【発明の名称】 |
非容積型タービン |
【発明者】 |
【氏名】久我 昌弘
【氏名】湯川 貴史
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【要約】 |
【課題】従来、複合発電(コンバイン発電)装置は、ディーゼル発電機、ガスエンジン発電機やガスタービン発電機などから排出される排気ガスを廃熱ボイラー等により熱回収し、その蒸気を利用してラジアルタービンやスクリュータービンを用いて2次発電するものはあるが、回収された熱エネルギーを2次利用しないで大気放出して捨てている設備や施設は多く有り、また利用するにしてもエネルギーの小なものは利用不可能な為捨てられていた。特に、非容積型タービンは、効率も低く実用上回転力は得られにくいとされていた。
【解決手段】ケーシング内に収納され複数の円板を密な間隙を持って回転自在に配置されている回転子に対して、複数個設けられるノズルから作動流体の媒体が噴射され、前記回転子が駆動されることで動力が取り出す非容積型タービンとする。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 ケーシング内に収納され複数の円板を密な間隙を持って回転自在に配置されている回転子に対して、複数個設けられるノズルから作動流体の媒体が噴射され、前記回転子が駆動されることで動力が取り出されることを特徴とする非容積型タービン。 【請求項2】 ケーシング内に収納され複数の円板を密な間隙を持って回転自在に配置されている回転子に対して、ケーシングの側板間に設けられるノズルリングに複数設けられたノズルから作動流体の媒体が噴射され、前記回転子が駆動されることで動力が取り出されることを特徴とする非容積型タービン。 【請求項3】 ケーシング内に収納され複数の円板を密な間隙を持って配置されている回転子に対して、複数のノズルから作動流体の媒体が噴射され、前記回転子が駆動される非容積型タービンにおいて、前記ノズルの角度は円板の接線方向に対して傾斜して設けられたことを特徴とする非容積型タービン。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、空気、蒸気や液体等の作動媒体により駆動される非容積型タービンに関する。 【0002】 【従来の技術】複合発電(コンバイン発電)装置は、ディーゼル発電機、ガスエンジン発電機やガスタービン発電機などから排出される排気ガスを廃熱ボイラー等により熱回収し、その蒸気を利用して発電するものであるが、その蒸気条件としては、最低250℃程度必要であり、その発電規模も2000〜10000kwと大型であった。その多くは、コージェネレイション・システムとして給湯や冷暖房に利用されるか、又は中型の発電機で回収蒸気量が多くなれば、複合(コンバインド)発電システムとして、ラジアルタービン(例.特公昭60−50962号公報)やスクリュータービン(例.特公昭57−23764号公報、特公昭54−21896号公報)を用いて2次発電が行われていた。 【0003】しかし、上記装置から回収された熱エネルギーを2次利用しないで大気中に放出して捨てている設備や施設は多く有り、また利用するにしても上記条件以下のものは利用不可能な為に捨てられていた。特に、上記条件以下の蒸気は利用されていなかったが、その理由は、一般に回転力が得られず、この為実際は実用上も経済上も問題があったので捨てられていたからである。特に、非容積型であるタービンは、効率も低く回転力は得られにくいとされていた【0004】従来、例えば、非容積型のタービン装置として、特許第2716375号公報、特公昭26−2805号公報がある。同タービンでは、回転軸に平行な複数の平板を間隙を配して設けられたロータに対して、作動流体が流入することで、ロータを回転させるものである。 【0005】次に図10を用いて、前記非容積型タービン(特許第2716375号公報)について説明する。図10の(1)に示すように、ノズル10からポート9を経て回転子5に対して作動流体は流入する。回転子5は、複数の円板を適宜の間隙を空けて平行に配置したものである。作動流体は、回転子5の外縁に接する角度でケーシング内へ流入した後、回転子5間の複数の間隙を通過して中心部に向けて螺旋状に流れて、作動流体の粘性によるせん断力によって回転子5を回転させる。更に、作動流体は、回転軸6方向へ流れ、ガイド翼8の平板部8aから従来の非容積型タービン翼と同じ原理の湾曲部8bを持つ第2のガイド翼8を通過することで、回転子5の回転を加速させる。ガイド翼8は、前部からみると図7(2)に示すような構造となっている。 【0006】上記のような非容積型のタービンは、効率は悪いとされて長く顧みられず実用化されていなかったもので、特に、このような非容積型タービンでは、作動流体のエネルギーが大きくないと、非容積型であるために効率も低く有効な回転力は得られにくいとされていた。 【0007】特に、この種非容積タービンは、また、効率上ノズルの噴射角が回転子に対して接線方向に設けられる構造が好ましいとされていた為に、固定されており、ノズルの噴射角の変更はできない構造となっている。 【0008】この種タービンでは、ノズルはケーシングに一体に設けられていたために、ノズルを変更したり補修する場合に取り外しが不可能であった。 