厚生労働省は、1日当たりの医療費が定額のDPC(入院費包括払い)病院に、収入を保証する目的で設定している「調整係数」を10年度から段階的に廃止する。代わりに地域の開業医と連携し、退院患者のケアを引き受けてもらうなどの役割分担を進めて入院日数を短くした病院が増収となる新係数をつくる。病院の再編・淘汰(とうた)を進め、医療費削減につなげるのが狙いだ。
DPCは1日当たりの医療費を定額とし、患者に必要以上の注射や検査をしても病院の収入が増えないようにする制度。医療費削減のため03年に始まり、全国約9000病院の16%に当たる1428病院が導入(準備中も含む)している。
ただ、収入が前年度を下回らないよう報酬をさじ加減する調整係数が病院ごとに設定されている。初年度にDPCを取り入れた病院は、導入前より平均3%収入が増えた。調整係数のおかげで増収となっている病院も多く、厚労相の諮問機関、中央社会保険医療協議会でも「国民の理解を得られない」との指摘が出たことから廃止に踏み切ることにした。
しかし、調整係数を一気に廃止すれば「多くの病院がつぶれる」(厚労省幹部)ため、段階的に縮小するとともに新しい評価に基づく係数を設ける。「地域での機能分化と連携」に積極的な病院は収入が増え、消極的な病院は淘汰されるよう促す。【吉田啓志】
病気の種類ごとに、1日当たりの入院医療費が決まっている制度。従来は治療行為が増えれば医療費も高くなる出来高制が基本だったが、過剰診療を防ぐため03年、国立病院など82病院で先行導入された。入院が長くなれば1日の単価は安くなる。単価に入院日数をかけ、出来高払いの手術代などを加えたものが総入院費となる。
毎日新聞 2008年9月20日 2時30分