度を実際より遅く設定し、発射時刻や飛来方向も事前に決められた状況で実施した。(この部分、朝日新聞 18日付 朝刊より)

 標的とPAC3の距離が120qであったなら、弾道ミサイルが最も遅い速度の3q/Sで飛翔しても、40秒でPAC3の位置まで届くことになる。そこで標的の発射2分30秒(150秒)後にPAC3を命中させたなら、弾道ミサイルはかなりの高高度(弾道曲線)で上昇・落下したことがわかる。普通の軍事常識でいわれるように、弾道ミサイルはほぼ垂直の角度で目標に落下してくるのであれば、射程20qのPAC3が迎撃できるエリアは半径数キロの範囲(滑走路や港湾施設程度)ということがわかる。

 そのような科学的な検証はまったく行われず、首都圏に配備されたPAC3があたかも関東全エリアを防衛するような幻想が広められている。これは大本営発表並みに悪質な世論操作ではないか。

 同じように、アメリカに向かって発射された弾道ミサイル(ICBM)を、日本上空で日本のMDが迎撃することが集団的自衛権禁止でも、でできるか、できないか、その集団的自衛権解禁の議論が政治の機能不全で停止している。・・・・・という新聞記事があった。

 仮に、北朝鮮から米本土に発射されたICBMは、北海道のはるか北のロシア領の上空を飛翔することになる。(北朝鮮のICBMは最短距離の北極上空を通過するから) これでは笑い話にもならない。あえてハワイやグアムの米軍基地を例えて、ミサイルの飛翔コースを日本に引き寄せても、目標がハワイやグアムなら弾道ミサイルの飛翔高度(弾道曲線)が高すぎて、ジージス艦搭載のSM3ミサイルではまったく届かない。

 誰が集団的自衛権解禁の論議とMDを政治的に関係づけさせたのか。これはMD導入を決定した石破前防衛相にぜひ聞いてみたいところだ。

中国外務省

潜水艦問題

  日本に抗議

日中両国とも公表控える

(読売 9月17日 朝刊)

[概要]国籍不明の潜水艦による領海侵犯事件で、中国が日本政府に対し、「日本政府の対外説明が国籍不明の潜水艦を中国潜水艦と結びつけている」として抗議していたことが16日、分かった。

 今回の侵犯は中国艦によるものではないとの立場を示したものだ。ただ、日中両国とも抗議自体を公表しておらず、日本側は引き続き真相究明を急ぐ構えだ。

 関係者によると、抗議は15日、中国外務省が在北京日本大使館に伝えた。一方、防衛省・自衛隊は16日、現場周辺海域での捜索活動を打ち切った。(記事全文)

[コメント]国籍不明の潜水艦が日本の領海を侵犯したのは14日の早朝である。在北京の日本大使館に抗議したのが15日なら、中国外務省は私に対して抗議を行うべきでなかったか。私は防衛省の記者会見で国籍不明の潜水艦としたことで、メディアからの問い合わせに「中国の潜水艦」と話していた。日本とアメリカの潜水艦でないなら、中国の潜水艦しか軍事常識では考えられないからである。

 昨日、海上幕僚監部の赤星幕僚長は、記者の質問に答えて、「潜水艦の音は録音しなかった」と答えていた。そんなことを信じるような先進国の海軍関係者は世界中にいない。それどころか、中国の海南島や青島の潜水艦基地付近の海域に、海自の潜水艦が息を潜めて潜航し、日本近海から帰ってくる潜水艦を待ち受けている可能性もある。潜水艦の音を聞いて、どこの艦隊に所属するかを確認するためである。

 まあ、日本の潜水艦戦の能力を甘く見ないことをお勧めする。私は別に反中国主義ではないが、軍事常識だけははっきり申し上げることにしている。

 今回の事件は、中国海軍が中台の軍事緊張が緩和したことで、台湾海峡周辺に配備していた潜水艦(特にキロ級)を対日本向けに動かし始めた可能性が高い。これは私がいつも言うように、台湾に向けた兵力を日本に向ける(移動さす)ことは、日本との新たな軍事緊張を生む危険なことである。特に短・中距離弾道ミサイルと潜水艦である。中国軍にそのような考えがあるなら、日本と中国の関係は不幸な時代を迎えることになる。

 日本には中国の軍事力強化を警戒する考えはあるが、中国と軍事対決の関係を望んではいない。今回の領海侵犯は日本に対する悪質な挑戦である。豊後水道の入口で領海侵犯したことは、東京湾の入口で潜水艦が領海侵犯したことと同じである。

 潜水艦の訓練や偵察なら、公海上でやって頂きたい。公海上なら、別に日本がとやかく言う問題にはならなかった。むろん、海自もそれなりの訓練や偵察を行っている。それが海軍(海自)が国家から依託された任務(使命)であるからだ。互いに誇るべき任務である。

本日 新聞休刊日

更新を休止します

  (予定)

緊急ニュースが出れば別

(9月16日 火曜日)

  本日は新聞の休刊日です。テレビのニュースや電子版の重大ニュースが飛び込まない場合、本日の更新を休止します。

 ところで、ここ1〜2日でアクセス数が600万件になりそうです。最近、大きな軍事関連のニュースがなかったので、500万件から600万件まで約1年半(約18か月)かかっています。

 このままのマイペースでコツコツと更新を続けるか、それとも、新しい企画を取り入れて華々しく大展開するか。その辺りのことを真剣に考えています。

国籍不明 高知沖で発見

潜水艦が領海侵犯

ソナーで追跡

(朝日 9月15日 朝刊)

[概要]14日午前6時56分、高知県沖の領海内で、国籍不明の潜水艦が潜望鏡を出して潜航しているのを、海自のイージス護衛艦「あたご」が確認した。潜水艦はあたごが追跡開始後間もなく、領海外に出た。海自は周辺海域を捜索し、潜水艦の行方や国籍などの解明を進めている。

 防衛省によると、発見場所は高知県・沖の島の約20キロ沖合で、領海の内側約7キロの海域。あたごの乗組員が約1キロ離れた海面に潜水艦の潜望鏡らしきものを目視で発見し、ソナー(音響探知機)による追尾・捜索活動を始めたが、潜水艦は南下し、午後7時すぎ領海外に出た。

 あたごから連絡を受けた海自自衛艦隊司令部が外国の潜水艦と確認したのは8時13分。同28分に防衛相、同36分に福田首相に連絡を入れた。福田首相は「追尾、情報収集を徹底するよう」指示した。同39分にあたごが潜水艦を見失ったために、海自のP3C哨戒機やヘリが捜索している。

