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「アフガンから逃げるな」外交評論家・岡本行夫氏 (2/5ページ)
8月23日、貨物船「AIZU(あいづ)」の前に現れた不審船は、6キロに近づいたところで2隻の高速艇を降ろし襲撃を開始した。「AIZU」は何発も被弾しながら、多国籍艦隊へ非常信号を発信、襲撃母船はその通信を妨害し続けたが、結局1時間で去った。救難信号受信後、ヘリを含め多国籍艦隊の救援が到着するのが平均1時間後だからだ。
そのほかにも、詳細は公表されていないが、昨年10月から「ゴールデンノリ」「ケミスタームーン」「ステラマリス」「アイリーン」というケミカルタンカーや貨物船が襲われた。その中には今なお捕らわれている船もある。
以上の事案は日本関係船舶についてのみのものだ。全体ではおびただしい数の船が襲われている。報道されないが、襲撃者たちに拿捕(だほ)された船は今年だけで18隻。今も捕らわれている船員は合計130人以上にのぼる。
「テロの圏外」許されぬ
海上自衛隊の補給艦は、多国籍艦隊の軍艦がいちいちペルシャ湾まで燃料補給に戻らなくて済むようにソマリア沖で洋上給油を続けている。安全ではあるが、高度な技術のいる仕事である。海上自衛隊の仕事ぶりは各国に称賛され、感謝されている。
「高山」の救助に向かった「エムデン」も海上自衛隊の補給艦「おうみ」から燃料を補給されていた。多国籍艦隊は8月25日、ソマリア沖をMSPA(海上パトロール区域)に指定し、商船隊の防護体制を強化した。ドイツやデンマークなどは商船保護のための海軍増派を検討中と聞く。
小沢一郎氏はソマリア沖で活動する多国籍艦隊への給油活動は憲法違反だから中止せよと主張する。与党は衆議院での3分の2の再可決によってようやく補給艦をソマリア沖に戻したが、野党は再びの撤退を主張している。
そうした撤退要求を聞いてテロリストや襲撃者たちはホッとするだろう。武力行使とは無縁の補給活動がどうして集団自衛権の行使なのか不可解だが、その前に小沢氏は、襲撃される日本関係船舶の人々に「オレたちは多国籍艦隊への支援を阻止するがオマエたちは多国籍艦隊に助けてもらえ」と言えるのだろうか。
コトは、日本人が世界で肩身が狭くなるだけで済む話ではない。日本国家の在り方にかかわる問題である。自分は国際互助会からは抜けるが果実だけは食わせろ、というわけだ。危険はすべてほかの国が負担して日本人も安全に暮らせる世界を作ってくれと。
いつからこんな国になってしまったのか。
破壊的
国際社会はテロに30年以上対決してきたが、9・11テロは防げなかった。その後も、欧州やアジアで一般人を標的とするテロが続いている。なぜか。近年のテロリストたちが、組織力と資金力を強化したうえ情報通信技術を多用し、破壊力を増しているからだ。教義も先鋭化している。ウサマ・ビンラーディンたちの目標は、文明社会自体の破壊にある。日本の好きな「平和的解決」になじむものではない。今も日本はウサマ・ビンラーディンの標的リストの中に入れられている。
守る側は結局テロの根拠地に入っていかざるを得なくなった。それが世界のアヘンの93%を製造しアルカーイダとタリバンの拠点となっているアフガニスタンだ。テロはそこから発し、アジアに広がっている。もう一つのテロリストの温床が、無政府状態のアフリカ東部のソマリアだ。