【0009】 【発明が解決しようとする課題】上記従来の問題点を解決する為に本発明では、作動流体のエネルギーが低位であっても、回転力が有効に得られる非容積型タービンを得る構造を得ることを目的とする。特に、今まで利用されることなく捨てられていた廃熱を利用して回収した低温蒸気によっても、発電することが可能とすることを目的とする。 【0010】 【課題を解決するための手段】本発明は上記課題に着目し、実験を重ねた結果、回転力が得られない原因の一つは、円板の間隙に重要な関係を有ることを見出し、回転力を得るには円板を密な間隙をもって配置し、該回転子に対して、側板間の挟まれるノズルリングの円周上に複数設けられるノズルから作動流体の媒体が噴射され、前記回転子が駆動されることで動力が取り出せることとなったもので、この結果この種の非容積型タービンにおいても、従来捨てられていた蒸気でも実用上利用することができたものである。 【0011】ケーシング内に収納され複数の円板を密な間隙を持って配置されている回転子に対して、複数設けられるノズルから作動流体の媒体が噴射され、前記回転子が駆動される非容積型タービンにおいて、前記ノズルの角度を円板の接線方向に対して傾斜させて設けたもので、回転子に対する作動流体のエネルギーを有効に利用しタービン効率を一層向上させたものである。 【0012】 【発明の実施の形態】本発明の実施の形態を実施例に基づき図を参照して以下に説明する。 【0013】本発明の非容積型タービン1は、図1に示すように、側板3、3とノズルリング4とでケーシング2が形成されており、その内部に、回転子5が片持ち支持され回転自在に軸支されている。図1では、回転子5は、一方が軸受60、60に支持された回転軸6に固定されている。該回転子5の一方の側(図1で左側)の回転軸には6には、発電機(図では省略)などが連結されており、回転により動力が取り出される【0014】回転子5は、図1、2に示すように、複数の密に且つ各平行に配置された円盤状の円板(ディスク)50から形成され、また、回転子5は、中央部に媒体が吐出される吐出口501が設けられている。 【0015】回転子5の円板50の間隙sについては、実験の結果、タービン効率と重要な関係があることがわかった。図7は、蒸気(飽和)を用いて、非容積型タービン効率ηと回転子5の円板50の間隙sとの関係を求めたものであるが、板厚Lが増える程、非容積型タービン効率が下がるのがわかる。円板50間の間隙sは、極めて狭い0.8から0.9mm近辺でタービン効率は、板厚に拘わらず、最高値を示している。従って、非容積型タービン効率を上げ回転力を得るには、板厚Lを薄くして円板の間隙sを極めて狭く密に配置する必要がある。 【0016】図1に示すように、円板50の吐出口501側には、ケーシング2の側板3に螺合固定される吐出側部材7が設けられており、吐出口501から排出される作動流体が導かれる排出ポート70が設けられている。 【0017】他方の側板3は、ロックナット601があって、該ロックナット601によって側板3等を螺合固定する。 【0018】側板3、3間に間挿されているノズルリング4は、図2の(2)に示すように該ノズルリング4の側面を示し、ノズルリング4はドーナッツ状である。ノズルリング4は、前記したように側板3、3間に間挿されて固定ボルト(図示せず)などによって固定されているので、ノズルリング4を簡単に交換することができる。従って、ノズル40の数や形状を変更したい場合には、交換すればよい。勿論、ノズルリング4を側板3、3と一体に鋳物等で形成することも出来る。 【0019】ノズルリング4には、図2の(1)に示すように、ノズル40が挿着される挿着部401が設けられており、該挿着部401内のノズル40が挿着される。ノズル40と挿着部401とは挿着の外ネジによって固定することもできる。ノズル40の挿着部401内へ補修や交換は、取り外し可能であるので容易に行うことが出来る。勿論、ノズル40は最適なものを初めから固定しててもよい。 【0020】図2では、ノズル40は円周に4個設けられているが、適宜その数を増やすことも可能である。 【0021】従って、該ノズル40から、円板50の間隙部に向かって作動流体の媒体が噴出され、作動流体の噴出エネルギーによって、円板50は回転を始める。 【0022】ノズルの噴射角度θについては、従来例では、例えば、前記した特許第2716375号公報や特公昭26ー2805号公報でも判るように、殆どが円板50の接線方向に向いており、それが円板50間を螺旋状に流れるので経路も長く、最もエネルギーを効率よく付与するものと考えられていた。しかし、実験の結果では、意外にも傾斜角があった方がタービン効率がよいことが分かり、噴射の角度θが約12°〜16°のような低位角度で範囲で最も効率がよいのが発見された。 【0023】図8は、図6に示すような、ノズルの角度θとタービン効率ηとの関係を作動流体として蒸気を使用して実験したものである。角度θは、円の接線とノズルの傾斜との関係を表す。蒸気量は、100kg/hから300kg/hと変えたが、約12°〜16°位の範囲で最高値があることがわかり、角度θは、このような低位角度で傾斜しているのが非容積型のタービン効率では良好であるのがわかった。この理由としては、複数のノズルから噴射された作動流体が相互に好ましく加速し合い円板50に対して、好ましい結果を与えるものと推測されている。 