「うちは被害者」「公表は業者に『死ね』ということ」--。米卸売加工会社「三笠フーズ」(大阪市)の事故米転売問題で、農林水産省が汚染米の流通先を公表したことに対し、九州の和菓子メーカーからは大きな反発の声が上がった。中には宮崎62社、熊本33社、鹿児島12社の南九州3県計107社の和菓子メーカーが含まれ、その多くは家族経営の中小零細企業。ほとんどの会社が祝い用やお盆用の型菓子「らくがん」の原料として使っていたという。【川島紘一、和田大典、塩満温】
公表リストに載った鹿児島県鹿屋市の和菓子店は、熊本県の製粉会社から「らくがん粉」36キロを仕入れ、うち30キロから「らくがん」約300個を製造販売した。残り6キロは問題発覚後、県の指示で廃棄したという。同店の会長(77)は「事故米と全然知らずに買った。農水省がきちんと検査しておれば、こんな問題は起きないはずだ」と憤った。
やはりリストに載った鹿児島市の和菓子店店主(66)は農水省の公表について「『死ね』と言うこと。自分たちのチェックの甘さを棚に上げ、いつもはしない零細業者の公表を今回だけするのは選挙があるからだ」と、政府の対応に怒りを爆発させた。約250の和菓子店などで構成する鹿児島県菓子工業組合は「名指しされたのは家族経営の小さな店ばかり。和菓子全体に風評被害が出ないか懸念している」と心配する。
夫婦で38年間、名物のクリームケーキを中心に和洋菓子を作ってきた宮崎県日南市の和洋菓子店オーナー、桑原健二さん(60)は「卸業者が数日前に来て全部回収していったので『よもや』と思っていたが」とがっくり。「隠すつもりは毛頭ないが、公表前にどれだけ有害成分が含まれ、人体に影響があるのかないのかを明らかにしてほしかった。国のやり方は弱い者いじめと同じだ」と語った。
同県内では二つの外食店でも事故米流通が判明。その一つ、野尻町の店主(67)は「40年以上やっているがこんなこと初めて。もう店をたたもうかと考えている」と声を震わせた。
熊本市の主婦(65)は「政府が事故米を売り出したこと自体が問題。あんなにたくさんの米を使うほど、のりが必要だったとは思えない」と話した。
毎日新聞 2008年9月17日 西部朝刊