サッカー大会で高校生が落雷に遭って重い障害が残った責任は学校にある、と高松高裁が認めた。引率者は子供の安全を預かる立場にいることを自覚すべきだ。雷鳴を聞いたら、まず避難を考えよ。
原告の男性(28)は高知市内の私立高校一年だった一九九六年八月、大阪府高槻市で開かれたサッカー大会に学校のクラブ活動として出場していて落雷に遭った。命は取り留めたが、視力を失い、手足には重い障害が残った。
男性は学校と大会を主催した高槻市体育協会に損害賠償を求める訴訟を起こしたが、一、二審とも「落雷は予見できなかった」として請求を棄却した。しかし、最高裁は落雷の予見可能性を認め、審理を高松高裁に差し戻した。
差し戻し審判決は「雷鳴が聞こえ、雲間に放電が目撃された」と最高裁と同じく、落雷を予見できたとした。争点の事故回避の可能性についても、会場周囲にあるコンクリート柱付近に避難すれば事故を回避できた、と認定した。
落雷そのものは自然現象だ。学校側に責任があるとした判決には「天災ではないのか」と戸惑う教育関係者がいるかもしれない。
しかし、前兆がある以上、直撃の危険を避けようとすればできたはずだ。クラブ活動の場合、生徒は自由な行動を規制されており、安全を預かる先生の責任は一般的な状況よりも重い。そこで指導者が何の対策も取らなければ人災だ。妥当な判決といえよう。
落雷は年間五十万回ほど観測されている。判決も事故前の三年間に年間五−十一件の死傷事故があり、三−六人が死亡したと頻度に言及した。関係する文献も少なくない。教育関係者は部活の指導に尻込みすることなく、落雷事故の回避措置を知っておくべきだ。
建物や車内に移動する。できるだけ身を低くする。基本的な知識の習得は当然だが、何よりも求められるのは、いま行っている試合や練習をやめるという決断だ。
サッカーなどで試合の中断となると選手や保護者から「雨は強くない。まだできる」と異議が出ることもあろう。そんなときに状況と危険性をきちんと説明して説得し、避難に向かわせるのが指導者や試合主催者の責務だ。
登山やキャンプ、海水浴などの野外活動でも落雷事故は起こり得る。「ゴロゴロ」が聞こえたら、まずは避難することを考える。先生でなくても児童や生徒を引率する者であれば、常識としたい。
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