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2008年9月21日

 作家の村松友視さんの描く世界は、邦楽や落語の古典から、プロレスや野球などスポーツまで幅広く、人間臭い物語が展開されるのが魅力である

昨年末に「金沢おどり」に新作「金沢風雅」を作詞したのも記憶に新しいが、現在はヤンキースの松井選手の活躍を追う「七割の憂鬱―松井秀喜とは何か」を月刊「本の窓」(小学館)に連載している

一流の技には共通するものがある。例えば人体は、動きを止めた一瞬の立ち姿が最もきれいと言われる。好調時の松井選手の打席がそれで、ぴたりと止まった次の瞬間ガツンと一発が出る。踊りの名手も、舞う前の動きを止めた一瞬の姿に力量がにじむ

村松さんが困ったのは、連載の途中で松井選手に故障が起きたことだった。手術すべきか、それとも治療しながらチームに貢献するべきか。「まるで時が止まってしまっていたようだ…」と村松さんの心は松井本人のように揺れ動くのだった

ようやく松井選手の手術も決まって一安心だろう。「金沢風雅」も初舞台を迎え、村松さんの二つの世界が全開する。月刊誌の連載も力強く再開されるに違いない。


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