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社説:小沢民主党 「決意」を政策で裏付けよ

 民意の審判を控えての決起大会である。民主党の臨時党大会が開かれ、小沢一郎代表の3選が承認された。小沢氏は演説で、迫る次期衆院選を政治生命を懸けた「最後の戦い」と位置付け、昨夏の参院選と同様に生活重視路線を掲げ、政権交代の実現を目指す決意を示した。

 米金融危機、年金不信、食の安全など国民の生活不安が増す中で「生活」「脱官僚」を争点としたい小沢氏の考えははっきりと示された。ただ、国民新党との合併構想の頓挫など、党運営のふらつきも一方では目立つ。やはり正攻法は政策だ。「民主党政権」で何がどう、変わるのか。月内に発表するマニフェストで、より具体的に説明しなければならない。

 自民党総裁選を翌日に控え、小沢氏は演説を「所信表明」と名づけ、対抗意識をみせた。「国政を担う覚悟がなければ政治家をやっている意味はない」と述べ、政権交代の際は自ら首相の座につく意向を表明した。「決着の時を迎えた」「日本を変えるラストチャンス」など、やや気負い気味の言葉が並んだ。次の衆院選を政治家としての決算の場と位置づける覚悟はそれなりににじみ出ていた。

 党内には自民党総裁選で存在感が埋没することへの危機感がある。汚染米への農水省のずさんな対応や、社会保険庁の年金記録改ざん問題などへの世論の批判が強まる中だ。小沢氏も生活課題や官僚主導の是正が自公政権への対立軸にふさわしいと踏んだのだろう。

 一方で、最近の小沢氏には解せない動きもある。国民新党との合併をトップダウンで進めたが暗礁に乗り上げ、断念したのもその例だ。国民新党と合併すれば旧特定郵便局などの郵政票が取り込め、候補調整も一気に進められる、との狙いがあったのだろう。組織票重視の小沢氏らしい発想だが、いかにも唐突だった。政権奪取へ手段を選ばぬ印象を残したのではないか。

 どの選挙区から小沢氏が出馬するかの問題もそうだ。地元・岩手からの「国替え」を検討し、東京都内など複数選挙区が取りざたされている。確かに実現すれば与党と対決姿勢を示す意味がある。ただ、政治的揺さぶりが主眼の陽動作戦ならば、いただけない。

 農業者への所得補償や「子ども手当」など基本政策の実現に向け、小沢氏は約22兆円の財源を確保し、3段階に分けて実現へのスケジュールをマニフェストで打ち出すと説明した。私たちが明示を求めている財源の捻出(ねんしゅつ)方法はもとより、「脱官僚」の国家像をどこまで具体的に示せるかが問われる。生活重視も参院選の焼き直しでは不十分だ。

 政権を取ったらまず何をすぐに実行するか。国民の目に見える形で示すことが肝心だ。決意表明に迫力と説得力をもたらすのは、政策の中身である。

毎日新聞 2008年9月22日 東京朝刊

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