佐賀市の路上で昨年9月25日、知的障害者の安永健太さん=当時(25)=が警察官5人に取り押さえられた直後に死亡した問題で、発生1年を間近に控えた19日、遺族と県警がそれぞれ同市で記者会見した。健太さんの父孝行さん(47)は「1年がたつが、(死亡の真相は)何も明らかになっていない」と憤った。
遺族や支援する市民団体は発生当初から、「自転車で停車中のミニバイクに追突し、逃げようとするなど挙動不審だったので駆け付けた警察官が取り押さえた。対処は適正だった」とする県警の説明に疑問を持ち、現場近くなどに目撃情報の提供を求める看板を設置するなどしてきた。
取り押さえにかかわった警察官5人の起訴を佐賀地検が見送ったことを受け、佐賀地裁に付審判請求をしている孝行さんは会見で「警察と(警察官が暴行したとする)目撃者の話は食い違っている。真相を明らかにしてほしい」と語気を強めた。
会見に同席した市民団体のメンバーは、付審判請求を認めるよう求めた署名が8万人に上っていることを紹介。孝行さんは「力添えはうれしい」と話した。
一方、県警の伊藤智本部長は同日の定例会見で「健太さんの死を悼んでいる」とコメント。障害者への理解を深めるために若手警察官を対象に以前から取り組んできた知的障害者入所施設での体験研修に、県内各署の教養担当者を今年初めて参加させたことなど再発防止策も公表した。
=2008/09/20付 西日本新聞朝刊=