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08年大統領選挙でアメリカは何を選択しようとしているのか

ゲスト:会田弘継氏(共同通信編集委員)
会田弘継氏
会田弘継氏
 米国の大統領選挙は、民主党の候補者選びが大接戦にもつれ込み、下手をすると夏の全国党大会まで候補者が決まらない可能性が現実味を帯びてきた。メディアもオバマ対クリントンの熾烈な戦いを連日報道し、選挙戦そのものに対する関心は日本でも高まってきているようだ。
 確かに、オバマかクリントンが候補となり、11月の本選挙で共和党のマケインに勝利すれば、アメリカ史上初のアフリカ系アメリカ人大統領、もしくは女性大統領が誕生することになり、その歴史的な意味は計り知れない。2度のワシントン勤務を含め、米国の政治を長年追い続けている共同通信社の会田弘継氏は、年齢も46歳と若く政治経験も浅いながら、「包摂」や「連帯」をスローガンに掲げるオバマが、抜群の知名度を誇るヒラリー・クリントンを圧倒している現状に、アメリカ政治の新しい潮流を感じ取ると言う。アメリカは今、自分たちが黒人大統領を選ぶことができる国であることを世界に見せることで、イラク戦争後の泥沼でずたずたに踏みにじられたアメリカの誇りを再び取り戻そうとしているかのようでもある。
 しかし、オバマ対クリントンの指名争いだけに目を奪われていては、08年大統領選挙の歴史的な意味合いは見えてこない。実際、オバマとクリントンでは主張する政策には、ほとんど大きな差異は無い。
 今回の大統領選挙は、人種やジェンダーの問題を横に置いても、アメリカ政治史における大きな転換点となる可能性が高いと、会田氏は言う。
 20世紀のアメリカでは、1933年のルーズベルト政権下でのニューディール連合以降、1980年のレーガン政権誕生までほぼ半世紀にわたり、アメリカの連邦政府はリベラル色の強い民主党が支配してきた。
 80年にレーガンが保守勢力の統合に成功し、50年ぶりに本格的な保守政権の樹立に成功したが、それを引き継いだブッシュ(父)は、内政、外交ともに真性保守の政治路線からはずれたと見なされ、1期のみで民主党のビル・クリントンに政権の座を明け渡す。クリントンは新しいタイプの民主党リーダーとして、競争原理を取り込みながらも社会的弱者層にも一定の配慮をするニューリベラルなどと囃されたが、結局過度なリベラル色が保守層から嫌気され、大統領就任2年後の中間選挙で上下両院とも民主党は過半数を失ってしまう。
 実は現在のブッシュ政権は、クリントン政権時代の遺産とも呼ぶべき共和党による議会の上下両院支配の上に、ホワイトハウスをも共和党が押さえた、共和党の全面支配下での本格政権だった。共和党がホワイトハウスと上下両院を同時に押さえるのは、何と1952年のアイゼンハワー政権以来のことだった。
 再び本格的な保守政治を期待されたブッシュ誕生だったが、政権発足後間もなく9・11の同時テロによって政策面での選択肢を著しく制限されることになる。そして、ブッシュ政権は、ネオコン主導で前のめりに突っ込んでいったイラク戦争で大きくつまずき、06年の中間選挙で共和党は上下両院ともに過半数を民主党に奪われてしまう。
 そうした中、08年の大統領選挙で民主党候補が勝利すれば、クリントン以来16年ぶりにホワイトハウスと上下両院を同時に民主党が押さえることになり、久々の本格的なリベラル政権が誕生することになる。しかし同時に、冷戦後のグローバル化された現在の世界では、旧来の保守対リベラルの構図そのものも変質していると会田氏は指摘する。
 今週はアメリカの政治思想史に詳しい会田氏とともに、米国大統領選の現状を分析するとともに、米国の政治思想史の流れ中での08年選挙の位置づけと意味合いを考えてみた。

米国史上初の大統領が生まれる可能性が持つ意味

神保:オバマ氏は、今日のアメリカには厳然たる人種差別が存在すると言った。確かに人種差別は間違いなく存在していて、特に社会の末端ではそれが顕著だ。
そのような状態にあるアメリカで、アフリカ系アメリカ人のオバマ氏が大統領になったり、あるいはそれに近いところまで行ったりしたとき、アメリカの人種問題には何らかの変化は出てくるだろうか?
 
