■関連取引約3000億円 国内8大銀行、損失は最大1300億円
サブプライム(高金利型)住宅ローン問題に端を発した金融混乱はついに、経営危機に陥っていた米証券4位のリーマン・ブラザーズを破綻(はたん)に追いやり、財務力が脆弱(ぜいじゃく)とみられていた同3位のメリルリンチには米銀大手バンク・オブ・アメリカとの救済合併の道を選ばせた。
また、資金繰りに苦しむ米保険最大手のアメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)は、財務体質の改善に取り組むものの、増資の引き受け手が現れず難航している。
サブプライム関連の損失処理が重荷になっている米金融機関はリストラや資本増強で自力再建を目指すが、不良債権処理は終わっておらず、住宅市場も底を打っていない。このため、生き残りを賭けた業界再編は避けられず、合従連衡の動きは同国内にとどまらず世界規模で進むとみられる。
こうした金融不安の深刻化を受け、15日の米株式市場は急落した。この流れを引き継いだ16日の東京株式市場でも全面安の展開となり、3年2カ月ぶりの安値で引けた。アジア株も軒並み下げた。
信用不安が一段と強まる中、日米欧の中央銀行は、短期金融市場の動揺を抑えるため大量の資金供給に踏み切った。市場の沈静化に向けた協調姿勢を鮮明にすることで、“米国発の金融危機”回避をアピールした格好だ。
三菱UFJフィナンシャル・グループ(FG)など8大銀行グループが、経営破綻(はたん)した米証券大手、リーマン・ブラザーズ向け融資や同社が発行した社債、金融派生商品の保有といった関連取引が現時点で判明しているだけで3000億円規模に達していることが分かった。関連損失額も最大で約1300億円に達するもようで、リーマン向け投融資で発生する損失額の見極めを急いでいる。
ただ、国内では担保取得や保険を活用したヘッジ取引で事前に債権の保全を進めていた金融機関が多いため、業績や経営に対する影響は限定的とみられる。
三井住友フィナンシャルグループは、債権額9億8000万ドル(約1020億円)のうち、約9割を保全しており、損失額は100億円程度にとどまる見込みだ。約580億円の関連取引があるあおぞら銀行は、担保による保全などで「損失額は2500万ドル(約26億円)以下になる」と説明している。
三菱UFJFGは、傘下の三菱東京UFJ銀行と三菱UFJ信託銀行が、リーマンの発行する社債や貸し出しなどで計244億円の取引残高をもつ。りそなホールディングスも傘下のりそな銀行で貸出金が200億円に達している。
一方、みずほフィナンシャルグループは、傘下のみずほ信託銀行がリーマンの経営破綻に伴う与信関係費用を積み増すため、2008年9月中間期の最終利益予想を従来の210億円から90億円に引き下げた。直接融資はないものの、与信の回収不能が約118億円発生したため、業績の下方修正を余儀なくされた。
リーマンの破綻に伴う邦銀への直接的な影響は今のところ限定的だが、米国発の金融危機は世界規模で広がっており、「10年前の日本の金融危機より事態は深刻」(大手行幹部)。
今後、世界的な株安や景気悪化を通じて収益を圧迫する可能性もありそうだ。
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