8月22日、最高裁判所から高知白バイ事件の被告・片岡晴彦さん宛に「上告棄却」の通知が届いた。4万7000名の署名は、踏みにじられた。片岡晴彦さんは、これから1年4ヶ月を刑務所で暮らすことになった。
スクールバスを停めていて、死亡事故の「犯人」にされた片岡晴彦さん。
「白バイ事件」の経過
2006年3月、春野町(現・高知市)の国道56号線で、停車中のスクールバスに、高速走行中の白バイが激突。白バイ隊員が死亡。スクールバスを運転していた片岡晴彦さんが、業務上過失致死罪に問われた。
2007年6月、高知地方裁判所が禁固1年4ヶ月の実刑判決を下す。弁護側は控訴。
2007年10月、高松高等裁判所で公判。弁護側の証拠・証人をすべて却下し、即日結審。弁護側は上告。
2008年1月、上告趣意書を最高裁に提出、審理の差し戻しを求める。
2008年3月、証拠隠滅、虚偽公文書作成等で、片岡晴彦さんが高知県警を告訴。
2008年6月、高知地裁の和解勧告に応じて、仁淀川町は、遺族側に総額1億円を支払うことに合意。片岡晴彦さんは、和解勧告には応じなかったが、遺族側は、民事訴訟において片岡晴彦さんへの訴えを取り下げた。
2008年8月、最高裁判所が、片岡晴彦さんの上告を棄却。
元東京高裁裁判長、最高裁調査官を歴任し、8年前退官した木谷明氏は、KSB瀬戸内海放送の取材(7月30日放送)に応じ、この裁判の問題点について次のようにコメントしています。
県民でなく、警察官だけを護っている高知県警察本部。
元東京高等裁判所長・木谷明氏のコメント
(もし本当にあったのなら、バスのブレーキ痕を8ヵ月後に写真で見せるのでなく)事故現場で本人に確認させるべきでしょう。重要な手続きをしてないです。この事件の捜査の不備でしょう。そういう不備のあった捜査に基づいて、絶対被告人が犯人だと断定することは、やはり問題ですね、これは。(裁判で大切なことは、)思い込みにとらわれずに裁判をする、このことに尽きますね。警察官だって、検事だって、いざとなればウソをつくこともあるし、場合によっては、証拠に手を加えることもある。
捜査機関の作為というのは、絶対にあってはならない。そういう疑いが提起された場合、徹底的に審理して、裁判所がはっきりさせるべきです。裁判所のきわめて重要な役割だと思いますね。何もかも検事の言うとおり、みんな有罪判決にしてしまえばいいというのなら、裁判所はいりませんね。
(高知地裁、高松高裁は、追突した白バイのスピードについての第三者の証言を却下したことについて、「第三者だからといって、その証言が信用できるわけではない」としました。また、同僚白バイ隊員の証言を全面的に採用したことについて、「被害者と同じ白バイ隊員であるというだけで、供述に信用性がないとはいえない」としました。そのことについて、木谷さんは、このようにコメントしています)
「全然ウソをついていない」と言わなきゃならないのに、「ウソをつくとは限らない」と言っています。そりゃそうでしょう。利害関係がある同僚警察官がウソの証言をしてないという保証は全然ないですよね。
警察・検察のチェックを怠った高知地方裁判所。
神奈川県警の内部文書
1999年当時不祥事が噴出した神奈川県警の内部文書には、本部長訓示としてこういう表現があります。「不祥事はマスコミに騒がれて初めて不祥事となる。あった場合は、県警全体で処理に当たる。県警としてチエを出していく。組織に乗せる」
不祥事は、バレなきゃいいのだ、バレないように組織として全力を尽くす、もしバレたら、組織的に全力で取り繕うのだ、と言わんばかりです。現職警察官として、愛媛県警の捜査費横領を告発した仙波敏郎さんは、「警察官だけは、法を曲げてはならない」と言う硬骨漢です。その信念の人が、昨秋、私にこのように語りました。
「今の日本で、仕事として、日常的に法を犯しているのは、暴力団と警察です」
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