小沢一郎代表の三選が承認された民主党大会は総選挙一色の様相だった。自公政権への世間の視線は厳しく、政権交代ムードも高まるが、風頼みでは困る。公約をさらに具体化させることが肝要だ。
「いよいよ決着の時を迎えた」−。あいさつに立った小沢氏は近づく総選挙に向け“第一声”を発した。風邪のためか声はしゃがれていた。しかし「私にとって最後の一戦だ」と言い切ったあたりに、自公政権打倒への並々ならぬ執念をうかがわせた。
自民党はきょうの総裁選で麻生太郎幹事長が新総裁に選出される見通しだ。五候補の華やかな論争で総選挙への弾みをつけようとした思惑は外れ、麻生氏の独走で消化試合に。むしろ汚染米問題などの失態が政権内で露呈した。
一方、世論調査では「民主政権」を求める声が依然多い。そんな空気も意識して小沢氏はこの日の発言を「次期首相」の所信表明演説と位置づけたようだ。
官僚任せの無駄遣いが横行する政治が続けば、日本社会は崩壊する、主権者である国民の手で「新しい国民生活」を築くとして、子ども手当支給、高速道路無料化などを盛り込んだ九本柱の政策を打ち出した。
財源は一般、特別会計を合わせた国の純支出の約一割となる二十二兆円を充てる考えを表明。実施時期については(1)来年度予算で実現(2)二年以内(3)段階的に四年後まで−の三つに分けてメニューを提示することを約束した。
これまで民主党の政策は財源のあいまいさから現実味がないと、与党からの批判にさらされてきた。政策の工程表に言及したのは評価できるが、まだ詰めるべき点は多い。二十二兆円の歳出カットが可能かどうかも含め、より具体的な裏付けを示す必要がある。
民主党は今月中に総選挙公約を取りまとめる方針だ。公約の精度を高める作業を通じ、党内結束を強化することもできよう。
小沢氏は鳩山由紀夫幹事長ら党首脳の続投を決めた。「次の内閣」人事は「骨格の人たちは政権を取ったらそのまま内閣に入ってもらいたい」として、近く発表するという。公約とともに「閣僚人事」で有権者の期待をつなぎ留められるかが課題となる。
「一度政権交代を」の世論が少なくない半面で、「民主政権」に不安感を抱く声がある。小沢氏は国民に生の言葉で懇切丁寧に、目指す「国の姿」を語り続けなければならない。
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