 潜水艦による領海侵犯は、04年11月に中国の原潜が沖縄県・先島諸島周辺を潜航した事件以来。当時の防衛庁長官は自衛隊部隊に治安維持などのための「海上警備行動」を発令したが、今回は侵犯が短時間だったことから発令されなかった。

[コメント]今回、国籍不明の潜水艦による領海侵犯事件では、防衛省から発表される情報は意図的に多くのことが隠されている。それは海自の対潜水艦戦の能力を秘匿するためである。しかし各国の潜水艦関係者であれば、常識の範囲で今回の事件の実態を知ることができる。

 まずこの潜水艦は中国海軍の潜水艦と思われる。あるメディアから北朝鮮の潜水艦の可能性はないかという質問を受けたが、「ない。北朝鮮の潜水艦は動いていない。動いていたのは特殊工作員を輸送する潜水艇である」。

 またあたごの乗組員が偶然に潜航中の潜望鏡を発見する可能性は限りなくゼロに近い。この潜水艦は九州南端から奄美、沖縄などの南西諸島の線を通過した段階で探知され、海自によって密かに追尾を受けていたと考えられる。しかし日本の領海を侵犯したことで、海上警備行動(自衛隊法第82条)の発令対象となるため、防衛相や官邸に報告された。

 読売新聞(本日付け・朝刊)によれば、あたごが使ったソナーは音源を発して位置を探知するアクティブ・ソナーだという。これは対潜水艦戦では魚雷や爆雷を発射する最終段階の探知法である。あたごから音源を発して、潜水艦から跳ね返った音で、潜水艦の正確な位置を特定するのだ。もし実際の戦闘なら、次は音響ホーミング魚雷を発射して撃沈させる。

 潜航中の潜水艦はアクティブ・ソナーの音を当てられて、震え上がったはずである。死刑台に上がり、首に縄をかけられたのと同じである。足元の床が開かなかっただけのことだ。この潜水艦の艦長も母港に帰れば厳しい処分が待っている。

 それでは、なぜ潜望鏡を上げたのか。潜水艦としては異例と思われる行動だが、つねに数キロの間隔で追尾してくる船(護衛艦)を潜望鏡で確認したのである。潜水艦が止まれば追尾の船も止まる。潜水艦がコースやスピードを変えると、追尾の船もコースやスピードを変えて追尾してくる。護衛艦は潜水艦の音だけを捉えるパッシング・ソナーで追尾していた。潜水艦はいつまでも追尾をやめないことに不安がって、追尾の船(あたご)を確認するために潜望鏡を上げるという失敗を行った。

 この記事(防衛省の発表)では、あたごが見失ったというが、アクティブ・ソナーをあてて、潜水艦を領海外に追っ払ったところで追尾をやめたのだ。しかしこの潜水艦がどこの港に帰港するか、海自のP3Cや対潜ヘリが今も追尾している可能性は高い。

 ・・・・これは、海自の秘密情報というわけではなく、現代の潜水艦戦を知っているなら、だれもが考える軍事常識なのである。この潜水艦の音紋は採取され、すでに照合されたはずだ。そして潜水艦の目的は、呉(広島県)の海自基地から出港してくる海自・艦船を、豊後水道の出口で待ち伏せる潜水艦作戦の偵察・訓練活動と思われる。

※この事件に関する質問が、「メールにお返事」に届いています。興味のある方は、そちらもご覧ください。

中国筋 明かす

金総書記

 党務困難に

4月から「時々意識失った」

(毎日 9月14日 朝刊)

[概要]北朝鮮の内部事情に詳しい、信頼できる中国側関係者の話しでは、北朝鮮の金総書記(66)は今年4月ごろから、執務中に時折、意識を失うなど深刻な状態になり、決裁事項に対して十分な指示が出せなくなっていたと、13日に明かした。5,6月は持病が相当悪化し、夜は動けなくなり、判断力も低下した。北朝鮮が核問題をめぐる対応で、柔軟性がなくなっているが、これは金総書記の病状も関係しているとされる。

 関係者によると、金総書記の症状は昨年夏ごろから腎臓や心臓など複数の臓器の不調を訴え、病状は徐々に深刻になった。今年4月、金総書記は中国で序列6位の習近平国家副主席の北朝鮮訪問(6月17日〜19日)を控えていた頃も、執務室で意識を失うことが何度も目撃された。習近平氏は中国の次世代最高指導者の有力候補で、平壌訪問が外交デビューするという位置づけだった。金総書記にとってもなんとか会談を成功させる必要があった。

 金総書記は約2ヶ月間に執務を縮小し、治療と休養に重点を置き、習近平氏の会談にこぎつけた。一方、中国は習副主席訪朝の随行員から報告を受け、指導部は7月の段階で「金総書記の症状はかなり深刻」との判断をしていた。この頃から中国が議長国を務める6カ国協議や、中朝2国間関係の対応を本格的に検討を始めた模様だ。

[コメント]この記事によれば、金総書記は8月中旬に急に倒れ、脳卒中などの症状で体調が急激に悪化したのではなく、昨年5月に受けた心臓バイパス手術(心筋梗塞)から体調不良が続いていたことになる。中国は金正日の体調がかなり深刻なことを6,7月頃には把握していたという。

 ということは韓国政府が盛んに流している「快方に向かっている」「車いすで移動」「話せる状態」という情報は情報操作なのか。北朝鮮国内で広がる動揺を防ぐために、「金正日の病気は軽度」という楽観論を振りまこうとしている。

 いよいよ北朝鮮は最終幕を迎えたようだ。今になって盛んに論じられる後継者問題は体制崩壊を早めるだけである。また北朝鮮の特殊な独裁体制を考えれば、金正日に代わり軍指導者部の集団指導体制は不可能である。軍を統帥できる統制力はない。

 今となっては、北朝鮮で金正日体制を静かに終わらせるしか方法はない。北朝鮮ではこれから未曾有の飢餓地獄が襲う。すでに金正日は国際援助に関して、決済や指示ができない状態に陥っているからだ。

総書記 健康悪化説

「北有事」備える

 米韓両軍

作戦計画具体的へ

特殊部隊派遣 制圧も

(読売 9月13日 朝刊)

[概要]韓国政府は、北朝鮮の体制崩壊など急変事態に備えた米軍と韓国軍の軍事対応策「概念計画5029」について、本格的な「作戦計画」への格上げを推進して方針を固めた。健康悪化が伝えられる金正日総書記の病変に備えた措置だ。韓国は、総書記の病状に急変があり得るとして、計画策定を急ピッチで進める可能性が高い。

 概念計画5029は金大中政権下の1999年に策定された。その後、米側がより具体的な作戦計画に格上げするように求め、韓国側と協議したが、反米傾向が強かった盧武鉉政権当時の05年、韓国の国家安全保障会議(NSC)が「米軍の行動で韓国の主権が侵害される可能性」を主張、策定作業を中断した経緯がある。この時、米側は強く反発したといわれる。

