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金融オプションで損失、企業の資金繰りが悪化

 米国発の金融危機が招いたウォン安の進行で為替ヘッジを目的とする通貨オプション商品が時限爆弾となっている。ウォン相場が対ドルで50ウォン(約4円)以上下落した16日、通貨オプション取引で約800億ウォン(約74億8800万円)の損失を出した液晶ディスプレー部品メーカーの泰山LCDが民事再生手続きを申請した。

 中小企業界は泰山LCDの破たんを通貨オプション商品による連鎖倒産の前触れとみている。通貨オプション商品に投資している企業はこれまで運転資金で投資損失を埋めてきたが、ウォン安が続き限界に達した。中小企業が金融危機のあおりを受けている格好だ。

 携帯電話部品メーカーのN社は、ウォン相場が1ドル=1100ウォン台に達したことで、毎月10億ウォン(約9400万円)の損失を出している。ウォンが急落した16日に増えた含み損だけで2億ウォン(約1870万円)に達した。同社理事(53)は「これまでは会社の運転資金で損失を埋めてきたが、これ以上は耐えられない」とため息をついた。

 通貨オプション商品でこれまでに約30億ウォン(約2億8000万円)の損失を出した自動車部品メーカーB社は、損失を取り戻すため、今年7月に通貨オプション商品を追加購入し、さらに損失を拡大させた。同社の社長(41)は「政府が為替レートを守ると信じて契約したが、米金融危機で為替不安が続けば持ちこたえられない」と述べた。

 通貨オプション商品で被害を受けた企業による「為替ヘッジ被害企業共同対策委員会」のキム・サンイン代表(スサン重工業社長)は「ウォン相場が対ドルで100ウォン(約9円)下落すると、約7000億ウォン(約650億円)の追加損失が出ると予想される。資金力が弱い企業は連鎖的な不渡りが予想される危機的状況だ」と述べた。

 中小企業中央会国際通商室のチョン・ジヨン課長は「7月に被害事例を受け付けた結果、中小企業の損失が政府金融当局の集計より大きいことが分かった。中小企業の資金難は予想より深刻だ」と指摘した。

 中小企業の間では、通貨オプションを発端とする資金難はこれからが本格段階だというムードが漂っている。通貨オプション商品による損失で銀行融資がさらに困難になる悪循環も懸念される。プラスチックメーカーJ社の関係者は「取引銀行が常に会計帳簿で通貨オプションの損失規模を確認しており、追加融資など夢のまた夢だ」と話した。

 メリッツ証券のムン・ヒョンシク研究員は「通貨オプションで損失を出した企業は信用評価が落ち、銀行融資も困難になっている。こうした企業の資金難はさらに深刻化する」と予測した。

李性勲(イ・ソンフン)記者

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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