会田:オバマが勝った瞬間に人種差別が終わるということがあり得ないのは当たり前で、大統領が替わっただけで広大なアメリカの社会全体が一挙にガラッと変わることはないと思う。
 アメリカが黒人の大統領を持ち、仮に経済的な不平等が解消したとしても、人々の中にある人種に対する違和感はなかなか拭いきれないだろう。
 これからも歴史的な経緯を踏まえながら、黒人の大統領を持つという新しい形で、人種差別を乗り越える道を模索していくことになるだろう。
 
宮台:アメリカというのは昔からよく言われるように移民国家だ。移民国家というのは抽象的に言うと、絶えずマージナル(辺境の)やペリフェラル(周辺の)なゾーンやレイヤー(階層)があって、落差が必ずある故に、落差を埋めるという動機付けやその公正さがオリエンテーション(適応)として支持される。これはアメリカの強みである気がする。そのような意味で言うと、単一国家とされている日本の虚構がリアルになってしまうと、埋めるべき落差がなかなか見あたらなくなってしまう。そうすると、社会的な動機付けや正義に関わる強いコミットメントがコミュニケーションにのりにくい。

08年大統領選挙で問われているものは

神保:現ブッシュ政権では、ネオコンのアドバイスに従ってイラク戦争を始めたら泥沼化し、ブッシュ政権を苦境に陥れている。このままイラク戦争が争点になれば、次の選挙では共和党が圧倒的に不利になると思われていたところ、経済面でサブプライム問題が起きた。この問題は短期的には解決できない可能性があり、イラク戦争よりも経済問題が来る大統領選挙ではより大きな争点になりそうな気配すらある。
 しかし、そのような近視眼的な意味ではなく、何年、何十年か先になって2008年を振り返ったときに、今年の大統領選挙は何を問われた選挙ということになるのだろうか?
 
会田:いわゆる「ネオコン」の後だというのが一つある。
 住宅価格が下がるのはアメリカにとっては初めての経験で、大恐慌以来と言われているサブプライム問題に端を発する去年夏からのアメリカ経済状況は、日本のバブル崩壊と似ている。
 サブプライム問題はアメリカにとって未経験のことだが、それと同時に、ソブリンファンドの台頭などで一種の世界的な経済関係のパラダイムシフトが起きているのではないかという議論が起きている。中国やロシアという国家主義的、権威主義的な国家がエネルギーやお金を手にして大きな経済力を持ち、マーカンティリズム(重商主義)のような形で大きな力を持ち始めている。
 それで、アメリカ的な経済運営というのが世界の全てではなくて、経済的な力も弱っているのではないかという、様々なパラダイム論議が起きている。これは今度の選挙に大きな影響力を持つと思う。
 また、このような議論から離れて、単純に経済状況が悪くなるのだとすると、今の共和党政権を継承しようとしているマケイン氏は極めて弱い立場に立たざるを得なくなる。そして、92年と同じように民主党が『チェンジ』と叫ぶ形で出てくる。
 ただ、どちらにせよ、大きな経済問題に直面する中でどう立て直していくのか。やはりチャレンジだと思う。
 
神保:サブプライム問題だけを見ても、マケイン氏はベイルアウト(公的資金を使った金融機関の救済)に反対していて、むしろ問題を起こした金融機関やその責任者を厳しく追及すべきという立場だ。この伝統的な保守主義的措置に対し、一方の民主党の候補は2人ともベイルアウトを支持している。大きな政府に陥るリスクを冒してでも、政府が問題の解決に乗り出すべきだという、これもまた典型的なリベラルの立場だ。
 サブプライム問題への対応一つをとってみても、結局は「保守共和党」対「民主リベラル」といったアメリカ政治の伝統的な対立軸が今も生きているということではないか。
※各媒体に掲載された記事を原文のまま掲載しています。

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