 韓国メディアによれば、5029計画が想定するのは、北朝鮮における、@クーデター、住民暴動、金総書記死去などで内戦が発生 A反乱軍が核、化学兵器など大量破壊兵器を奪取 B住民の大量脱出 C韓国人人質事件の発生 D大規模な自然災害の発生 の5つの事態。特に、大量破壊兵器が奪取される状況に、米韓の特殊部隊が派遣されて制圧する内容が含まれる。そのため、作戦計画では具体的な兵力や配備・運用まで含んで定めるほか、脱北者対策なども盛り込む方針という。

 韓国が作戦計画への格上げに積極的に取り組む姿勢に転換したのは、保守の李明博政権の登場と、金総書記が脳卒中で倒れ、北朝鮮体制に異変が起きる可能性が現実味を増していることが大きく影響した。

[コメント]懐かしい「作戦計画5029」という言葉を久しぶりに聞いた。確か、今までこのHPでも書いたことがあると思ってサイト内検索をしたら4件がヒットした。だから再度、詳しい作戦の説明を省くが、Dの自然災害というのは、大水害や大地震という意味より、伝染病の大発生という意味が強い。国民の栄養状態が悪く、衛生、医療体制が貧弱な北朝鮮では、感染力の高い伝染病が大発生する可能性が極めて高い。そのような感染症難民が発生したときに対処するというものだ。

 また、Cは、武装難民が国外(中国、韓国、日本、ロシアなど)流出し、そこで人質をとって立てこもるものである。日本の場合、北朝鮮から漁船や貨物船で逃げ出した保衛部(国内治安・思想取り締まり)者が、船の機関の故障で日本に漂着する例が考えられる。北朝鮮に留まっていれば、住民の反乱で殺される可能性が高い者たちである。

 また5029が概念段階で問題になったのは、非武装地帯に沿って地下に作られた北朝鮮軍の地下陣地の存在である。この地下は迷路のように張り巡らされ、各所に地対地ロケット、短距離弾道ミサイル・スカッドB・C、長距離砲などが配備されている。その弾頭には生物・化学兵器が装着され、それがトンネル内を移動し、常時、発射可能な状態になっている。もし一斉に発射されると、ソウルの街や在韓米軍(司令部や駐屯地)の頭上に降り注ぐ。そうした臨戦体制で北朝鮮は米韓軍の北進を抑止しているのである。

 そのため5029では奇襲した短時間に、特殊部隊が地下陣地を急襲する他、上空から空軍機による精密誘導馬爆撃や巡航ミサイルで地下陣地の破壊を検討した。しかしこれがなかなか潰せないのである。地下陣地が迷路で堅牢で、あまりに多くの攻撃ポイントがあり、短時間の奇襲・破壊は不可能とわかった。ブッシュ政権の初期に公表した小型核爆弾の開発と、バンカーバスター(地下深深度貫通爆弾)の組み合わせは、この北朝鮮軍の地下トンネルをを破壊することを第一に想定していた。特殊部隊やハイテク兵器を駆使しても、大規模な地下陣地の破壊はそれほど難しい。

 それでも今になって韓国政府が5029の作戦計画を急ぐ理由は、地下陣地の兵士が平壌の混乱にパニックになって、南北開戦と誤解して生物・化学弾頭の発射ボタンを押すことである。これが現実化する可能性はきわめて高い。それでも被害を最小限に抑えるためには、緊急・外科手術による5029の効率を上げるしか方法がないのである。政治の失敗を軍事が補うことには限界がある。

「9/11」7年 アフガンの今

誤爆難民 食料なく

政府も米国も何もしてくれない

不満 タリバンが吸収

(毎日 9月11日 朝刊)

[概要]約3000人の犠牲者を出した01年9月11日の米多発テロから、今日で7年になる。米国が国際テロ組織「アルカイダ」の撃退を目指して始めた対テロ戦争は、行き詰まり気味だ。アフガンではタリバンが勢いを盛り返して治安が悪化。米国は再び、アフガンを対テロ戦争の「主戦場」に位置づけざるを得ない事態になった。

 アフガンでは米軍などの空爆に巻き込まれる「誤爆難民」が急増し、都市部に流れ込んでいる。爆撃で負傷し、家を失い、仕事を失った人は国際社会の支援を求めてカブールを目指す。その数は、家族を含めて数千人とも数万とも言われる。しかし誤爆難民を救済の対象とした支援機関はなく、障害者が働ける雇用先は皆無に近い。さらに都市の高いインフレが都市難民を苦しめる。

 7月に東部ナンガルハル州で、米軍機の爆撃で死亡した48人の遺族4家族の男たち約20人が、タリバンに参加したという一報が報道機関に伝わった。アフガン政府は「犠牲者は結婚式に向かう途中の女性や子供ら」と発表したが、米軍側は「死んだのは武装勢力」と突っぱねる。「タリバンに参加した遺族は十中八九、自爆を志願する。タリバンは今、自爆要員を募集する必要もない」。地元記者の一人はそう断言する。ナンガルハル州は8月にペシャワールの会の伊藤さんが殺害された州である。

 カルザイ政権や外国軍に守られているはずのカブールは、タリバンの勢力拡大に怯えている。外国人が多く利用するホテル、政府関連施設や国連機関の多くが、壁を高くし、敷地に二重三重の防護壁を設けて、自爆テロや迫撃砲の攻撃から防ごうとしている。

 地元記者が言う。「公務員の汚職や情実人事がまかり通り、物価高も放置されたまま。カルザイ政権への市民の反発は日に日に高まっている。政権は今、発足以来最大の危機にひんしている」。米軍の戦死者数が過去最高になっても、その何倍の無関係の市民が戦闘の犠牲となっている。

[コメント]最近は、同居の義母に寝室を譲り、私は自分の書斎の隅で寝ている。昨夜の夜中に目が覚めると、本棚にある写真集に目が止まった。3年前に行ったニューヨークで、街の書店で買ったLIFE社刊の写真集「ONE NATION」である。アメリカの同時多発テロが起きた当時の報道写真から、世界貿易センタービルの崩壊現場で、遺体の捜索やガレキ撤去にあたる人々を撮している。ビル崩壊現場に簡易スタジオを作り、泥や煤(スス)に汚れたままの人々を撮影した有名な写真集である。もし、当時の記憶が薄れてきた方や、当時のことをよく理解できなかった若い人は、この写真集を見つけて欲しい。そして、あの同時多発テロに世界中の人がどれほど驚愕(きょうがく)したかを知って欲しい。米同時テロで始まった21世紀が、どのような時代になるか考えて欲しい。

