米国は「米アフリカ軍」を創設、日本はアフリカ援助を2倍増──アフリカを舞台に新帝国主義戦争が始まった
円借款で肥え太った中国が「ひもつき援助」でアフリカの資源と市場を支配する
2008年7月14日(月)0時0分配信 SAPIO
掲載: SAPIO 2008年7月9日号
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文=ジャーナリスト 青木直人
スーダンのダルフール紛争への「武器援助」で非難を浴びる中国。2006年から急拡大した対アフリカ援助の目的は、資源獲得にとどまらない。ジャーナリスト・青木直人氏が、アフリカを食い尽くす中国援助の実態を解説する。
「援助」というより事業ローン
長く続いた冷戦が終わり、日本人が世界は平和になったとばかり思っていたそのとき、実は世界を覆い尽くしてきたのは冷戦以前ともいうべき、「帝国主義」の市場と資源の争奪戦だった。これが19世紀の帝国主義・植民地時代と違うのは、国際舞台に登場してきたのが中華人民共和国という新しい主役である。そしていまや、新帝国主義の対決最前線は、暗黒大陸と呼ばれていたアフリカになっているのである。
北京のアフリカ「植民地外交」が本格化したのは2年前のことで、最高指導者である胡錦濤国家主席と温家宝首相が、時をおかず相次いでアフリカ諸国を歴訪、さらにアフリカ48か国の関係者を北京に呼んで「アフリカフォーラム」を開催したことがきっかけである。
中国政府はこのとき初めて「中国の対アフリカ政策」を公開し、長期的なアフリカとの協力関係の構築を宣言している。
中国のアフリカ接近にはさまざまな要因がある。経済的理由でいえば、まず資源の長期的な確保であり、政治的外交的理由では、国連における影響力の行使だ。なかでも台湾の加盟阻止と日本の国連常任理事国入り反対の多数派工作が挙げられる。そのための取り込みカードが「援助」なのである。公的データは少ないが、中国外務省スポークスマンは「アフリカ32か国の数十億ドルの債務を免除したばかりか、アフリカの最貧国を中心にして100億ドルもの援助を行なっている」と発言している。
中国の対アフリカ向け援助は日本の対中ODA(政府開発援助)とは違い、露骨なまでに国益最重要視である。中国援助の最大の特徴は例外なくそれが「ひもつき援助」であるということだ。つまり、援助により行なう建設工事などを中国企業に発注することが義務付けられていたり、石油開発権の確保などとセットになっているのである。これでは援助というよりも単なる事業ローンではないのか、と疑いたくなる。
お笑いとしかいいようのないのが、中国の言い草だ。これまで日本のODAについて「日本企業もメリットを得ている。中国だけが恩恵を受けているわけではない」と反論しているが、ODAの90%を占める円借款がアンタイドローン(ひもなし援助)であることについてはひたすら口をつぐんでいる。「ひもつき」と「ひもなし」の違いは何か。「ひもなし」は相手国側がそのカネでどこから資材の調達や発注を行なっても構わない。つまり日本の円借款で建設するダムや道路の建設業者を中国側はどこから選んでもいい制度なのだ。もちろん中国企業も受注可能である。
こうなると被援助国の側が援助をカードにできる。私は以前、日本の円借款で建設される山東省のある港湾工事を受注するために、日本企業が中国政府高官筋に賄賂と取られかねないカンパをした事実を摑み、当事者に取材したことがある。
彼の言葉はこうだった。
「円借款の対象工事に影響力をもつ人物だからカンパに応じた」
なんのことはない、日本人の血税で支援したカネは中国側がカンパを手に入れるための道具にされているのだ。ここでは援助がなんの外交カードにもならず、援助国と被援助国の関係は完全に逆転しているのである。
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