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2008年9月21日

◎全国学力テスト結果 対策と合わせ積極的に公表を

 二回目となった全国学力テストで、市町村別の結果を公表する自治体が石川、富山県内 で早くも固定化する傾向が見えるのは残念なことである。石川県は金沢市に続き白山市が今月中に公表を予定し、富山県は富山市、南砺市が公表済みだが、両県とも昨年と同じ自治体である。

 八月末に文部科学省が都道府県別データを発表後、全国的に知事が市町村教委に結果公 表を求める動きが出ている。公表するか否かで予算に差をつけるというのは言い過ぎとしても、自治体が保護者や地域住民への説明責任を果たすため結果を明らかにすべきという主張は筋が通っている。

 石川、富山県内の市町村教委では、公表に関して「学校の序列化や過度の競争を招く」 という画一的な受け止め方がみられるが、仮に市町村に序列がついたとしても、それほど問題があるとは思えない。むしろ、成績の低かった自治体にとっては、公表によって学校現場に奮起を促し、各家庭に問題意識を共有してもらう効果の方が大きいのではないか。

 二年間分の成績データが得られたことで教委も地域の実情に照らした分析や対策ができ るだろう。九月議会でテスト結果を尋ねる質問が相次いでいるが、各教委は具体的な改善策と合わせ、積極的に結果の公表を検討してほしい。

 文科省は都道府県が市町村別データ、市町村が学校別データを公表しないよう求めてい る。市町村が自らの全体データを公表することは各自の判断に委ねられているが、公表自治体は自分たちの位置づけがより明確になることを積極的に評価しているようだ。たとえば南砺市では、今年の中三の国語Bは全国トップの福井県より正答率が高かった。県別の平均値からは見えてこない結果であり、関係者にとっては大きな励みとなろう。

 全国学力テストに関しては、小六と中三の全員を対象に毎年やる意味がないとの批判も 出ている。だが、テストを機に授業改善の取り組みが活発化したことを考えれば、わずか二回の実施で決めつけるのは早計である。学校現場に常に刺激を与えるという点でも、毎年実施する意味はあるだろう。

◎郵政民営化見直し 今さら時計の針は戻せぬ

 民主党の小沢一郎代表と国民新党の綿貫民輔代表が、郵政民営化の見直しで一致した。 その合意に基づく両党の合併協議はご破算になったが、そもそも郵政民営化に今さら待ったを掛ける主張に国民の支持が広がるとは思えない。

 郵政民営化は前回の衆院選で決着したことである。多数の国民意思に基づいて国会で決 めたことを認めず、時計の針を戻すようなことは社会を混乱させ、その発展を妨げるだけであろう。既に動き出した郵政民営化にもし不都合な点があれば改善し、「より良い民営化」を目指すのが筋であり、政治の務めではないか。

 民主党と国民新党の合併が見送られたのは、合併方式で折り合いがつかなかったためと いわれるが、もともと郵政民営化見直しを前提にした両党の合併には疑問が残る。郵政民営化に反対の議員ばかりの国民新党に対して、民主党には民営化自体に賛成の議員が多くおり、実際、前原誠司副代表は「民営化の見直しが民主党の考え方と本当に合うのか」と安易な合併にくぎを刺している。一方、国民新党の側にも民主党の真意をいぶかる声が聞かれる。

 政権獲得や生き残り戦略として離合集散を繰り返すのが政党政治の常とはいえ、「政策 ・理念の一致」という本来あるべき姿からみると、両党の合併は現状では無理があると言わざるを得ない。

 小沢、綿貫両代表が調印した郵政民営化見直しの合意文書は、二〇一七年までに全株式 の処分が定められている「ゆうちょ銀行」と「かんぽ生命保険」、その持ち株会社である「日本郵政」の株式売却を凍結し、民営化を抜本的に再検討するという内容である。株式売却による完全民営化を止め、政府関与の下で郵政事業を一体的に行う狙いであろう。

 しかし、郵政民営化は「官から民へ」「小さな政府づくり」という時代の流れに沿うも のであり、官営の郵貯・簡保資金が特殊法人事業などに流れて無駄を生む構造を改めるなど、大きな改革の出発点であることを特に民主党は忘れないでもらいたい。


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