1800万アクセス御礼
ポッドキャスト「町山智浩のアメリカ映画特電」は毎週木曜日更新です!
「ポッドキャストが聴けない」という方は、
右クリックで「対象をファイルに保存」を選べばMP3ファイルがダウンロードできます!
TBSラジオ毎週火曜日午後2時「コラムの花道」に生出演しています。
ポッドキャスティングでも聴けます。バックナンバーもあります!
2008-09-20 売春窟に生まれついて→未来を写した子どもたち
3年前からブログやラジオや雑誌で何度も紹介したり、各映画会社に「配給してよ」とDVDを押し付けたりして回ってきたアカデミー長編ドキュメンタリー部門受賞作『売春窟に生まれついて』ですが、
やっと、やっと、『未来を写した子どもたち』の邦題で11月から日本公開されることになりました。
こういう映画がなかなか公開されなくて、ケータイ小説映画とかアキモトコー映画とか手塚治虫や黒澤明の墓泥棒みたいな百害あって一利なし映画ばかりが劇場を支配している日本の映画界現状ってなー。
もうひとつ。
『未来を写した子どもたち』とは直接、何も関係ないけどさ、ムカつくから言わせてくれ。
この映画はアカデミー賞まで獲ってるし、アメリカではDVDまで出てるのに、配給会社が決まるまで、日本の映画評論家は誰一人として話題にしなかった。
文芸評論家だったら、普通、芥川賞受賞作品には目くらい通すだろう。
あんたら、試写室でタダで見せてもらえる映画以外は観ないのか?
『ホテル・ルワンダ』のときも、『ホットファズ』のときもそうだった。
配給会社が試写をやるまで、誰も見やしないのだ。英語版のDVD出てるのに。
徹底的に受身。
日本で映画評論家とか映画ライターとか称してる連中には、日本の映画会社が配給する映画をタダで試写室で観せてもらって、ちまちました感想文書いてるだけのが多すぎる。
評論家といいながら、映画観ただけの印象批評ばかり垂れ流して、自分で資料を調べようともしないし、過去の関連作品を探して観ようともしない、作り手に直接会って質問しようともしない、撮影や編集の現場は経験したこともない、カメラの仕組みも知らない、シナリオやコンテも勉強したことがない、映画は観るが、歴史や政治や経済のことはこれっぽちも知らない安楽椅子ライターが山ほどいる。
だから、アメリカが善意からタリバンを育ててしまった愚行を皮肉ったブラック・コメディ「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」を観ても「アメリカ万歳の映画だ」などと正反対のことを堂々と「TVブロス」に書いちまうし、「エデンより彼方に」を観てもダグラス・サークのパスティーシュだと気づかないし、シャマランの映画がパクリだとも知らず、今のハリウッド映画がどういう金の流れで作られているのかもまるで知らないんだよ。
「評論」家といっても、資料の読み込みと調査と考察と仮説と検証と独自の結論が必要な「論文」など一回も書いたこともなく、一生に一度も後世にも読み継がれる本を著すこともなく、雑誌にクズみたいな感想をちまちま書き散らして小銭を稼いで、誰にも惜しまれず、誰にも影響を与えることなく死んでいく。
その人生に意味はあるのか?
何のために生まれてきたんだ?
ただの寄生虫だ!
そもそも現在の映画ライターは、漫画家や小説家、エッセイストと違い、競争と無縁の存在だ。
雑誌でも読者アンケートによって淘汰される対象にならない。
ファンを持っていなくても、編集者と知り合いであれば仕事がもらえるという、コネだけで生きている職業なのだ。
現在、書き手の名前で読者を呼べる映画評論家、読者を映画館に誘うことができる映画評論家は数えるほどしかいなくなってしまった。
ほとんどの読者は映画コラムの書き手なんぞ、これっぽちも意識しちゃいない。
その質なんか誰も問題にしない。
人気があろうがなかろうが問題にならない。
早い話、編集者とのつながりさえあれば仕事がもらえる。
批評はするけど、その批評は誰にも批評されない。
何を書いたところで、反応はせいぜい映画会社の宣伝マンから「扱ってくれてありがとうございます」と挨拶されるていど。
誰も動かせない、誰も感動させられない。
のれんに腕押し、ぬかに釘!
