馬英九・台湾総統
【台北=野嶋剛】台湾の馬英九(マー・インチウ)総統は19日、在台日本メディアと会見し、日台関係を「特別なパートナーシップ」と形容して重視する考えを示し、6月の尖閣諸島(台湾名・釣魚台)海域での遊漁船沈没事件でこじれた日台関係の修復に強い意欲を見せた。今後、同諸島海域で未解決の漁業問題の処理や相互に若者の就労を認めるワーキングホリデーの導入などを早急に進める考えを明らかにした。
馬総統は、観光などで相互の人的往来が年間計250万人を超え、貿易も活発なことから「我々と日本は外交関係こそないが実質的関係は非常に密接だ」と指摘。「特別なパートナーシップ」の強化策として、ワーキングホリデー、投資協定、知的財産保護協定、環境協力などを挙げ、安全保障問題でも日台間の協力に期待感を示した。
尖閣諸島問題では台湾の強硬な態度が日本政府の反発を招き、馬政権の「反日」姿勢が際立った。会見で馬総統は「困難な状況を避けるため、立場の違いがある主権問題は脇に置き、資源を共有する姿勢で解決を目指すことが双方の利益だ」と述べ、今後は自制し、漁業問題の解決を優先する姿勢を示した。
総統就任後、急ピッチで対中関係の改善を進めていることについては「中台の緊張緩和は日本の利益にも合致する。日本は台湾海峡の戦争を心配しなくてもよい」と日本への配慮をにじませた。
会見には月末に着任する馮寄台・新駐日代表(大使)も同席。馬氏は「外交官やメディアで豊富な経験があり、幼少時には日本で暮らしたこともある。優れたパイプ役になるはずだ」と期待を示した。