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NIKKEI NET

社説1 小沢代表は説得力ある政権公約を示せ(9/22)

 民主党の臨時党大会で小沢一郎代表の3選が正式に承認された。小沢氏は所信表明演説を行い、政治生命を懸けて政権交代を実現する決意を強調するとともに、月内に次期衆院選のマニフェスト(政権公約)を取りまとめる考えを示した。

 小沢氏はすでに年金制度の一元化などを盛り込んだ基本政策案を発表している。これに基づいて政権公約を肉付けするが、民主党の政権担当能力を示すには、説得力のある財源を盛ることなどが不可欠だ。

 小沢氏は、政権公約では(1)来年度予算で直ちに実施する(2)来年の通常国会で関連法案を成立させた後、2年以内に実施する(3)次の衆院議員の任期内の4年後までに実施する――という3段階に分けて、重点政策の実現時期を明確にすると説明した。

 この後の記者会見では、高速道路の無料化は来年度から実現し、月額2万6000円の子ども手当も来年度からの段階的な実施を検討する方針を示した。農業の戸別所得補償制度は2段階目の時期から着手するなど、構想の一端を明らかにした。

 財源に関しては「一般会計と特別会計を合わせた国の純支出212兆円の約1割の22兆円を主要政策の実行財源にする」とし、その具体策を提示する考えも示した。

 民主党は昨年の参院選の政権公約に、新規施策に必要な15兆3000億円の大半を、補助金の一括交付金化による無駄の排除などで捻出(ねんしゅつ)する方針を盛り込んでいた。私たちはかねて参院選の政権公約は財源の裏づけが不明確だと指摘してきた。民主党内からも財源の帳尻が合わないとの批判が出ている。

 小沢氏は早ければ10月26日にも次期衆院選の投票が行われるとの見通しを示した。選挙後に民主党を中心とする政権ができれば、来年度の予算編成は待ったなしである。財源をあいまいにしたままでは、新政権はたちまち混乱に陥るだろう。

 小沢氏が演説で、外交・安全保障政策に言及しなかったのは残念である。政権を担っても、インド洋上での給油活動に反対を続けるつもりなのだろうか。日米関係への影響が懸念されるが、反対を貫くなら、それに代わる国際貢献の対案をきちんと示してもらわなければ困る。

 菅直人代表代行、鳩山由紀夫幹事長ら党執行部は続投させる一方で、「次の内閣」の主要メンバーについては実際に政権をとった時の顔触れを近く発表する意向も表明した。話題づくりの側面もあろうが、その人選は重要だ。適材適所の布陣となることを期待したい。

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