そんな、手ごたえのない仕事、いくらやってても空しくないか?
だったら、今すぐ、意味のない試写室通いをやめろ。
基礎もできてないのにいくら数見たって意味ないんだ
過去の大事な作品を観て、それについて考えてから、それについて書かれた文献を読んで自分の映画を観る目を切磋琢磨しろ。
誰でも最初は、独りよがりな解釈をしたりするものなのだが、優れた批評や作り手自身の言葉とつきあわせて自分の批評を添削するうちに、だんだんと映画の見方が上達していくものだ。
それから、誰にもマネできない独自のテーマ、独自の視点、独自のタッチを確立しなければならない。
単に文体でなく、中身のオリジナリティだ。
レトリックなんてクソの役にも立ちゃしないのだ!
それを真剣にやってたら試写室通いなんかしてる暇はないはずだ。
何もわからない人間がいくら一人で考えたって、感想以上のものは絶対に出てこないんだ
そんな感想に商品としての価値があるか?
だって、感想なんかガキだって持てるんだぜ!
そして、試写室では観られない映画を探すんだ
宝を探してみんなに教えることが、評論家の最も基本的な存在意義なんだから
与えられた映画だけ観てるんじゃねえよ
ブロイラーじゃないんだから、自分で映画を見つけ出せよ!
2008-09-18 ポッドキャスト「みんなのトラウマ映画特集」
↓毎週木曜日更新ポッドキャスト「町山智浩のアメリカ映画特電」、
http://www.enterjam.com/tokuden.html
今週はリスナーの皆さんから寄せられた「思い出そうとしても忘れられないトラウマ映画」特集です。
右の写真は山口直美さんからのお問い合わせの「整形美女の復讐/二つの顔を持つ女」のDVDです。
その映像
↓新居さんからのお問い合わせの映画『顔のない悪魔』の映像です。
↓オールド・シックス・サウザンドさんからの問い合わせ『ラスト・カーチェイス』のクライマックス
他にも何人かのお問い合わせにお答えしています!
2008-09-15 MILF! サラ・ペイリン旋風!
TBSラジオ「ストリーム」毎週火曜日午後2時からの「コラムの花道」、
今日は、共和党の副大統領候補に指名されて以来、大人気のサラ・ペイリンさんについて話します。
↓先週土曜日に放送されたサタデーナイト・ライブでのペイリン(ティナ・フェイ)とヒラリー(エイミー・ポーラー)。
このコントでペイリンが言ってる「フォトショップで作った私のビキニ姿」は右上。
で、ペイリンは「私をMILFって呼ばないで」とも言ってるんだけど、MILFとは……。
詳しくは放送で!
ペイリンさんの旦那さんはFirst Dudeと呼ばれてます。
DudeにはSlacker(定職につかずにブラブラしている男)という意味もあるけど、この場合のDudeは「色男」という感じのホメ言葉(ちょっと揶揄的だけど)ですよ、小西さん!
