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オーストラリアの3カ所に生息するサンゴ礁で、数百もの新種の海洋生物が見つかった。中でも軟質サンゴ(ソフトコーラル)の仲間は新たに150種類も発見されたという。ほかにも、エビ、海洋虫、海を掃除する甲殻類、鮮やかな色合いの軟質サンゴなど、さまざまな未知の生物の存在が確認されている。
今回の調査は、オーストラリア海洋科学研究所(AIMS)が主導し、10年にわたって世界中の海洋の多様性を探る海洋生物調査の一環として行われた。オーストラリア北東部のグレートバリアリーフ内のリザード島、ヘロン島、同西海岸のニンガルーリーフ内で、これまであまり知られていなかったサンゴ礁の生物たちの計画的な採取が実施された。
その結果、4年間で約300種類の軟質サンゴが確認され、その半数が科学的に未調査である新種の可能性があるという。サンゴといえばサンゴ礁を形成する造礁サンゴが思い浮かぶが、軟質サンゴは造礁サンゴのような硬い骨格を持たない種類だ。
また調査チームによると、「淡水エビのような小さな端脚目甲殻類の新種も軟質サンゴと同程度の規模で見つかっているほか、エビの仲間であるタナイス類の新種も数多く発見された」という。「タナイス類は一般的な海水エビに似ているが、非常に小型のものが多く、普段は砂粒の間に隠れている」とAIMSの主任研究員ジュリアン・カレー氏は説明する。
同海域ではこのほかにも、ダンゴムシのような等脚類などが新たに採取された。等脚類は海を掃除するかのように海底の魚の死骸を食べるため、海のハゲワシと呼ばれている。「これまで等脚類がニンガルーリーフで確認されたことはなかった」と同氏は語るが、今回この区域では世界中のどのサンゴ礁でも確認されていない新種が2種類も発見された。調査全体では合計約100種類の等脚類が新たに認定されるとみられている。
軟質サンゴは今回調査された中で最も大きく、最もカラフルな生物だ。「この一帯のサンゴ礁にはダイバーたちが頻繁に訪れていたにもかかわらず、こうした軟質サンゴの多くが見過ごされていた。軟質サンゴは石サンゴより多様性があり、サンゴ礁の生態系の中でほかの動物のすみかになるという重要な役割を果たしている」と同氏は言う。
これ以外にも、ヒルやミミズの仲間であるウミケムシなど、発見された生物は多岐にわたる。動物だけでなく、海藻、浮遊生物、ハナヤサイサンゴなど、さまざまな海洋生物が分析されている。
イギリスのベッドフォードシャー大学でサンゴを専門に研究しているジェームズ・クラブ生物化学教授は、次のように述べている。「海洋の温暖化で石サンゴに影響が出ていることは知られているが、軟質サンゴもまた気候変動の影響を受けやすい。脅威にさらされるサンゴ礁の生き物たちを確認しておくことは非常に重要だ。どのような生物が絶滅の危機に瀕しているのか、その原因が気候変動にあるのか、汚染などの環境要因にあるのか。しっかり調査しておく必要がある」。
Photograph courtesy Gary Cranitch/Queensland Museum/copyright 2008