【0024】また、ノズル40の先端付近には、図2に示すように、噴射調整部材41が挿着されており、該部材41は、ノズルリング4内に設けられた該噴射調整部材41が挿着される挿着部42にネジにより固定してもよい。そこで、噴射調整部材41は、ネジが設けられていれば、噴射調整部材41の頭部に設けられている環帽410を回すことでノズル40に対して前後進させる(図4参照)。 【0025】前進させると、ノズル40から噴射される作動流体は、作動流体に対してその噴射に抵抗となるので、円板50の内方、即ち中心方向に曲げられ、噴射角度が変更されることになる。ノズル40から噴射される作動流体の媒体に対して、噴射調整部材41を前進させればさせる程、噴射作動流体の角度は深くなり、円板50に対する回転トルクは変化する。最も効率のよい角度ところまで、噴射調整部材41はノズル40に対して前後進される。 【0026】ノズル40の噴射角度を調整する手段としては、この外種々のものが考えられるが、図5に示すような構造も考えられる。 【0027】図3では、ノズルリング4そのものが側板3、3内で回転できるように、ノズルリング4の円周外周部に環状スリーブ部400を設けたもので(図3の(1)参照)、該環状スリーブ部400は、側板3、3に回転自在となるように嵌入している。固定ボルト455は、環状スリーブ400が回転出来るように、締め付け圧を調整される。ノズル40は、図3の(3)に示すように支点460で回転自在に支持されているので、ノズルリング4が回転すると回転することになる。 【0028】なお、ノズル40は、図3の(3)に示すように他のノズル40と導管462によって相互に、例えばノズル40の円周上に環状に連結されており、ノズルリング4の回転に対応するようにノズル40の導管461との根本部分は、図3の(4)のように蛇腹状の連結部462になっており、回転に対して伸縮できるようにしてある。勿論、ノズル40は、各々独立した導管に結ばれていても構わない。 【0029】ノズルリング4の回転は、例えば、図3の(2)に示すように、回転駆動装置45として、ラック450とピニオン451の組合せが考えられる。ラック450は、ノズルリング4の外周部に取り付けられており、ピニオン451と噛み合っている。ピニオン451は、モータ452によって駆動されて、ノズルリング4を回転させる。ノズル40は、図3の(4)に示すように、支点460で支持されているので、ノズルリング4が回転すると、回転につれて、噴射角度が変更される。 【0030】このようにモータ駆動によって、全てのノズル40の噴射角度が自動的に変更され、最適の噴射角度が簡単に得られることになる。 【0031】更に、上記実施例では、回転子5から流出する作動流体は、吐出口501から排出される作動流体が導かれる排出ポート70が一方にのみ設けられているので、そのリアクションによるスラストが掛かり、スラスト軸受けを使用し軸受けを強化しなければならない。しかし、図4に示すような構造とすれば、スラストは、相殺されて軸受けの構造を簡単なものとすることができる。 【0032】図4に示すように、回転子5から排出された作動流体は、両側の排出ポート70へ排出されるので、回転軸6にかかるスラストは相殺されて、従って、軸受けは強度の要らない通常の軸受け60、60でまかなうことが可能となる。而も、側板3、3も左右対称のもので形成することができ、コストを低減することができる。 【0033】図9に示すものは、蒸気量を次第に上げて行くとタービンの回転数は上がるが、その場合にタービン効率ηがどうなるかを示したものであるが、タービン効率ηは問題なく上昇し本発明における非容積型タービンが好ましいことがわかる。 【0034】本発明は、このように媒体として蒸気の外、空気や液体等によっても、非容積型タービンを駆動することができる。 【0035】 【発明の効果】上記構成により、以下に本発明の効果を示す。 【0036】本発明における非容積型タービンでは、作動流体のエネルギーが小さくてもタービン効率がよく実際上回転力が得られるものとなり、実用上動力が有効に回収できるものとなった。 【0037】また、従来使用されずにいた作動流体でも利用できるために、エネルギーの有効利用、発電効率のアップ、CO2の削減に寄与できるものとなった。
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【出願人】 |
【識別番号】599016682 【氏名又は名称】久我 昌弘
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【出願日】 |
平成11年2月4日(1999.2.4) |
【代理人】 |
【識別番号】100108888 【弁理士】 【氏名又は名称】本田 紘一
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【公開番号】 |
特開2000−227001(P2000−227001A) |
【公開日】 |
平成12年8月15日(2000.8.15) |
【出願番号】 |
特願平11−27625 |
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