 アメリカの同時多発テロの犯人はすぐに判明した。主犯格の男が空港の駐車場に停めたレンタカーの中から、ジャンボ旅客機の操縦マニュアルとコーランが見つかった。そのレンタカーは実名で借りられており、その借り主の名前から携帯電話の番号がわかり、エシュロン(米NSA)が記録した通話内容で、他のテロ機の仲間の名前が判明した。そして背後で操っていたのが、ビンラディンが率いるアルカイダと割り出した。

 直ちにアメリカはアフガンを支配していたタリバンの指導者オマル師に、ビンラディンなどアルカイダの幹部を差し出すように要求した。しかしオマル師はビンラディンの説得と大金を渡されてアメリカの要求を拒否したという。これがアメリカが対テロ戦争としたアフガン戦争の始まりである。

 アメリカはパキスタンを味方に引き入れ、タリバンと対立する北部同盟などを支援し、首都カブール奪還を目指す作戦を行った。アメリカ軍はアフガンに空爆の目標を指示する特殊部隊を投入し、北部同盟がカブールに向けて進撃する際、抵抗を試みるタリバンの頭上に、空母艦載機や空軍機から精密誘導爆弾の投下や、B−52大型爆撃機の絨毯爆撃を行った。

 最後はタリバンの拠点であるカンダハル近郊に空挺部隊を降下させ、飛行場(空港)を占領して軍事拠点を作ってアフガン南部を制圧した。まさにアメリカ軍にとって犠牲者は少なく、最新の精密誘導兵器が最大の威力を発揮した戦争だった。この時にアメリカに油断が生まれた。今のアメリカ軍が陥っている泥沼は、このアフガン戦争の快勝がもたらした傲慢(ごうまん)が原因である。まさに、”敗北は前の大勝した時に原因が生まれている”という軍事上のことわざ通りである。

 再びアフガンはアメリカの主戦場になろうとしている。以前、タリバンが潜んだ廃屋には、パキスタンやイランから帰郷したアフガン難民が住んでいる。アメリカ軍の誤爆は強い憎しみを増幅させている。またアメリカはベトナム戦争で行った同じ失敗を繰り返すのか。

北朝鮮・建国60周年

金総書記 重病か

閲兵式 姿を見せず

(産経 9月10日 朝刊)

[概要]AP通信などは9日、米情報当局者の話として、北朝鮮の金正日総書記(66)が脳卒中を起こし、重病となっている可能性があると相次いで報じた。

 アメリカのFOXテレビによると、ヒル国務次官補が5日に北京を訪れた真の目的は、寧辺にある核施設の無能力化の問題よりも、金総書記が病に倒れた後の北朝鮮の内情について、中国側と話し合うためだったという。

 北朝鮮では9日、建国60周年を迎え、平壌で民兵による閲兵式と市民パレードが行われた。閲兵式には砲兵部隊が動員されたが、正規軍や本格的武器(神浦・・・ミサイルのことか)は登場せず、健康悪化説が流れる金総書記も姿を見せなかった。

 今回、大規模な軍事パレードが準備されているとの情報もあったが、実際は正規軍のいない民兵だけの軍事パレードだった。その理由は明らかにされていないが、金総書記の不参加と何かの関係があるとの見方がある。

 10年前の建国50周年の直前に、弾道ミサイル「テポドン1号」が発射され、祝賀ムードを盛り上げた。金総書記は50周年(1998)、55周年(2003)という節目の年の閲兵式に出席していた。

[コメント]中国人医師5人が10日ほど前に訪朝して、まだ帰国していないが、その内の2〜3人が中国で著名な脳卒中の専門医だったという。昨夜、世界中で報じられた”脳卒中で重体”説は、韓国の聯合通信(ニュース)が米情報筋の話しとして中国人医師の専門(脳卒中)を報じたからである。

 また”60周年祝賀式典で大規模な軍事パレードを準備”という情報は、偵察衛星の画像分析から、平壌市周辺に大規模な部隊が集結していることから報じられた。しかしこの部隊は軍事パレードのためではなく、金総書記の重体によって平壌の治安を維持するために市周辺に集結したものだったようだ。暴動や騒乱鎮圧にはミサイルは必要ない。

 今後、アメリカなどの偵察衛星の情報で、平壌周辺に集結した部隊が祝賀式典終了後もそのまま留まるかに注目が集まっている。私の予測では、大部分の部隊がそのまま留まると思う。万一の時に備え、平壌に高い警戒体制を維持するためである。その万一の中には、飢えた地方の住民が、金正日の死亡(重体)報道で異常な興奮状態となり、追悼(治癒祈願)を理由に、平壌市内に押し寄せてくる可能性がある。そのような地方からの飢えた群衆を、平壌に入れないための部隊配備である。

 ところで私事で恐縮だが、昨日は北朝鮮の史上最大規模の軍事パレード情報(予測)で大変だった。午前中は新聞各紙を読み、ホームページのWhat New (下段)を更新し、月刊Jウィング誌の連載記事を書いて編集部に送った。まだ昼食まで時間があったので、カミさんから頼まれていた夕食のチキンカレーを作った。これが嵐の前の静けさだった。

 しかし午後からは、メディア各社から北朝鮮の軍事パレードに関する電話が殺到した。その最大の関心事は、@金正日が登場するか。登場してもにせ物の可能性と見破る方法は。A新型の兵器がパレードに登場する可能性。考えられる改造バージョン。・・・・の2点である。

 2時頃になると、あるテレビ局の報道部から、自宅待機を依頼された。もし軍事パレードの映像が入れば、すぐに連絡するから、テレビ局に駆けつけて欲しいという依頼である。タクシーや地下鉄では時間がかかるので、背広を着てバイクでテレビ局に行く準備をした。とりあえずシャワーを浴びて、ヒゲを剃り、髪を整えて、背広に着替えた。それからも北朝鮮の兵器に関する本や資料を眺め、ネットで北朝鮮軍の関連情報を読みまくった。

 結局、自宅待機が解除され、メディアからの電話が途絶えたのは夕方5時を過ぎた頃である。やっと緊張感から解放され、背広から短パンの普段着に着替え、近所の居酒屋に向かった。居酒屋のテレビで夕方6時台のニュースを見ながら、生ビールとサンマの塩焼きで一息ついた。やれやれである。

 夕食のチキンカレーは自宅で7時のNHKニュースが終わって食べた。そうそう7時すぎに週刊誌の編集部(記者)から、金正日の重病説についての電話取材(20分間)を受けた。結局、夜7時のNHKニュースで北朝鮮関連のニュースは見られなかった。軍事パレード(閲兵式)は労農赤衛隊(民兵)だけで、ミサイルも登場しなかったと知ったのは今朝の朝刊である。

