■ 登別厚生年金病院が整理機構に移管、売却など検討へ
【2008年9月19日(金)朝刊】


 整理合理化問題が浮上している登別厚生年金病院(登別市登別温泉町、時田捷司院長)は今年10月、独立行政法人「年金・健康保険福祉施設整理機構」に移管、売却譲渡など本格的な模索に入る。病院については公益性などを考慮して判断されることになるが、最悪の事態を避けるには病院側の努力はもとより、行政、市民の協力、支援は不可欠。登別市に唯一残った公立病院を守るには、全市的な取り組みが必要だ。

 同病院は昭和21年に整形外科診療所として設置。現在、診療科目は整形外科、リハビリテーション科、消化器内科、循環器内科、泌尿器科、神経内科など9科を持つ。国立登別病院が廃止されているだけに、公的病院、総合的な中核病院の役割を担っている。温泉を利用したプールがあり、総合リハビリテーション施設に認定されるなど、同部門では先駆的な施設。

 厚生年金の施設見直しについては、地方公共団体や民間への売却が検討されているが、病院に関しては「地域医療の確保を図る見地から、個別の病院または病院群として安定的な経営を図ることを基本に適切な譲渡先を検討」とした方針が打ち出されており、10月の移管で取り組みが本格化することになる。

 「譲渡」が基本になるが、それには健全な経営体質、赤字でないことが重要になってくる。昭和59年の大雨災害に伴う人件費負担などで赤字を抱え、まだ解消されていない。その後、単年度は黒字に転換し明るい兆しを見せていたものの、医師不足による患者離れが影響し、2007年度は大幅な赤字を計上した。

 このため、同病院では今年3月に経営改善委員会(委員長・成田寛志副院長)を発足。医師の確保、経営健全化に向け議論を重ねている中、懸案だった内科医(常駐)については10月に赴任するめどが立ち、交渉中の医師もいるなど、経営体質の改善にも知恵を絞っている。

 病院の努力はもちろんながら、一方で最悪のシナリオ(閉院)を避けるには、いかに地域に必要で欠かせない存在か―も大きなポイントを占めており、行政や市民のバックアップは大切な要素だ。

 同病院は、登別温泉を訪れる観光客、宿泊客、修学旅行生(万一の病気を考え、近くに病院があることは大事な要件)の救急医療にも対応している。連合町会、観光協会、飲食店組合などで構成する「登別厚生年金病院の存続を願う会」(岩井重憲会長)、登別医師協議会がかつて署名活動を展開。短期間で10万人を超す署名を集め中央陳情にも出向いているが、ここに来て再度、民間の支援、協力が必要な時を迎えている。

 岩井会長は「地方の病院は厳しい環境に置かれている。国で仕組みを考えてくれないと、このままでは地域から病院がなくなってしまう」と危機感を募らせた上で、「登別厚生年金病院はいざという時の救急など、基幹産業の観光に果たす役割は大きい。温泉地という特色を生かし、努力している最中だが、われわれもいろんな形で協力していかないとならない。地域の医療を守るため、市民ももっと積極的に利用しないといけない」とあらためて肝に銘じている。
(野崎己代治)

 
 


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