『おみず』のはなし |
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『おみず』といっても夜の水商売の話ではなく、飲み水の話です。最近、人々の飲み水に対する関心は、安全性だけでなく、おいしい水や体に良い水にも向けられており、ミネラルウォーターの消費量や家庭用浄水器具の売り上げが、年々大きく伸びています。また、『アルカリイオン水や海洋深層水が体に良い』という宣伝を聞いた人も多いでしょう。しかし、アルカリイオン水や海洋深層水がどんな水か知っている人は少ないと思いますので、今回はそれらを含めた水についての豆知識を紹介します。 |
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1.ミネラルウォーター 2.おいしい水の条件 3.アルカリイオン水 4.海洋深層水 |
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1.ミネラルウォーター ミネラルウォーター類(容器入り飲料水)は、原水の種類・処理方法により、表1に示すように、ナチュラルウォーター・ナチュラルミネラルウォーター・ミネラルウォーター・ボトルドウォーターの4種類に分類されています。 |
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表1.ミネラルウォーター類(容器入り飲料水)の分類
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ミネラルウォーター類の品質表示ガイドライン(農林水産省) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
ミネラルウォーターの日本国内生産量:412,300 kl(1994年)、 1,295,855 kl(2004年) ミネラルウォーターの輸入量 :146,821 kl(1994年)、 330,705 kl(2004年) 日本人一人当たりの消費量 :4.5 l/年%人(1994年)、12.7 l/年%人(2004年) |
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2.おいしい水の条件 水の味は、水中に溶け込んでいる有機物、カルシウム・マグネシウム・カリウムなどのミネラル分の量とバランス、水温などによって大きく影響されます。厚生省おいしい水検討会が発表している「おいしい水のガイドライン」(表2)によると、硬度(カルシウム・マグネシウム)がそれほど高くなく、有機物が少なく、臭みのない水がおいしい水とされています。 |
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表2.おいしい水のガイドライン(厚生省おいしい水検討会) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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3.アルカリイオン水 アルカリイオン水は、水を電気分解したときに陰極側で生成される水のことです。実際には、アルカリイオン整水器と呼ばれる装置を用いてつくります。電解槽にカルシウムイオンを含む原水を入れ、水に直流電圧をかけると、カルシウムイオン・マグネシウムイオン・カリウムイオン・ナトリウムイオン等の陽イオンは陰極に引き寄せられ、塩素イオン・炭酸イオン・硫酸イオン・硝酸イオン等の陰イオンは陽極に引き寄せられます。両極間に十分に大きな電圧をかけると、水が電気分解され、陰極、陽極の両側で次のような反応が起こります。 陰極:2H2O+2e- →H2+2OH- 陽極:2H2O→O2+4H++4e- すなわち、陰極側では水素が発生し、水酸イオン(OH-)及び陽イオンが多くなり、pH値の高いアルカリイオン水が生成されます。この陰極側に生成される水は、アルカリイオン水(水酸イオンを多く含む弱アルカリ性の水)、還元水(電子密度が高い還元力のある水)、あるいは水素水(水素が豊富に溶け込んだ水)などと呼ばれます。また、陽極側では酸素が発生し、水素イオン及び陰イオンが多くなり、pH値の低い(弱)酸性水が生成されます。 アルカリイオン水は、昭和6年ごろから研究されるようになり、昭和40年に家庭用医療用具として胃腸に対する表3のような効能効果が初めて認められました。その後、人々の飲み水に対する関心や健康志向の高まりといった追い風を受けて、アルカリイオン整水器は順調に普及していきました。しかし、承認外の効能効果まで期待する動きが現れ、一時の過熱的なブームは去りました。 |
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表3.アルカリイオン水の効能効果(昭和40年10月8日付け薬発763号)
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厚生省薬務局長名で各都道府県長宛に交付された |
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4.海洋深層水 海洋深層水は、海洋科学的にはグリーンランド沖の寒い海域で比重の高くなった海水が深層へ沈み、ゆっくりと南下して南大西洋、南極海、インド洋、さらに太平洋へと約2000年に渡って移動する海水を言います。しかし、一般的には水深200 m以深の海水を海洋深層水と呼んでいます。日本で海洋深層水取水適地は30カ所あり、日本各地で海洋深層水が採水されています。特に室戸、駿河湾、富山県、沖縄県海洋深層水などが有名です。 海洋深層水は、表層海水と異なり太陽光が届かないため生物生産がない。従って、低温性、富栄養性、生物学的及び化学的清浄性という特性をもっています。また、表4に示すように、表層海水と同様、マグネシウムやカルシウム以外の多種類の微量ミネラルを含んでいます。これらの特性に注目して、水産、医療、食品、エネルギー利用など幅広い分野での研究が展開されています。海洋深層水の利用は低水温を活用する海洋温度差発電が最初で、その後、米国で1980年代から富栄養性・清浄性を利用した水産養殖・健康食品などへの技術開発が進み、1990年代にハワイ州で事業規模の利用が始まりました。ノルウエーでも1980年代後半から水産養殖への海洋深層水の清浄性の利用が行われています。日本でも1970年後半から海洋深層水の資源利用の研究が進み、1989年に高知県(室戸市)に水深320mからの海洋深層水汲み上げ施設が完成し様々な資源性の利用研究が始まりました。その後、富山県(滑川市)にも海洋深層水取水施設が整備され、沖縄県(久米島、糸満沖)や静岡県(焼津市)などでも取水設備や施設整備が進められています。 海洋深層水をネーミングしたミネラルウォーターは、逆浸透膜装置による脱塩水に深層水中のミネラルを後から加えるものが多く、海洋深層水から作ったミネラルウォーターは、その原水が地下水ではないため、表1のボトルドウォーターに分類されています。この硬度の高いミネラルウォーターを飲むことで、血流量増大効果やアトピー性皮膚炎に効果があることが報告されています。 |
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表4.深層水と表層水の特性値(高知県商工労働部 海洋深層水対策室によるデータ)
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