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社説:厚生年金改ざん 組織関与解明し被害救済急げ

 舛添要一厚生労働相は18日の参院厚生労働委員会で、厚生年金保険料の算定基準となる標準報酬月額(給与水準)の改ざんが疑われるケースが6万9000件あったと明らかにした。さらに舛添厚労相は「私自身は組織的関与があるだろう、クロに近いと思っている」と述べ、社会保険庁の組織ぐるみでの改ざんが行われたことを事実上認めた。

 ひどい話だ。社保庁の不祥事はどこまで続くのか。こんなことだから年金制度不信はますます強まり、保険料の未納や未加入が止まらないのだ。

 厚生年金の収納率を上げるために、事業所に改ざんを持ちかけ、本来支払うべき保険料を引き下げていたとすれば、言語道断だ。その結果、従業員の年金が減額されてしまう。

 滋賀県の社会保険事務所元課長が「改ざんは組織ぐるみだった」と証言していたのに、厚労省の対応は鈍かった。9日に厚労省は年金関係閣僚会議への報告で、改ざんの疑いが指摘された17件のうち、社保庁の職員が関与したのは1件だけとし、組織的な関与は認めなかった。その舌の根の乾かぬうちに厚労相が組織的関与をほぼ認めたのだからあきれる。厚労省はこれまで何を、どう調査していたのか、と言いたい。

 直ちにやるべきことは、改ざんの正確な事実関係を把握し、年金が減額されている人たちを救済することだ。6万9000件の疑わしい記録は社保庁のコンピューターにある年金記録から不自然なケースを拾い出したものだが、実際に改ざんがあった事実を確認する必要がある。

 そのために、改ざんに関与した職員や事業主らは正直に申し出て、調査に積極的に協力すべきだ。ここで良心をみせなければ、組織の再生はありえない。

 同時に、組織ぐるみの構図を明らかにすべきだ。社保庁の関与があったのかどうかも重要な点だ。滋賀県の社会保険事務所の元課長は「本庁が知らないはずがない」と証言している。

 社保庁の組織ぐるみの関与が明らかになれば、次には責任問題が出てくる。年金制度の根幹を揺るがす不祥事を起こしたのだから、関係者の処分は当然のことだ。責任は現役職員だけにとどまらない。こうした事態を招いた組織の体質にメスを入れてこなかった厚労省と社保庁の歴代幹部らの責任も大きいと言わざるを得ない。

 厚労省は弁護士ら第三者による調査を行う方針を明らかにしている。早急に体制を整え、改ざんへの組織的な関与の事実関係、さらには社保庁の関与があったのかなどについて徹底的に解明しなければならない。その調査結果を受けて、関係者の厳正な処分を行う必要がある。事実解明と責任問題をうやむやにして収拾を図るようなことがあってはならない。

毎日新聞 2008年9月19日 東京朝刊

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