■ 06年2月28日
1、毎日に「量的緩和早期解除、中川氏条件付き容認」「政府・与党『実を取る』」が書かれている。
「自民党の中川秀直政調会長は27日、東京都内で講演し、量的緩和政策の解除について『06年度のデフレ脱却、名目成長率2%達成の政策目標を政府・与党と共有し、必ずやっていただければ、時期は日銀の判断で結構だ』と述べ、早期解除容認論を示唆した。同時に『二度とデフレに戻らないという確信を持った説明責任を果たすことを期待する』と注文をつけた。中川氏はこれまで早期解除に慎重論を唱えてきたが、条件付きでの容認へ軌道修正した格好だ。中川氏は英国の例を挙げ、『英国では望ましい物価上昇率を決める過程で、政府と中央銀行が十二分に相談、協議をする。中央銀行はその達成を目指し、金融政策を展開している』と述べ、インフレ目標の設定が必要との認識を改めて強調した」。
「政府・与党内で日銀の量的緩和解除に対する容認論が広がってきた。景気回復が堅調な上、市場が早期解除を織り込む動きを強めていることが影響。ただ、政府・与党には、解除容認では日銀の顔を立てる代わりに、解除後の金融政策の運営で、成長加速や財政再建に配慮させようとの思惑も見え隠れする。『名を捨てて実を取る』作戦とも言え、解除をその後のゼロ金利脱却の一歩としたい日銀との認識の違いが浮き彫りになっている」。
「『政府と日銀で景気認識に大差はない。条件が整えば、日銀の判断でどうやっていただいてもいい』。与謝野馨・経済財政担当相は26日のテレビ番組でこう発言した。同相は当初から、『財政と金融政策の正常化は日本経済の最大の課題』と、日銀に理解を示す姿勢だった。消費者物価指数が安定的に前年比ゼロ%以上になることや、先行きマイナスにならないと日銀が確信すれば、いつでも解除可能との考えだ。与謝野氏は、9月に退任する小泉純一郎首相の経済政策の司令塔として『小泉政権でデフレ脱却・経済正常化宣言を行うことを任務と考えている』(関係筋)ことも発言の背景にある。この立場からは、量的緩和解除はむしろ経済正常化の証明と評価できるからだ。一方、財務省や竹中平蔵総務相、中川秀直政調会長らの容認論はそれぞれ色合いが違う。中川政調会長は27日の東京都内の講演で、『06年度のデフレ脱却と名目成長率2%達成の政策目標を共有するなら、解除の時期は日銀が判断して結構』と指摘。解除容認と引き換えにインフレ目標を導入し、超金融緩和策を相当期間続けることで、経済成長の加速に協力するよう求めた。竹中総務相も同じ立場で、ポスト小泉をにらみ、名目GDP(国内総生産)の年4%成長を目指す『上げ潮』政策に金融緩和を活用しようという狙いが透けて見える。財務省は、国債の利払い費増加につながる長期金利への悪影響を懸念。インフレ目標の導入には慎重だが、国債を大量に保有する銀行などの決算期末の3月の量的緩和解除には反対する。財務省幹部は『解除後の金融政策では、将来の消費税増税など財政再建が景気に与える影響に配慮してもらわなければならない』と強調する。同省内には『ゼロ金利から脱却し、利上げを始めるにあたっても、量的緩和政策解除の時と同じような明確な条件を求めたい』との強硬論もくすぶっている」。
私は、いままで、一貫して、「日銀は政策手段の独立性を持つが目標設定の独立性は与えられていない、といわれるが、これは、政策目標を政府と日銀が共有しておけば、政府は日常の政策手段に介入する必要はなく、それは日銀に任せておけばいいという意味である。これが政府と中央銀行の望ましい関係だ」と述べてきた。その真意は、06年度のデフレ脱却と名目成長率2%達成という政策目標を日銀が共有してくれるという前提でのものである。量的緩和解除時についてはあえてコメントしないが、日銀はその結果について責任をもってもらいたい。そして、「日銀は二度とデフレに戻らない説明責任を果たせる、透明性の高い政策目標を掲げるべき」となる。この透明性の高い政策目標とは、具体的には「望ましい物価上昇率を示す数値目標」となる。しかし、日銀内では、目安の必要性は認めるが、数値目標は機動性を縛る故、メッセージ方式が大勢を占めているという。しかし、このメッセージ方式はOECDの先進諸国では日米のみであり、他はインフレ目標、インフレ参照値が金融政策の手法である。しかも、その米国でもバーナンキ新議長によってインフレ目標導入の動きがある。理由は、グリーンスパン前議長のカリスマ性に依存することが大きかったメッセージ方式であったが、そのカリスマがいなくなったのだから、透明性の高い「数値」目標がベターであるとの判断であるという。まして、日本においては、「グリーンスパン」はいないのだから、数値目標こそが、OECD先進諸国の成功例として、より市場の信頼を得るベターな金融政策の手法だと思うが。(2月28日記)