□14日、東京都千代田区の九段会館
台湾に今年5月、中国との関係改善を優先する馬英九政権が誕生して以来、日本との関係がギクシャクしている。6月には、尖閣諸島周辺で海上保安庁の巡視船と台湾の遊漁船との衝突沈没事故が発生。「世界で最も親日的」と言われた台湾で一時、反日ムードが高まる事態に発展した。これまで日台両サイドから親善に尽力してきた人たちは気が気でない。
シンポジウムには、台湾から楊永明・国家安全会議諮問委員が参加、馬政権の対日政策の方針を説明するとともに、今後の日台関係について、岡崎久彦・元駐タイ大使、評論家の黄文雄氏、ジャーナリストの櫻井よしこさん、田久保忠衛・杏林大学客員教授、林建良・メルマガ「台湾の声」編集長と意見を交換した。
岡崎氏は、「馬政権と日本政府との信頼関係はまだ確立されていない。お願いしたいのは、例えば軍艦を出すにしても、日本に厳しい発言をするにしても、事前に連絡がほしいということだ」。櫻井さんも、「馬政権の支持率が下がっているのは、台湾のためと思える政策があまりなく、中国に融和的過ぎるからではないか」と指摘する。
これに対し楊氏は、「中国との関係強化は経済面にすぎない。馬総統は日台関係を非常に重視している(親日より進んだ)“友日派”。日台の『特別な関係』は外的要因(中国)で変化することはない」と強調したが、パネリストからは、「(かつて反日的だった)馬総統の対日感情が変わるかどうかは疑問」(黄氏)と辛口の声も。
一方、日本政府に対して“厳しい注文”を投げかけたのは在日台湾人である林氏。「台湾が『親日』といわれると複雑になる。台湾の“片思い”に思えるからだ。戦前は確かに素晴らしい日本人がいたが、戦後の日本は台湾に何をしてくれたか? 『特別な関係』はお互いの尊敬があってこそだ」と訴え、この日一番の拍手を集めた。(喜多由浩)
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