18日午後4時ごろ、福岡市西区小戸(おど)2の小戸公園内で、同市立内浜小1年の富石弘輝(こうき)君(6)=同区小戸3=がいなくなったと、一緒に来ていた母親(35)から110番があった。母親らが周辺を捜していたところ、間もなく公園内のトイレ付近で倒れている弘輝君を発見。意識はなく、搬送先の病院で死亡が確認された。首をひものような物で絞められた跡があり、福岡県警は殺人事件として西署に捜査本部を設置した。
調べでは、弘輝君の遺体には他に目立った外傷はなく、抵抗した跡もなかった。着衣に乱れもなかったという。県警は、首を絞められたことによる窒息死とみて、19日に司法解剖をしてさらに詳しい死因を調べる。
弘輝君はこの日午後2時半ごろ学校から帰宅。母親と一緒に3時ごろ、歩いて自宅を出て、同15分ごろ公園を訪れた。母親が園内のアスレチックコーナーから十数メートル離れたトイレに行っている数分の間に、弘輝君の姿が見えなくなった。
弘輝君が持っていたGPS(全地球測位システム)機能が付いた携帯電話により、だいたいの所在地を把握し捜していたところ、弘輝君は母親が使った女子トイレの外壁にもたれかかるように、ひざを曲げて座り込んだ状態だったという。
発見時、意識はなく裸足だったという。くつは弘輝君のそばにあったが、弘輝君の携帯が見つかっておらず、かけてもつながらないという。県警は犯人が持ち去った可能性もあるとみている。
弘輝君は会社員の父親(33)と母親の3人家族。
現場はJR博多駅から西に約10キロ。公園内には多目的球技場やバーベキュー広場、大型遊具などがあり広さ約17・3ヘクタール。博多湾に面し、近くに住宅街やヨットハーバーがある。
現場の小戸公園は、小学校の遠足先にも選ばれる市民になじみ深い場所で、親子連れで訪れる人も多い。安全であるべき公園が一転して凶悪事件の舞台となり、関係者は不安を募らせた。
公園を散歩していた近くの会社員の女性(45)によると、18日夕、弘輝君の母親から「黒いTシャツを着た男の子を見ませんでしたか」と声を掛けられた。弘輝君は母親と公園内のアスレチックコーナーで遊んでいたが、母親が「ちょっと遊んでいてね」と言ってトイレに行き、数分後に戻ると、姿が見えなくなっていたという。母親は、弘輝君が見つかってから救急車に一緒に乗り込むまで、何度も名前を呼び続けていたという。
弘輝君が通っていた内浜小の田崎賢吾校長は「いつも元気にあいさつしてくれる子だった。今朝も校門で『おはよう』と声を掛けると、にこっと笑って正門をくぐっていった。なぜこういうことが起こったのか整理できない」とうつむいた。
弘輝君は4月、同小の特別支援学級に入学した。入学式の際に撮った写真では白いソックスにスーツ姿で、きちんと両手をひざに置き、チューリップの前でにこにこ笑っていた。計算などプリント学習が得意なうえ、駆けっこが大好きで10月にある運動会に向けて一生懸命練習に励んでいた。この日は午後2時半に下校したという。
同小は午後7時過ぎ、保護者にメールを配信して事件を伝え、19日以降、保護者がついて登下校するよう依頼した。19日に全校集会を開き、児童に事件のことを伝えるという。
毎日新聞 2008年9月19日 東京朝刊