ウッドワード氏暴露本

ブッシュ政権

  盗聴大作戦

親米マリキ首相ら対象

(朝日 9月9日 朝刊)

[概要]権力の内幕をえぐる報道で知られるワシントン・ポストの編集局次長、ボブ・ウッドワード氏が、8日発売の最新の著書で、ブッシュ政権がイラクのマリキ首相やその側近ら同政権高官を対象に、大規模な盗聴作戦を実施していることを暴露した。

 ポスト紙が報じたところによると、米政権の高官の1人は「彼(マリキ首相)が話す言葉は全部把握している」とまで語った。一方、盗聴はリスクが高すぎると懸念を抱いている米高官もいるという。

 まだ同著では、泥沼に陥ったイラクの治安が07年から劇的に改善したのは、ブッシュ大統領が同年1月に反対を押し切って増派に踏み切ったためではなく、イラク・アルカイダ機構など反米テロ勢力幹部の所在を探知し、殺害する情報入手の技術に「ある重大な革新」があったのが主要因だった、とした。しかし具体的な技術については触れていない。

 ブッシュ大統領の増派作戦の成功は、米大統領選でも共和党のマケイン候補が、増派を支持した自らの判断の正しさを訴える材料として使っていた。ウッドワード氏の報道は単なる過去の経緯に留まらない議論を呼びそうだ。

[コメント]この記事で注目したのは、イラクで泥沼に陥っていた治安が劇的に改善したのは、米兵の増派ではなく、イラク・アルカイダなど反米武装勢力の幹部の所在を探知し、殺害する「重大な革新」があったことが主要因と書かれた部分である。その革新技術とは何か。

 その前に、マリキ首相や政権の側近に、アメリカが大規模な盗聴を行っているのは常識である。盗聴は電話だけではない。マリキ首相の執務室や会議室、食堂、専用車の中や寝室にも盗聴器が仕掛けられる。さらに盗聴対象者も側近以外に、マリキ首相と話す機会がある者にも広がる。側近や高官以外に、家族、運転手、親しい友人、たびたび会う部外者(外国人など)や記者などが対象だ。そのような周囲の者の会話を総合的に収集して、会話のウソや誇張を取り除く検証作業が行われる。そのようにして盗聴記録簿が情報分析者に届けられる。さらに情報分析者が他の情報と比較して総合的な情報分析を行い、その中で重要なものが政治家や官僚に盗聴情報として届けられるのである。(重要であっても、信頼性が不確かなものは、報告書から省かれるか、未検証(未確認)情報として扱われる)

 さて、この本に書かれた「重大な革新」技術であるが、私は携帯電話で特定した電話の盗聴と位置測定ではないかと推測する。おそらくイラクでは携帯電話の盗聴は不可能で、発信位置を特定することは難しいという常識が広まっていたのではないか。携帯電話の通信無線は通話ごとや場所ごとに周波数が変わり、特定の携帯電話を常時盗聴するのは難しいという常識がある。しかしアメリカはその盗聴技術を開発していて、それをイラクに持ち込んだのではないか。

 イラク・アルカイダのような反米武装勢力であっても、常に独自の通信方法を確保し、情報や指揮のための通信手段は欠かせない。そこでアメリカ軍はイラクのいたることろに、密かに携帯電話の受信アンテナを設置し、特定した電話の追跡と盗聴を行って情報・指揮パターンを分析し、通話位置を測定して行動パターンを掴んだのではないか。そしてアメリカ軍の奇襲攻撃(殺害)である。

 そのことにイラクの反米武装組織が気がつき、互いの連絡・通信に携帯電話を使用できなくなり、攻撃頻度が極端に低下したために、イラクの治安が劇的に回復したのではないだろうか。(仕掛爆弾(IED)の起爆装置に携帯電話を使ったものは探知可能)。

 そもそも私は、イラクの米軍を増派したら治安が劇的に回復したという説明に違和感を持っていた。イラク駐留米兵を12万人から16万人に増やしたところで、治安が劇的に回復するなどという定義は非正規戦の軍事常識にはない。むしろ非正規戦なら米兵の増派は犠牲者数を増やすだけである。

 私はイラクの治安が回復した理由は、マリキ首相とイランの中枢部が密談し、イラン革命防衛隊のイラク内活動を抑制させたからと思っていた。しかしイラク国内には、イラン革命防衛隊と距離を置くアルカイダのような反米勢力もいる。それらの反米行動(自爆攻撃など)も抑制させたのは不思議なことであった。私が推測したほどマリキ首相とイランの融合は進んでいないようだ。

 しかし、もしこの本に書かれている「重大な革新」が、携帯電話の常時盗聴が可能になり、瞬時に通話位置が探知できれば、イラクですべての反米武装勢力の動きを止めることが可能になる。やはりアメリカは世界で抜き出た最高水準の盗聴国家であった。

※携帯電話の盗聴システムは、オーストラリアの「エシュロン」(NSA)の元技術者が、そのためのアンテナを東京の大使館屋上に設置したという証言をしている。

韓国紙が報道

金総書記に

 健康悪化説

中国人医師5人が訪朝

(読売 9月7日 朝刊)

[概要]6日付の韓国紙・朝鮮日報は、3週間以上動静が途絶えている北朝鮮の金正日総書記の健康悪化説が再び浮上していると報じた。

 同紙によると、韓国政府筋は5日、中国の医師5人が1週間ほど前に訪朝し、まだ帰国していないと明らかにした。

 金総書記は8月14日に軍部隊の視察が報じられて以降、公式活動が確認されていない。

                                                以上、読売新聞より

> 金総書記は先月14日、朝鮮人民軍第1319部隊を視察したと朝鮮中央通信が報じて以降、公式の>行動は確認されていない。金総書記はこれまで6月に11回、7月に16回、8月に13回の公式動静が伝>えられていた。   (この部分、朝鮮日報 電子・日本版より)    

 

[コメント]昨年、4月の下旬に金総書記の動静が途絶え、7月に中国の外務次官が訪朝して再び姿を現したことを思いだす。7月に中国の外務次官と会った写真では、金正日はゲッソリと痩せ、頭髪が抜けて少なく、明らかにやつれた表情だった。7月中旬には、金正日の後を椅子をかかえた者が付き添い、金正日は椅子に座って休みながら歩く姿を報じられている。

 これはドイツ人医師団から心臓のバイパス手術を受けたためと韓国の情報当局が分析した。その後、韓国政府(盧武鉉政権時)から補助金(約900万円程度)を得て、北朝鮮の医療チームがドイツの病院での研修に向かっている。現在の医学水準では、心臓バイパス手術は難しいものではなく、手術で失われた体力は数ヶ月で回復するそうである。

