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2008年9月23日

◎麻生新総裁誕生 勝負できる減税案の提示を

 麻生太郎自民党新総裁に求めたいのは、総裁選の公約に示した定額減税の具体的な中身 である。麻生新総裁の言うように「日本経済は全治三年」の重病なら、景気対策の最大の柱となる減税規模は、よほど思い切ったものでなくてはならない。投資促進や住宅ローン減税など政策減税を含めて、国民の多くが景気回復の期待を持てるだけの内容のある施策を打ち出してほしい。

 小沢一郎民主党代表は、三選後の会見で、高速道路無料化をただちに実施し、初年度に 月額二万六千円の子ども手当を創出すると述べた。農業者戸別所得補償については、四年後までに段階的に実行する見通しを示した。財源があいまいなことから、「ばらまき」との批判もあるが、景気対策として見た場合、高速道路無料化などは速効的な効果があるとの見方もできる。

 財源について、私たちはこれまで「霞が関埋蔵金」を利用せよと主張してきた。埋蔵金 は一回切りのもので、使ってしまえば無くなるというが、元はといえば国民から取り過ぎた税金である。官僚が使い道を決める特別会計に必要以上に残しておく必要はない。

 次期衆院選の最大の争点は景気対策になるだろう。日本経済を再生するために与党案が よいのか、民主党案がよいのか、国民の審判をあおぐ選挙である。麻生自民党は、小沢民主党と真っ向勝負できる景気対策を練り上げてほしい。

 金融不安に直面した米政府は、金融機関の不良債権買い取りに最大七十五兆円を拠出す るなど、大胆な市場安定化策をまとめた。予算規模といい、具体策を打ち出すタイミングといい、金融危機は起こさせないという米政府の並々ならぬ決意が伝わってくる。米国政府の決断の早さ、発想の大胆さをぜひ見習ってもらいたい。

 欧米がサブプライムローン対策に懸命に取り組んでいるなかで、日本だけがわれ関せず といった顔で、いつまでもコップの中の争いをしているわけにはいかない。米欧とスクラムを組んで金融不安の解消に取り組み、世界経済の活力を取り戻すけん引役となる責任がある。

◎女性医師の就業支援 医療機関に工夫求めたい

 医師不足対策の一環として、石川県は女性医師の就業継続を助けるため今秋にも相談窓 口を開設、県内の医療機関の勤務形態や子育て支援の状況などを公開し、働きやすい職場を見つけることに活用してもらう段取りだ。この際、医療機関側の頭の切り替えによる工夫も求めたい。

 個々人が所属する協会が全体の勤務条件の改善に取り組んでいる看護師などに比べて女 性医師対策は遅れている。その勤務実態も掌握されていないし、医療機関側の支援も進んでいないといわれる。

 女性医師の場合も、若い層ほど志望者が増え、医師全体におけるその比率が急速に高く なっている。比率が把握されている病院勤務に限るのだが、女性医師の比率は二十四歳以下では40%に達した。二十五―二十九歳のそれは37・5%、三十―三十四歳では24・6%と年齢を追って比率が下がり、四十五―四十九歳では7・5%、五十―五十四歳では4・3%である。

 これは出産や育児などにより職場を離れる女性医師が増え始めることを意味しており、 それは医師不足につながる。問題が深刻にならないうちに対策を講じる必要が生じているわけで、相談窓口の開設もそうしたことを憂慮した結果だそうだ。

 医師不足の問題には、絶対数の不足や、産科や麻酔科など特定の診療科で足りなくなっ ていることに加えて、女性の進出が増えることから起きてくる新しい問題もあるのだ。出産や育児で職場を離れる場合でもその期間が二年を超えるようになると、復帰が困難になるといわれる。医療の進歩のテンポが速いからである。したがって職場を離れる期間が長引かないようにする手立てを講じることは今や喫緊の課題だ。

 女性医師の就業継続のために、隔日勤務ができる仕組みや保育支援態勢の強化が不可欠 になったのである。隔日勤務でもいい、女性医師の就業継続が容易になれば、それは回りまわって男性医師がいっそう仕事に専念できるようになり、休日も取りやすくなることにつながるのだ。


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