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潜在患者3万人 混入隠蔽も 中国粉ミルク事件
【北京=野口東秀】中国で粉ミルクから有害物質のメラミンが検出された事件での被害は今後、さらに拡大しそうだ。「(メラミンによる)腎臓結石発症の可能性のある潜在患者数は3万人になる」(新華社通信・電子版)との推計もあり、中国国内各地の病院では親に抱かれて検査に訪れる乳幼児が絶えない。粉ミルクのほか、牛乳や他の乳製品、輸出向け加工品からもメラミンが検出されており、中国の食の安全問題は海外にも飛び火している。
事件による被害は20日の時点で、死者5人、患者数6000人以上。中国の粉ミルクメーカーの2割にあたる22社の製品からメラミンが検出された。市民の間では国産乳製品への不信感が高まっており、全国各地で店頭から問題メーカーの粉ミルクが撤去され、コーヒーチェーン店などでは問題企業の牛乳の使用を中止する動きが出ている。広東省では「100%外資製造の粉ミルクはないか」と、消費者が香港にまで買い出しに向かう現象も起きている。
業界最大手までが危険かつずさんな生産をしていたことが露呈し、国民の間には、「表面化していない汚染食品がまだあるはずだ」という疑念と恐怖感が、にわかに広がっている。メラミン入り粉ミルクによる被害乳児の親の間では、すでに被害者組織をつくる動きが出てきており、事件による被害者が今後、大幅に増えた場合、中国建国以来、最大の集団訴訟に発展する可能性もある。
中国から海外に輸出された乳製品や加工品からのメラミン検出も続々と伝えられている。シンガポールでは中国から輸入した乳製品から、香港では中国を代表する大手メーカー「伊利」のアイス菓子など8製品からメラミンが検出。韓国では、中国産と韓国産を混ぜてつくった養殖魚のエサからメラミンが出たとの情報がある。
内外で不安が高まる中、中国当局は事件に関係した業者などの18人を逮捕している。逮捕された業者の男は、公安当局の取り調べに対し、「飲んだらどうなるか考えなかった。自分の家族には飲ませていない」と供述したという。
中国紙によると、事件で会長が拘束された「三鹿集団」がある河北省の楊崇勇副省長は、メラミン混入の不正は2005年4月から行われていたと話している。当局者の証言などから、メラミン混入は「業界内で“暗黙のルール”になっていた」(中国紙・新京報)との疑念が起こっている。また、地方政府も隠蔽(いんぺい)にからんでいたのではないかとの疑問も浮上している。
「三鹿」に3月に消費者からクレームが相次いだが、当局に報告せず、報告は五輪開幕(8月8日)直前の同月1、2日ごろとされる。「三鹿」に出資しているニュージーランドの企業が8月に混入の情報を知り、「三鹿」に早期回収を求め、地元当局に対応を要請したが、動こうとしなかったという。