 もともと金正日は糖尿病の持病があると言われ、今年、66歳(※)になっていろいろな合併症が出てきた可能性がある。すでに韓国の情報機関は、訪朝した5人の中国人医師がどの分野の専門家か特定をしたはずである。もし眼科であれば失明、循環器系であれば歩行困難などの可能性がある。

 今月の”所長、ご挨拶”に書いたが、来年の2009年という年が、中国騒動の年となって、北朝鮮がいよいよ崩壊するのだろうか。とにかく今は、中国人医師5人の専門分野だけでも知りたい。

※金総書記の年齢を67歳としていましたが、66歳と判明しましたので訂正しました。(9月10日)

米軍地上部隊

パキスタン領初侵入

部族地域掃討

 反発拡大は必至

(毎日 9月6日 朝刊)

[概要]現地からの報道によると、米軍は3日未明、武装ヘリ4機に特殊部隊員を乗せてアフガンからパキスタン側に越境。部族地域南ワジリスタン管区内でミサイルを発射し、民家約15棟を破壊し、約20人を殺害した。その際、特殊部隊員が地上に降りたという。4、5日にもアフガンから飛来したミサイルが着弾。パキスタン政府によると計15人の死亡が確認された。

 これまで米軍の越境空爆はあったが、地上部隊の戦闘は初めてとみられる。パキスタン政府は「犠牲者は女性や子供らですべて民間人」と発表。パキスタン国内で反米世論が高まるのは必至。

 6日の大統領選で当選が確実視されているザルダリ人民党共同総裁は、「他国軍の越境は断じて認められない」と声明を出したが、いきなり厳しい局面に立たされた。

 米軍は越境作戦に抵抗したムシャラフ前大統領が辞任して、ザルダル氏に圧力をかけるために地上部隊を越境させた可能性がある。4日付のニューヨーク・タイムス紙は米高官がこれからも地上部隊の越境作戦を続けることを示唆したと伝えた。

[コメント]アメリカが対テロ戦争を終わらせるには、アルカイダの拠点を潰し、指導者のビンラディンや、NO2のザワヒリ師を殺すことである。タリバンを完全に駆逐するとか、イラクで反米武装勢力を殲滅させることではない。それはブッシュ政権の戦争であって、次期大統領を争うオバマ候補やマケイン候補の戦争政策ではない。アメリカの対テロ戦争の原点はアルカイダの完全殲滅である。

 任期が残りわずかに迫ったブッシュ政権にとって、最後にして最大の成果を獲得するのは、ビンラディンを捜しだして殺すか、捉えることである。まさに”終わりよければ全て良し”になる。今になってザルダル氏に圧力をかける必要などない。オバマ候補は米大統領になれば、パキスタン政府の了解なしに越境攻撃すると公言しているほどだ。

 とにかくブッシュ政権はビンラディンの首が欲しいのである。これからパキスタン領内でビンラディンが潜伏していそうな場所を、特殊部隊が徹底的に捜索(攻撃)を続行する。すでにアメリカの情報機関はサウジのビンラディンの親族からDNAの提供を受け、爆発(攻撃)で小さな肉片であってもビンラディンを特定できるという。

 そこで気になるのは、もしアメリカがビンラディンを殺し、9・11の同時多発テロで始まった対テロ戦争を終焉させれば、それでもアメリカはアフガンのカルザイ大統領を支え続けるだろうか。またNATO軍のISAFがアフガンに留まり続けるだろうか。・・・・・・・結局、アフガン戦争は何だったのか。アメリカ人やイギリス人だけでなく、我々日本人も考えるべきことだと思う。

グルジア援助

ロシア軍駐留の

 ポチ港に米旗艦

(朝日 9月6日 朝刊)

[概要]グルジアへの人道援助物資を積んだ米艦船が5日、黒海沿岸のポチ港に入港した。米艦のグルジア寄港は3隻目だが、ポチ港に入港するのは初めて。ポチ港付近にはロシア軍が居座り続けている。

※この新聞の見出しでは「米艦船」という言葉が使われていましたが、私の勝手な判断で「米旗艦」として見出しを書きました。

[コメント]この米艦は米海軍第6艦隊の旗艦「マウント・ホイットニー」である。報道によれば、ポチ港に接岸せず沖合に停泊し、援助物資は小型船で積み替えて港に運んでいるという。

 米海軍としては、援助物資を小型船に積み替えることで、武器などの軍事支援とは無縁を証明している。また、護衛のイージス艦がポチ港に入港していないことから、あくまでロシアと軍事的な対立を高めないことに配慮している。マウント・ホイットニーは指揮・通信システムは強力だが、武装はほとんどしていない。あくまで揚陸指揮艦なのである。

 米欧、ロシアともにグルジアで、これ以上の軍事的緊張を高めることはない。そのことを表明するためにポチ入港をしたのかと勘ぐった。

基礎からわかるアフガン情勢

アヘンの原料ケシ

 世界の9割を生産

タリバンの資金源に

(読売 9月5日 朝刊)

[概要]アフガンは、アヘンやヘロインの原料になるケシの栽培が世界一で、世界中に出回るアヘンの90パーセントはアフガン産とされる。国連薬物犯罪事務所(UNODC)によると、今年は約15万7000ヘクタールでケシが栽培され、約7700トンのアヘンが生産された。

 ケシは干ばつに比較的強く、アヘンには同量の小麦の約40倍の値段で取り引きされ、農民には魅力的な収入源。内戦時代には各軍閥がこぞって農民に栽培を奨励、「税金」として徴集し武器などの調達資金とした。

 タリバンは当初、ケシの栽培を禁じたが、1995年から資金源としている。アヘン生産の98パーセントはタリバンの活動が活発な南部7州に集中する。国連などは、代替作物を奨励しているが、単価や市場確保の問題などから順調には進んでいない。また、麻薬密売組織と関係する政府や元軍閥の有力者もおり、解決を一層困難にしている。

※この記事は現在のアフガン情勢を多角的に特集しています。ここに引用したのは麻薬関連の一部の記事だけです。

[コメント]前々から、アフガンのケシ栽培を詳しく知りたいと思っていた。無論、タリバンの資金源がどの程度か知るためである。この記事で、世界で出回っているアヘン原料のケシが、90パーセントもアフガン産と知って驚いた。それほどアフガン産が多く流通しているとは思っていなかった。それもタリバンの勢力圏内のアフガン南部であった。アフガン産アヘンは主に陸路でイランに運ばれ、イランから欧米など世界の闇市場に流れていると聞いた。