2008-09-11 『イントゥ・ザ・ワイルド』と『北国の帝王』
毎週木曜日更新ポッドキャスト「町山智浩のアメリカ映画特電」、
http://www.enterjam.com/tokuden.html
今週は、現在日本公開中の映画『イントゥ・ザ・ワイルド』にちなんで、
ロバート・アルドリッチ監督『北国の帝王』(73年)について話します。
『イントゥ・ザ・ワイルド』は、何もかも捨ててアメリカを放浪し、アラスカで死んだ青年クリス・マキャンドレスについての映画ですが、
マキャンドレスはジャック・ロンドンの『放浪記The Road』に憧れて放浪を始めました。
ジャック・ロンドンは18歳の頃にホーボーとしてアメリカ各地を放浪しましたが、
彼に鉄道の無賃乗車の仕方などのホーボーとしてのサバイバル・テクニックを教えたのが4歳年上のレオン・レイ・リビングストンという放浪作家でした。
リビングストンは放浪生活の知恵やホーボーの生活を次々と本にまとめ、当時の人気作家になりましたが、豊かになっても放浪を続けたといわれています。
リビングストンはホーボーたちから尊敬を込めて、「ホーボーの帝王」、「ナンバーワン」と呼ばれていました。
この『北国の帝王』という映画は、リビングストンの本を元に、
オレゴンの森林鉄道で、誰も無賃乗車させないと言われた鬼車掌(アーネスト・ボーグナイン)と、
彼に挑戦して無賃乗車することを宣言したナンバーワン(リー・マービン)の激しい死闘を描いた感動のバイオレンス・アクションです。
2008-09-09 スーパー・ハイ・ミー 30日間マリファナ漬け実験
本日のTBSラジオ「ストリーム!」コラムの花道は「スーパー・ハイ・ミー」というドキュメンタリー映画の話です。
http://tbs954.cocolog-nifty.com/st/
『スーパー・ハイ・ミー』は、30日間朝昼晩マクドナルドだけで食事をし続ける実験ドキュメンタリー『スーパー・サイズ・ミー』に触発された映画。
コメディアン、ダグ・ベンソンが30日間朝から晩までマリファナを吸い続けて人体に異常が出るかを実験する。
2008-09-05 バカなアメリカ人ベスト5
http://ameblo.jp/rankingtogetill/entry-10132203378.html
↑ユーザロックさん司会のネット番組Ranking To Get ILLに出演した時のビデオがUPされてました。
2008-09-04 メルギブの『アポカリプト』は『裸のジャングル』のパクリ
毎週木曜日更新(一日遅れました)ポッドキャスト「町山智浩のアメリカ映画特電」、今週は先週の続きで「人間狩り」映画の傑作『裸のジャングル』について話します。
http://www.enterjam.com/tokuden.html
↑今回のポッドキャストは40分を越える大作です。
週末にでものんびり聴いてください。
いっきにしゃべってるので口が滑って「レオポルド王はオランダの王様」などと言っていますが、
ベルギーの間違いです。来週には修正しておきます。
19世紀アフリカ、象牙狩りにきた白人ハンターとそのガイドが地元原住民の土地を侵し、無断で象を乱獲したために、原住民を怒らせ、彼らに襲撃されて拉致、拷問される。
ところがなぜかガイドだけは、「お前は逃げていいよ」と解放される。
実は、それは恐怖の人間狩りゲームの始まりだった!
厳しい大自然、襲いかかる猛獣、勇敢で手練れの追っ手たち。
君は生き延びることができるか?
製作監督主演のコーネル・ワイルドはアクション俳優からムービーメイカーに転向した
イーストウッドやメルギブのような俳優兼監督の先駆者だ。
そう、メルギブの『アポカリプト』は、この『裸のジャングル』のほとんどリメイクなのだ!
↓この予告編で、人間狩りゲームが始まってすぐに、投げられた槍をつかんだコーネル・ワイルドが追っ手を刺し殺すシーンがあるが、これは『アポカリプト』でそっくりそのまま完コピされている。
ちょこっとメルギブの功績を認めておくと、「裸のジャングル」はもともとアメリカ原住民の風習である「ガントレット」をアフリカ原住民のものとして描いたが、「アポカリプト」で再びアメリカ原住民に戻したということかな。
ただ、『アポカリプト』は人間というものの残虐さを告発して終わっているが、この『裸のジャングル』は残虐さを描いて、さらにその先にまで到達しているのである。