総選挙の争点
前回からこの「総選挙への鼓動」という話題でお話をしています。前回は現在の議席、そして将来総選挙があった場合の当選の予測、そういったことをお話いたしましたが、2大政党制といいながら、いろいろ小党分裂の部分もありまして、どうなるか、なかなか予測しにくいところがあります。そこで今回は総選挙での争点となるところを挙げて、その後世の中、政界はどうなるか、こんなことをお話したいと思っています。
まず、総選挙の争点ですけれども、「外交」としては「テロ対策特別処置法」、インド洋で自衛艦が給油活動をしている。これを延期するかどうかという問題があります。現在の内閣はアメリカに協力することを重点的に、国際社会との協調というところでこれを延期したいわけでありますが、これに対して民主党・共産党・社会民主党は当然のこと、公明党も非常に乗り気薄だと、まあ自民党が言うから何とか目立たないように賛成しようかという程度なんですね。
そうしますと、この問題は、参議院に行ったときに否決される可能性が濃厚です。そうなってくると衆議院に戻ってくる。そこで再議決をする。それは衆議院の3分の2が賛成すれば、参議院が反対しても通せるわけですけども、そのためには自民党だけでは足りなくて、公明党の賛成が必要だと。そこで公明党が賛成するのかどうか。こういった問題があります。
この外交問題、次の北朝鮮の拉致問題を含めて、あまり前向きな新しいテーマではありません。日本の外交は非常に停滞しているといわざるを得ないでしょう。外交が停滞しているということは、選挙ではあまり問題になりませんが、今回はこの2つ、「テロ対策特別処置法」の延長問題と「北朝鮮の拉致問題」、これが進展していないということは、選挙の多少の話題になるでしょう。
もっと重要な問題は、「経済」です。去年の中頃から日本経済は徐々に悪くなり、とうとう今年の春から景気は後退局面に入った。停滞局面に入ったというのを政府も認めました。8月に入って内閣が改造された。今までの内閣は景気が好調に続いている、今は踊り場である、という表現をしてたんですね。階段がずーっと上がってきたのが踊り場になって、また上がる。こういうような期待を込めた表現をしてたんですけれども、改造内閣は、はっきりと景気は下がりだした、景気下落の局面に来ている、こういうことを認めました。
それで、じゃあ景気が悪くなるのなら、これをどうしたらいいか、というので出てきたのが、補正予算の問題です。小泉内閣以来どんどんと予算規模を削り、特に公共事業などを削りまして財政を再建するんだ、2011年度−今年は2008年度ですが−、あと3年経つとプライマリーバランス、国際費を除く収支を均衡させるんだと。こう言ってきたんですね。
ところがここに来て景気が悪くなって、一方では税収が減りました。そしてもう一方では予算を膨らませて、景気進行すべきだと。この補正予算を出して、景気対策をすべきだという意見が出てまいりました。ここで財政再建か景気対策か、この二者択一を迫られるようになってきたわけです。
これは大きな問題ですから、当然選挙のテーマになりそうですが、民主党の方は実は景気対策は盛んに言っています。ところが財政再建については、いや倹約をすればできるんだと、財源についてほとんど述べてないんですね。ここが国民がどう判断するか、一つの問題点です。
もう一つ、この経済の問題では「地方振興問題」があります。21世紀になってから8年間、ものすごい勢いで地方は疲弊してきました。これは世界経済がグローバル化したことによって、農業保護がしにくくなった、縮小した。そのお陰で農業所得はどんどん下がりました。お米の値段もそれほど値上がりしないし、様々な物も値上がりしない。そこへ外国から安い農産物が入ってくる。これで日本の農業はかなり衰退をしました。この農業に対して、所得を補償する、農業をやっていたら最低何万円以上は収入があるようにしてやるよ、足らん分は補助金をやるよ。こういうような制度をとるかどうか、これが一つの問題点なんですね。
それからもう一つは、地方開発のために、地方の景気振興のために道路づくり、いわゆる公共事業・道路づくりを沢山やろうという意見があります。そのためには財源が要りますから、ガソリン税や自動車重量税でとった特定財源を道路につぎ込む。これを継続したい。今までこの財源は道路特定財源だったのですが、これを一般財源にしても他にはあまり回さないで、道路に使え、そういうような問題があります。重要なところは地方振興に農業所得補償をすることの是非をめぐって両党が対立しています。
3番目は福祉・医療の問題です。福祉、特に年金ですね、年金や医療保険、これを税金でとるのか保険料でとるのかというのは大きな問題です。税金でとりますと、所得の高い人が沢山負担し、低い人はあまり負担しない、あるいは時にはゼロにもなります。一方、税金でとれば、確実に全部とれる、確実にとる。だから基礎年金のお金は税金でとった方が良い、税金を投入した方が良い。という考え方があります。
一方には、いやこれはやっぱり保険料である。だから沢山払った人が沢山もらう。そういうような今払ったお金が活用されて、将来の自分の所得に響くようにする、こういう保険料であるべきだ。この2つが対立しています。
税金でやるとなりますと、税金を上げなければならない。上げる税金というのは、タバコもありますけれども、主として消費税だ。消費税を値上げして、この年金・医療保険を確実にするのがいいのか、あるいは今までのように所得に合わせて納めていただく方がいいのか。ここも争点の一つです。
もう一つは、今度の選挙に非常に重要な影響を与えると思いますのは、官僚の失敗です。去年、一昨年くらいから官僚の失敗が続きました。しかもその官僚の失敗で日本経済が大変な打撃を受ける事件が相次いでいます。例えば医療が非常に難しくなった。産婦人科がなかなかたどり着けない。産気づいてからでも救急車で何台も回らなければならない。千葉県のような人口の多い県でも、本当にいつでも受け入れる救急産院は4箇所しかない。これが満員ならたらい回しになって、救急車の中で苦しむことになる、というような問題。これは厚生労働省の医務局の局長が出した通達から始まっているんですね。これも以前よりも日本の医療を悪くした。
あるいは、去年の6月から始まりました、建築基準法の改正の問題。これは改正された結果、建築許可がなかなか下りなくなった。建築着工(床)面積が、がっくり減りました。これも極めて大きな打撃だったんですね。日本国のGDPが0.6%、約3兆円も減っちゃったという大事件。こういったことは、官僚の失敗なんですね。年金記録が紛失したというのも官僚の失敗です。この官僚の失敗と言うのは、ずーっと上に上がると内閣の失敗になりますから、これが大きな問題になります。