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2008年1月16日放送

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今回の番組について
かつて、年間15万人近くが亡くなった「結核」。過去の病気かと思いきや、今でも日本に感染者が2800万人もいると言います。しかも、若者にまで感染が広がったり、薬の効かない「耐性菌」が生まれるなど、新たな危険もあるのです。
なぜ今、結核が目覚めるのか? その対策をお伝えします。
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オープニングクイズ
- 問題:肺魚のユニークな習性は?
答え:土の中に潜る
- 問題:せきどめ地蔵のお供え物は?
答え:唐辛子
- 問題:18世紀におこわなれていた結核治療法は?
答え:ブランコに揺られる
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「結核緊急調査」
東京都に住むAさん(82歳の女性)は、去年、結核と診断されました。結核は、呼吸で結核菌が肺に入ることによって感染します。ところがAさんには、結核になった知り合いはおらず、感染の心当たりは全くないと言います。
そこで、都内の囲碁教室の12人の方にお願いして、結核に感染しているか調査したところ、3人が「感染」、2人が「感染の疑いあり」という結果でした。
調査の結果、知らずに結核に感染している人がたくさんいることが分かりました。ただし、感染しているだけでは、菌はいわば眠っている状態です。発症しなければ、症状はありませんし、人にうつすこともありません。
もし、発症するとどうなるのでしょうか? 同じ肺の病気である「肺炎」は炎症なので、多くの場合、症状が収まれば治ってしまいます。ところが、結核は、肺の組織が破壊されてしまうので、一度破壊された部分は元には戻りません。かっ血も組織が破壊されて出血したものです。では、結核はどのように発症するのでしょうか?
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「結核菌が目覚めるとき」
70年近くにわたって研究を続ける結核研究所には、30年以上もの間、人工的に眠らせてある貴重な結核菌が保存されています。
今回、特別に酸素と養分を与え、眠りから呼び覚ましてもらいました。結核菌は、何十年でも眠り、何らかのきっかけで再び目覚めることがある、めずらしい菌なのです。
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「結核菌はどうやって侵入した?」
それにしても、いつの間に菌は肺に入ったのでしょうか? 肺には菌が入らないように“4人の番人”がいます。いったいどのように守られているのでしょうか?
菌の肺への侵入を防ぐ第1の番人が、のどの「ふた」です。食べ物と一緒に菌が気管に入るのを防いでいます。第2の番人が「粘液線毛」。気管の表面の小さな毛が菌を運び出します。第3の番人は「せき」。時速100キロメートルもの風速で菌を押し出します。最後の番人は、免疫細胞「マクロファージ」。細菌を食べてしまいます。
結核菌はどうやって“4人の番人”を破った?
結核菌は、マクロファージに取り込まれると、活動を止めてしまうことがあります。すると、マクロファージの消化酵素は効かなくなり、そこで何年間も生き続けます。しかも、マクロファージは結核菌を閉じこめようとして殻を作りますが、それが菌にとっては、逆に防御壁の役目を果たしてしまうのです。
推定2800万人の感染者の多くは、戦中戦後の結核大流行期に菌が肺に入り込んでしまった人たちです。70代の5割、60代の3割が感染していると推測されます。ストレスや糖尿病などで免疫力が落ちると、菌が目覚め、結核を発症してしまうことがあります。
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「耐性菌が生まれる意外な理由」
さて、結核にはもう一つ新たな危険があります。それが「耐性菌」です。
Bさん(男性)は、12年前に結核を発症しました。服薬により一度は回復しましたが、その後、薬が効かなくなってしまったため、菌に冒された肺の一部を切り取る手術を受けることになってしまいました。薬が効かなくなった原因は、Bさんが服薬を途中でやめてしまったことにありました。
結核の治療には、耐性菌を作らないために、複数の薬を組み合わせて使います。菌がある薬に対して耐性を持ってしまった場合でも、別の薬で倒すことができるようにするためです。ところが、服薬を途中で中断してしまうと、どの薬も効かない耐性菌が生まれてしまうのです。
服薬を中断してしまう原因には、薬を飲まなければならない期間が6〜9か月と長いことや、薬に副作用があることなどがあげられます。
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「耐性菌を作らないために」
先に紹介した、結核と診断されたAさんは、自宅で服薬治療を行っています。Aさんの家には、平日、毎日保健所から看護師がやってきます。看護師の見ている目の前で薬を飲むことで、飲み忘れや服薬の中断を防いでいるのです。
第三者が服薬を確認する取り組みは「DOTS(ドッツ)」と呼ばれ、地域の保健所が窓口となって行われています。
専門家の話
結核発症の危険因子として次のものがあげられます。当てはまる場合は結核の発症リスクが高まるので注意してください。
- 慢性腎不全(発症リスクが10〜25倍)
- 糖尿病(発症リスクが2〜4倍)
- 免疫を抑える薬の服用(リウマチなど)
- 胃潰瘍
- ストレス
結核を発症させないためには、栄養や休養、運動など日頃から健康的な生活を心がけることが大切です。また、若者が集まりやすい都会では感染が広がるリスクが高まります。都市部の環境を改善することが社会から結核をなくすことにつながります。
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