――掲載誌の事情もあり、描きたい物を描くと読者に受けない、と思っていたという新條先生。今回の読切『アップル!』についてはいかがでしたか?
新條:描きたい物を描くと言っても、今までのこともあって、雑誌に合わせるクセがあるんですね。実は、SQ.に描かせていただくことになった時も、編集の方に「じゃ、何を描いて欲しいんですか? どういうのをお望みですか?」と聞いてしまったんです。でも、SQ.編集部の方は、いやいや好きな物を描いて下さいと。そうは言っても、今の自分ではSQ.に合わせて描くことは難しいし、描いてもつまらないものになるだろうと思ったので、今描きたいと思っていたネタを2つ提示させていただいて、その内の1つが、今回の『アップル!』なんです。
――本誌のインタビューにもありますが、『アップル!』は、ジャンルとしてはギャグ漫画なんでしょうか?(笑)
新條:そのつもりでした(笑)。男の子の読者の多い漫画誌だったら、恋愛部分はあんまり必要じゃなくて、アホみたいなギャグでどんどん展開していけばいいのかなって思っていたんですよ。でも、やっぱりその辺もちゃんと描かないとダメだって気づいて。若干エピソードを追加しました。
――構想時はどんなイメージだったんですか?
新條:フランソワオブ・ジョイトイのギャグと、鈴五郎が喜和子に「お前だけはそんな言い方するな!!」って言うシーンだけは決まっていました。あと、おおまかなストーリーは。それでも、ネームに5日かかっちゃいました。いつもは3日くらいでできるんですが。
――早いですよ、それは!
新條:月2回の雑誌で描いていたので。ネームって、さらっと描けないとダメなんですよ。勢いでが――っと描いて、一日かけて直す、みたいな感じで。だから最初は絵は入ってないんです。ネームとコマだけ。でも、頭の中には3Dの映像があるんですよ。それを紙に――2Dに直す時に苦労しますね。2Dならではの面白さが出るならと、その時点でエピソードを変えることもあります。今回は、描く内容は決まっていたんですが、やっぱり男の子が読んで面白いのかって考えると、ネームがピタッて止まっちゃったりして、2日間くらいぼんやりしてしまって…。
――今までは、男性読者を意識する必要は無かったでしょうしね。
新條:そうですね。男の子が主人公なのも珍しいです。少女誌でも一回だけやったことがありますが。
――主人公の性別を対象読者の性別に合わせるのはセオリーですが、少女誌の方がややその傾向が強いように思います。
新條:少女マンガはやっぱり主人公に感情移入させないといけないので、その傾向はありますね。でも、男の子が主人公の少女マンガも、最近はまた増えてきているんじゃないでしょうか。昔は女の子女の子したタイプが多かったですけど、今は男の子っぽい女の子も増えたし、女性の性を否定するようなところがありますよね。BL(ボーイズラブ)も流行ってるし(笑)。そういう意味で、別に主人公に感情移入させる必要もないんじゃないかなって思ったりします。今の少女マンガは。
第2回へ続く
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