汚染米不正転売問題で、汚染米を使用した商品の回収に追われる焼酎や和菓子などの製造・販売業者を救済するため、政府は20日、事実関係を知らずに購入した業者の回収費用について、国が負担する方針を固めた。ほとんどの業者が事情を知らずに購入したとみられていることから、回収費用は100億~200億円と見込まれており、08年度予算の予備費で対応する。
農林水産省は16日、一連の問題のうち三笠フーズ(大阪市北区)からの汚染米流通先として24都府県、375の業者・施設名を公表した。政府は「消費者重視の立場」として公表の正当性を主張するが、業者側からは「検査を怠った農水省の責任を棚上げしたものだ」と批判が続出。鹿児島県酒造協同組合が「農水省の検査不備で商品が流通し、風評被害を受けた」として、国に対する損害賠償請求訴訟を検討している。
こうした動きを受けて、政府は「このままでは賠償請求訴訟が相次ぐ」(政府高官)と判断。関係業者に経営体力に乏しい中小企業が多いことも考慮し、回収費用を国で負担することを決めた。
政府は、22日に発表する汚染米問題の対応策に、国の回収費用負担を盛り込む。さらに廃棄費用の負担のあり方などについても具体的な検討を進める。
回収費用については臨時国会に提出予定の08年度補正予算案での計上も検討したが、衆院解散・総選挙をにらみ補正予算の成立が流動化していることを踏まえ、閣議決定で対応できる予備費を活用することになった。
01年にBSE(牛海綿状脳症)問題で、検査をしていない国産牛肉の在庫の買い上げや焼却などの処分費用を国で負担したことがあり、政府はこの事例を参考に検討を進めてきた。【坂口裕彦】
毎日新聞 2008年9月20日 15時00分(最終更新 9月20日 15時54分)