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2008年9月22日

◎高校募集定員 「公立偏在」の解消を着実に

 石川県の全日制公立高校の二〇〇九年度募集定員は八千二百八十人となり、二学級八十 人減少した。中学卒業予定者が百三十五人減る状況を思えば、妥当な数字にも見えるが、公・私立の募集定員比率は公立72・3%、私立27・7%となおも「公立偏在」の状況にある。

 石川県は金沢市周辺に私立高校が集中している関係で、能登や加賀の公立比率が高くな らざるを得ないという事情はあるにせよ、私立はスポーツの振興や特別進学コースの設置など、カリキュラムの充実にもしのぎを削り、公立に見られない特色を持つようになってきている。公立偏在の解消を着実に進めていく必要がある。

 県内の募集定員は、団塊世代の高校進学が始まった一九六三年にピークを迎え、一万五 千人台に達した。この当時の公私比率はほぼ七対三だったといわれる。しかし、高校進学率が高まるにつれて公立高校が続々と定員増に踏み切り、公私比率は八対二まで広がった。この状態は九一年ごろまで続いたが、それでも私立が定員を満たしたのは三度しかなかった。

 公立偏在の傾向は最近になって幾分緩和されたが、九八年は公立76・7%、私立23 ・3%、〇三年は公立73・5%、私立26・5%と、その歩みは早いとはいえない。私立の少ない能登、加賀の公私比率がほぼ85対15で固定している点もネックになっている。金沢市周辺では公立64・4%、私立35・6%と、京都や東京の公立六、私立四の割合に近づいているだけに、能登、加賀の公立偏在が気になる。

 私立はカリキュラムの制約が比較的少ないこともあり、特色ある教育方針を打ち出しや すい。特にスポーツの分野では、サッカー、野球は言うに及ばず、相撲やトランポリン、飛び込み、ウエイトリフティングといった多様なスポーツで実績を上げている。

 進学先の選択肢を増やし、個性豊かで多様性のある教育機会を提供するために、私立が 果たす役割はこれからますます大きくなるだろう。公立と私立の均衡ある発展を目指して、公私比率をできるだけ早く七対三程度にまで引き上げることが望ましい。

◎「脱藩官僚の会」 春の淡雪にならぬように

 官僚のあり方に満足できず、官僚機構から飛び出した元官僚による政策集団「官僚国家 日本を変える会(脱藩官僚の会)」が設立された。旧通産省OBで、橋本内閣の首相首席秘書官に起用されて同内閣の改革を推進し、政界に転じた江田憲司衆院議員(無所属)らが発起人となって今年六月に旗揚げを宣言したものである。

 官僚から大学教授、弁護士、会社員などに転じた二十人が参加した。国会議員は江田氏 だけである。横やりなどをはねのけて春の淡雪のように消えることなく頑張ってもらいたい。

 「政治主導と言いながら結局は官僚の手のひらで躍っているだけの政治家が多い。官僚 主導の政治・行政を変えることができるのは、官僚の手の内を知る元官僚、すなわち『脱藩官僚』だ」というのが旗揚げの趣旨である。

 そのために、官僚が姑息(こそく)な手段で改革を骨抜きにしないよう、そのつど「緊 急アピール」を出すなどして警鐘を鳴らすとともに、自らが腰を据えて取り組んだ政策提言を発表するとしている。

 公務員制度や地方分権などの分野ごとにプロジェクトチームを編成し、純粋な政策集団 として歩み、霞が関に向き合って立つシンクタンクを目指すそうである。明治維新前夜に脱藩して命懸けで活躍した「草莽(そうもう)の臣」を思わせる心意気である。

 メンバーには各省庁所管の特別会計の積立・準備金―いわゆる「霞が関の埋蔵金」を自 著で白日の下にさらした財務省出身の高橋洋一東洋大教授や、小泉内閣の金融改革、郵政民営化などを推し進めた竹中平蔵元総務相の懐刀といわれた岸博幸慶応大教授らがいる。

 強固な身内意識や、長い物には巻かれよ式がまだまだ根強い日本では、グループの苦労 が目に見えるようだが、諸改革が後退しがちな現状を憂い、後退を食い止めようとするグループが官僚機構の中から生まれたことは歴史の必然と考えたい。政権掌握をめぐる与野党の駆け引きばかりではこの国はだめになる。


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