農家の人がスーパーなどで野菜や果物の値段を見ると、いつも驚くという。出荷価格の五倍から十倍もの値がついていることがあるからだ。
日本の食料品は高いというのが通り相場になっている。理由は国土が狭く農家の生産規模が小さいため、低コスト化が難しいからとされてきた。だが、それだけではないとする人は多い。
安達生恒著「日本の農産物が異常に高い理由」によると、日本農業の特徴は高価格、低所得で、原因の一つは流通コストがかさむためという。それを裏付けるような実態が、あらためて表面化した。
カビ毒や農薬に汚染された事故米の不正転売問題である。こんなコメが出回っていた現実にあ然としたが、流通ルートの複雑さにも驚かされた。まだ全容は明らかになっていないが、たくさんの米穀店や仲介業者などが流通にかかわっているようだ。
転売の度に手数料が積み重なり、高くなっていく構図が見て取れる。流通ルートの複雑さは、多くの農産物に共通する問題とされる。事故米への不適切な対応で太田誠一農相らが辞任する事態に発展したが、内在する別の問題も忘れてはならない。
流通ルートの簡素化が必要だ。消費者には少しでも安い価格、生産者には少しでも多くの収入につながるような流通改革が早急に求められる。