 アメリカなどの情報機関や麻薬取り締まり組織は、そのアフガン産アヘンの流通ルートの詳細な地図を作成中と思う。昔、”黄金のトライアングル”と呼ばれ、タイ北部のケシやアヘンの大生産地で、いろいろな政治工作が行われた時、アメリカの情報機関が作成したアヘンの流通ルートの地図を見たことがある。馬や人間が担いで運ぶジャングルの複雑な秘密通路であった。それから20年以上が経過したが、黄金のトライアングルで生産されるアヘンは激減した。あの地図に描かれた流通ルートを潰せば、アヘンの生産をストップできたからである。

 アフガンでは内戦で灌漑施設が破壊され、農業用水が十分に確保できない荒れ地だという。農業用水と飲料水さえ確保できれば、荒れた農村に緑の農園が生き返り、食糧確保の見通しがつくと中村哲さん(ペシャワール会現地代表)から聞いた。その生き返った農園でサツマイモなどの栽培を指導していた伊藤和也さんが殺された。

 今、アフガン産のアヘンの流通ルートの地図を持っているのは、イランの革命防衛隊である。ケシとアヘンで結びついたタリバンとイラン革命防衛隊を切り離すしか、アフガンのケシ栽培を断つことはできないと思う。もしその時が来たら、日本はケシの代替作物への転換をできるだけ助ける必要がある。タリバンをいくら砲火で攻撃しても、農民の生存(生活)を助けることにならない。 

馬英九・台湾総統

対中「国と国」否定

独立志向改め

 対中融和路線の新定義

(毎日 9月4日 朝刊)

[概要]台湾の馬英九総統は3日、メキシコのメディアとの会見で「基本的に双方の関係は『二つの中国』ではない」との考えを示し、「一つの中国」を強調した。これは李登輝元総統と陳水篇前総統が示した独立志向を否定し、自らの中台融和路線を強く意識する見解を示したことになる。

 馬総統は見解の根拠として、台湾の現憲法の規定は中国領土を含んでいると指摘し、中国の憲法も台湾を領土にしていると挙げた。中国側もこの主張を歓迎するとみられる。

[コメント]世界が中国の五輪聖火問題や北京オリンピック、それに伴うチベットや新疆ウイグル自治州の暴動やテロに目が奪われている時、中台関係は劇的に変化を成し遂げていた。これはその総仕上げの言葉である。馬英九総統が中国と台湾は一つの国だと明言した。これはもう後戻りできない台湾の基本政策の転換だと思う。

 李登輝元総統は99年7月に、ドイツの放送局の会見で、台湾と中国との関係を「国家と国家」と述べ台湾の独立性を強調した。陳水篇前総統は02年8月、世界台湾同郷連合会で、「台湾は一つの主権国家だ。台湾と中国は『一辺一国(それぞれ別な国)』だ。明確に分ける必要がある」とスピーチしている。(同記事より)

 そのような台湾の独立志向に対して、中国は強い反発を隠すことはなかった。中台関係はいつまでも対立が続く緊張関係と思われていた。

 しかし馬英九総統が登場すると、週末には中台直行便が飛び始め、中国では台湾への観光が解禁され、台湾の市中銀行では中国円(人民元)を両替することも始まった。台湾の勝景地では中国本土からの観光客のために、看板やメニューなどの漢字を北京表記に付け加えているという。このように台湾での経済効果は莫大で、台湾開放(中国向け)は後戻りできない根本的な政策変更なのである。

 今までの中台の軍事対立で、日本の南西諸島が軍事的な脅威を受けるという推測は成立しなくなった。また、それに巻き込まれないために、沖縄の空自にF−15戦闘機ではなく、F−4戦闘機を配備する配慮も必要性が低下した。沖縄や南西諸島の陸自部隊の配備、海自の艦船の演習も同じ。

 しかし中台対立脅威論に代わって登場したのが、中国が台湾と一体化したことで、日本にとって台湾という緩衝地帯が消滅し、日中が直接軍事対立する最前線になったという見解である。いうまでもなく、この様な主張は、意図的に人々を怖がらせ、危機を煽ることによって、世論を都合よく誘導する「霊感商法」みたいなものだ。かつてロシア軍の陸軍4個師団が北海道に攻めてくるとか、北朝鮮がノドンやテポドンを発射し日本の都市を攻撃してくるという同じ論理の「霊感商法」である。

 これからどのような人が、どのような論理で、どのメディアを使って、日中軍事対立の「霊感商法」を始めるか。皆さんには、日本の現状をよく見極めて頂きたい。

インド洋給油継続

政策課題

 めど立たず

林防衛相 訪米取りやめ

(読売 9月3日 朝刊)

[概要]インド洋で海自が行っている給油活動を、来年1月の期限を延長する新テロ特措法改正案について、民主党が反対の姿勢を崩していない。切り札になる衆院での再可決には公明党が慎重な姿勢のままだ。林防衛相は2日の記者会見で、給油継続に野党や国民の理解を得る姿勢を強調した。

 しかし、林防衛相は9月初旬に訪米して、ゲーツ国防長官との会談する予定をキャンセルした。ゲーツ国防長官との会談では、給油活動を通じて「テロとの戦い」に貢献する考えを伝えるはずだった。

 自民、公明両党は、3日に開催予定のプロジェクト・チーム(PT)の会合で、改正案の調整を始めるが、双方の思惑のズレを埋めるのは容易でない。

[コメント]安倍前首相、福田首相と、インド洋で給油継続の見通しが立たなかったことで、2人の首相がともに政権を投げ出した。今秋の臨時国会では、自民党と公明党との調整(PT)で、給油延長法案が国会の俎上にのらない可能性すら出てきた。(延長法案の国会未提出)

 相次いで日米の大物政治家や政治・外交研究者が、インド洋での海自の給油は日本の重要な国際貢献で、もし中止すれば日米関係に大きな傷が付くと警告する。しかし公明党の対応で自民党(首相)は窮地に追いこまれ、2人の首相の”腹切り”で責任をのらりくらりと先送りするしかない。

 これでは、もはや自民と公明の連立与党は機能していないどころか、日本の政治活動をマヒさせるほど阻害しているのではないか。

 仮に次の選挙管理内閣で麻生氏が首相になっても、海自の給油継続を自民党の公約から外すことができるだろうか。しかし自民党が強引に公約を掲げれば、福田首相を退陣させた重要事項の旗を公明党が降ろすだろうか。

 もうこれ以上、日本の政治が混乱することは避けなければならない。日米関係がしばらくはガタガタしても、インド洋での海自の給油活動は一旦白紙にして、新たな日本の「対テロ戦争」の貢献策を考えるべきである。

 もしアメリカにイラク戦争に反対したオバマ新大統領が誕生すれば、日米の保守的な政治関係者が考えるほど「傷」は深くならないと思う。また、海自がインド洋から撤退すれば、即、インド洋での多国籍軍のテロ掃討作戦がマヒすることはない。米海軍には十分な補給艦(洋上給油可能)がある。

 日本で自衛隊の国際貢献を根本から”問い直す”いい機会になる。小泉元首相が強引に行ったインド洋とイラクへの自衛隊派遣は問題だらけの安全保障政策だった。日本ではこれらを前例にすることは出来ないのだ。これを前例にすれば、これから何人も首相が腹を切ることになる。

EU緊急首脳会議

対露制裁見送り

「逆制裁」恐れる

(産経 9月2日 朝刊)

[概要]EUはグルジア紛争を受け、1日、緊急首脳会議をブリュッセルの本部で開催した。ロシアに対して「将来の決定で、警戒を怠らない」という強硬な対応を示す最終宣言を採択する。しかし具体的な対ロシア策はとれず、EUの限界を露呈する結果となった。

 欧州は議長国のフランスとドイツなどが、ロシアとの「対話の糸を切らない」(メルケル独首相)など慎重な姿勢を崩していない。これに対して、ポーランドやチェコ、バルト3国はロシアへの強硬路線を主張して分裂状態だ。

 EUとロシアは「新たなパートナーシップや協力関係」に関する交渉を7月に開始し、9月中旬に2回目の協議が行われる予定。交渉内容は査証(ビザ)の免除などが含まれ、孤立気味のロシアが大いに期待しているものである。しかし英首相府の報道官はこの交渉を「中断すべき」と警告した。

 しかし英国を含めてEUは、ロシアにエネルギー源を依存しているため、ロシアからの「逆制裁」を恐れて経済制裁には踏み切れないないでいる。

 仏外交筋によるとロシア軍はグルジア西部の港湾都市ポチなど4カ所に駐留したままだ。EU首脳会議では、和平原則の合意事項である「ロシア軍の戦闘開始以前ラインまで撤退」を監視するため、欧州安保協力機構(OSCE)の枠組みの中で、9月中旬に民間人の監視グループを現地入りさせる。

[コメント]ここまではロシア政府が想定した通りに事態が動いていると思う。EUはグルジア問題で具体的な制裁策をとることが出来ないという読みである。なにしろ欧州はエネルギー源をロシアに依存しているのだ。正体不明の武装勢力がグルジア国内の燃料輸送路を爆破することだって起きる。ロシアはこの事件に関与していないと声明を出し、爆破は反露工作だと言うことができるのだ。それでもEUへの燃料供給は断つことができる。これがフランスやドイツは怖いのである。

 話しは違うが、昨夜の福田首相の辞任表明で、日本という国の政治システムが機能していないことに気がついた。日本は政治あっての軍事である。タイのように軍事あっての政治ではない。

 今は軍事よりも政治を正常化する時ではないかと考えた。私にどんなことが出来るのか。このまま日本が沈んでいくのを傍観してはいけないと考えている。 

欧米の支持 生命線

脆弱グルジア経済

ロシア支配が拡大

(産経 9月1日 朝刊)

[概要]グルジア紛争をめぐってロシアへの対応を協議する欧州連合(EU)緊急首脳会議の行方は、紛争の当事者であるグルジアに極めて重要な意味を持つ。グルジアはロシアに軍事介入の口実を与えた弱みを持ち、欧州の支持を失えば、ロシアの思惑通りに政権転覆の可能性すら生じかねない。

 紛争は8月8日、グルジアが親露派地域の南オセチアに軍事進攻し、それに対してロシアが報復に出た構図。グルジアのヤコバシビリ国務相は、「7日にロシアから南オセチアに抜けるトンネルを、ロシア軍の戦車150両が通過したため、ロシアから自衛するためんぽグルジア進攻だった」と指摘する。これに対し、グルジアの専門家、ザカレイシビリ氏は「サーカシビリ政権はロシアの罠にはまった」という。グルジアはロシアの挑発に乗ってしまったとの見方だ。しかし、グルジア国内で政権の非を追求する声は現在、表面化していない。

 グルジアは従来、カスピ海沿岸や中央アジア産の石油、天然ガスを、ロシアを迂回して欧州に輸出する有望な経由国として欧米の支持を得てきた。しかし、今回の紛争で資源経由国としての脆弱性を露呈してしまった。

 グルジアでは民営化政策に乗じて、すでにロシア政権に近い資本が流入し、電気やガス、水の供給といったインフラ企業の多くがロシアに握られている。「グルジア経済の3,4割はロシアの手中にあり、ロシアはいつでもグルジアの首を絞められる」(グルジアの経済アナリスト・フハシビリ氏)という。

 「ロシアの目的はグルジアに親露政権を打ち立て、資源輸出ルートを一手に握ることだ。ロシアが欧米がどれだけ強い態度に出るか見極めている」(グルジア政治学研究所・マツァベリッゼ所長)と話す。欧米がグルジアを見限れば、親米欧のサーカシビリ政権は死活問題となる。

[コメント]いつも言うことだが、一般社会では”挑発”は悪い手段と言われている。しかし軍事の世界では、敵を”挑発”するとは、自分にとって都合のいい場所と時間に誘導し、できるだけ有利な条件で敵を撃破する上手な方法と考えられている。頭のいい指揮官なら、敵を挑発し、最適な方法で撃破することを考える。軍事では挑発されて乗る方が悪いのである。

 それに、今回のグルジア紛争で、アメリカ軍やNATO軍が黒海に軍艦を派遣しても、長期間留まり続けることはできない。軍艦としての補給、休養、修理・点検、訓練などのために、ロシア軍を威嚇することは時間的に限定されている。しかし陸続きのロシア軍はいつでも補給や交代要員、さらには増援部隊まで得ることができる。だから時間が経過するほど、睨み合うロシア軍の優位が増してくる。これは陸軍と海軍の特性の違いでもあるのだ。といって戦略核兵器でロシアと睨み合う米欧が、地上部隊(海兵隊や陸軍)をグルジアに派遣することはできない。

 この記事が指摘するように、今回、ロシア軍がグルジア侵攻で得た最大の成果は、グルジアの脆弱性を露呈させたことだ。ロシアはカスピ海方面から欧米への燃料輸送路の、鉄路、パイプライン、幹線道路を切断できることを証明したことになる。南オセチアやアブハジア自治共和国の独立承認など小さな問題でしかない。

  これからグルジア内のロシア勢力を欧米が巻き返すには、長期的な作戦(謀略)と莫大な資金が必要になるだろう。現実的に、グルジアにそれだけの価値があるのか。今回のEU緊急首脳会談の真のテーマがこれである。

 


※これ以前のデータはJ−rcomFilesにあります。